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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第二章 犯罪者の教え
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街の王

 目が覚めると朝になっていた。

 俺は立ち上がって起きていたソフィに声をかける。


「ソフィ」


「あ、ジョンさん。おはようございます」


「おはよう、ギルドがある場所を聞きたい」


ソフィに朝の挨拶をしてから気になっていたギルドの場所を聞いた。


「冒険者ギルドですか?」


「そうだ」


「なら案内しますよ」


「頼む」


 俺はソフィと一緒に馬車から降りると冒険者ギルドへと向かった。

 城からそこまで離れていない位置に冒険者ギルドの建物はあるらしく、そこまで時間はかからなかった。


「ここが冒険者ギルドです」


 冒険者ギルドの建物は二階建ての大きな建物だった。

 扉を開けてソフィと一緒に中に入るといくつかの椅子やテーブルなどがあり、入って正面にカウンターのようなところとその横に恐らく仕事が貼られている掲示板のようなものがあった。

 カウンターに近付いて受付の女性に声をかける。


「冒険者登録をしたい」


「えっ?冒険者登録ですか?」


「ああ、何か問題があるのか?」


「ああ、いいえありません……」


 女性は少し周りを見てから小声で話しをしてきた。


「冒険者はやめておいた方がいいですよ…」


「何故?」


「今はもう冒険者という職業は廃れています。新しい発見はそうそうないですし、魔物も勇者様や転生者様が倒していて魔物も外に頻繁に出ることがなくなっていますから」


「なら何か稼げる職業はあるか?」


「えっと……今は戦争が盛んで傭兵が稼げるそうですが……あまりオススメはしません」


「……そうか」


「あの……今はあまり人が居ませんから言いますが……闇市場に行ってみてください、少なくともここで受けられる仕事より稼げる仕事があるはずですから」


「そうか、わかった。場所は?」


「これを、この街の地図です。ここに闇市場があります」


 女性は地図を取り出して闇市場があるところを教えてくれた。


「わかった。ありがとう」


「いいえ、本当はあまり教えてはいけないのですが……稼げる仕事はもうギルドにはありませんから」


 そう言う女性の顔は少し暗い表情になっていた。

 俺は何も言わずにソフィと一緒に外へ出た。


「受付の人、なんだか暗い表情をしていましたね」


「そうだな」


「ジョンさん、これから闇市場に?」


「ああ、そのつもりだ。ソフィは馬車に戻ってくれ、俺は闇市場で仕事を探してくる」


「そうですか……気をつけてくださいねジョンさん、闇市場は危険な場所と聞きますから」


「ああ、気をつけよう」


 俺はソフィと別れて地図を頼りに闇市場へと向かった。

 闇市場に着くと朝のせいなのか店はほとんど出ていなかった。

 道にはゴミや腐った食べ物、食べカスなど落ちたままになっている。

 しばらく闇市場を歩いていると恐らく店の準備をしている奴を見つけて俺は声をかけた。


「すまない、仕事はあるか?」


「ああ?仕事探してるのか?」


「そうだ」


「……今じゃ仕事なんてありゃしねぇよ。夜にまた来な兄ちゃん」


「夜なら仕事があるのか?」


「ああ、夜に来ればここでは色んな仕事ができるようになるからな、夜に来た方がいい」


「そうか、わかった」


 俺は夜にまた来ることにし、闇市場で仕事を探すのを諦めて一旦馬車に戻ることにした。

 馬車に戻るとナディア達が話をしていたようだった。


「おかえり、ジョン」


「ああ」


「どうでしたか?闇市場は?」


「今は何も仕事はないそうだ。また夜に行ってみる」


「闇市場に行ってたんですか?ジョンさん」


「ああ、仕事を探しにな」


「じゃあ夜まで待つんですか?」


「そうなる」


「じゃあ、王様に会いに行く?ジョン」


「会えるのか?」


「うん、今は死ぬほど暇らしいから暇なら暇つぶしに来て欲しいって言ってた」


「暇つぶし……か、わかった。行こう」


「じゃあ、ついてきて、他に行きたい人はいる?」


「私はここで待っています」


「私も待っています」


「うーん、じゃあ、ブッチャーも待ってる」


「わかった。じゃあ、行こう」


 俺とナディアは2人で門から城の庭に入り、城へと向かった。

 庭は木や花畑に動く植物などがあり、その近くには水やりをしている女性が見える。

 城の中に入っていくと1人の黒のタンクトップにホットパンツ姿の女性が正面の階段から降りてきた。


「ん?ナディアではないか、どうした?私の暇つぶしに来てくれたのか?」


「うん、ジョン、あれが王様のフレデリカ」


「あれが?」


「その通りだ人間、この街の王であるフレデリカだ。いいな人間、王だ。女王や女帝などではなく王と呼ぶのだぞ?」


「ああ、わかった。フレデリカ王」


「ハハハ、フレデリカでよい、その方が楽だろう」


「そうか、気のせいかもしれないがハルに似ている気がするな……」


「ほう?どこが似ていると思う?人間」


「顔と雰囲気が似ている気がするな」


「なるほど、顔はよく言われるが雰囲気が似ているとはあまり言われないな、そうだ人間、私はあの大魔王ハルバードの姉だからな、似ているのも当たり前だろう」


「つまり魔王か?」


「いや、今の私は王だ。私は魔物の王ではなく人間の街で王をやっているのだからな」


「ところで……フレデリカは何をしようとしてたの?」


「ああこれから暇つぶしに散歩をしてくるつもりだったのだがな、ナディア達が来たのならそれも必要ない、食堂にでも行って菓子を食べながら話そうではないか」


 俺達はフレデリカについていき、階段を登って食堂に来るとすぐに菓子が運ばれてきた。


「ふむ、ジョンと言ったか?その銃では不十分だろう?」


 椅子に座る前にフレデリカにポケットに入っていた銃のことを言われた。


「無いよりはいいと思っているが」


「確かに無いよりはいい、しかしその銃ではこの世界を生きるには不十分だ。もっと威力と射程がある銃が必要だろう、ここにいくつか並べてやるから好きなのを取るといい」


 そう言うとフレデリカはテーブルの上にナディアのように黒い光から銃を取り出して並べ始めた。

 フレデリカが並べ終えるまで並べられていた銃を見ていたが途中で俺はある銃に目が止まった。

 その銃を手に取ってみると自分と相性が良いような気がする銃だった。


「ん?なんだ、もう相性のあった銃があったのか」


「ああ、これにしよう」


 俺はその銃を眺めながらフレデリカに答えた。

 





 その頃、森で1人の女性が走っていた。

 その女性は何かから逃げるようにして森の中を息が切れるまで走っていた。


(死にたくない!死にたくない!死にたくない!)


 どうして私はこの言葉しか思い浮かばないのだろう、私の頭は恐怖で支配されてとてもまともに考えることすらできない、私の住んでいた村の人々がたった1人の男によって一晩で殺された。


 命からがら村から逃げて来たけれどもう走るのも疲れて段々と走る速度が落ちていく、私は立ち止まりたくない、立ち止まればあの男に殺される。


 しかし、走り疲れてしまった私はゆっくりと歩いてから立ち止まってしまい、息を整えながら後ろを振り返るが誰もいない、安全なのかもしれないと思って汗だらけになった額を袖で拭っていた。


 再び歩き出そうとした時、後ろから首を掴まれ、持ち上げられて足が地面から離れ、そして後ろから刺されて刺された場所が熱く感じた。


 何度も何度も刺されて声を出そうとするが呻き声のような声しか出ない、涙で滲む視界が段々と暗くなっている。

 死が近付いていることを感じた私が最後に思い出していたのは男にあっという間に殺されてしまった私の旦那の顔だった。


 男は女性の死体を手放し、右手に血で濡れた包丁を持ったまま再び歩き出した。

 明るい森の中には汚れた女性の死体だけが残っていた。

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