肉屋の少女
最近ホラー映画が観たい投稿主です。
今回のお話はグロと思うので注意です。
そして前回の謎の肉の正体がわかります。
昼食を済ませて新聞を見返しているとソフィが茶を淹れてくれた。
「どうぞ。お茶です」
「ああ、ありがとう」
「新聞を読むのは好きですか?」
「そうだな、好きだ」
「私の兄も新聞が好きで、毎日読んでいました。私はあまり読まないですけどね」
「そうか」
俺は新聞を折り畳んで、淹れてもらった茶を飲んだ。
「……ごめんなさい、私……ジョンさんに助けてもらってばかりで」
「気にしなくていい」
「あの……どうして知らない私を助けてくれるのでしょうか?」
「どうして……か、そうだな。俺を育てた奴らがそんな奴らだったからかもしれないな」
「育てた人達ですか?」
「ああ」
「あの……いえ、なんでもありません」
ソフィは何か聞こうとしていたようだが、恐らく俺の親についてだろう、聞かない方がいいと思ったのか聞くのはやめたようだ。
「あ、あのジョンさん!」
「なんだ」
「あ……え、えっと……」
「?」
何か聞きたいようだがソフィはためらってなかなか聞いてこない、ソフィが何を聞きたいのかわからない俺はソフィが聞くまで少し待った。
「えっと……あの……わ、私に身を守る方法を教えてくれませんか?」
「何故急にそんなことを?」
「……いつまでもジョンさんに守られてばかりでいたくないですし、それにジョンさんがいつまでも私の側にいるわけでもないでしょうから…」
どうやらソフィが聞きたかったのは自分の身を守るための方法らしい。
「そうか、なら自分の身を守るために1番良いのは信頼できる仲間がいることだろう」
「信頼できる仲間?」
「ああ、ソフィは昨日居た友人が信頼できる仲間じゃないか?」
「そ、そうですね。でも仲間が居ない時はどうするんですか?」
「仲間が居ない時に自分の身を守るためなら「手段を選ぶな」としか俺は言えない」
「え?……他に方法はないんですか?」
「残念だが俺は今までそうやって生きてきた。他に方法は知らない」
「……人を殺すこともですか?」
「ああ、状況によってはな」
そう答えるとソフィは落ち込んだ様子で何も話さなくなった。
恐らく期待していたような答えではなかったんだろう。
しばらく沈黙が続き、俺がコップに入った茶を飲み終えるまで続いた。
「……人を殺した時は……どんな気持ちになりますか?」
俺がコップを置くとソフィが俺にそう聞いてきた。
「人を殺した時の気持ちか?気持ちのいいものじゃない、どうしてそんなことを?」
「昨日は……セリーネさんを簡単に殺していたので……その……」
「……狂っている人間に躊躇すれば殺される。セリーネを思い出せばわかるはずだ。セリーネのような奴は命を軽く見ている。そんな奴らに慈悲はいらない」
「そう……かもしれませんが、私は人の命を奪うなんて……」
ソフィ視線をコップに向けたまま、言葉を詰まらせた。
「ソフィ、身の危険を感じたら手段は選ばない方がいい、どうやってその状況から抜け出すかを考えることだ。セリーネみたいな奴には常識は通用しない」
「………わ、私」
ソフィは言葉を続けずにコップに入ったお茶を飲みきると静かにコップを置いて立ち上がった。
「……ジョンさん、私これから出かけてきます。留守番をお願いできますか?」
「ああ、わかった」
「ごめんなさい、夜になる前には帰ってこれるようにしますから」
ソフィはこれ以上ここにいることが辛くなったのか小走りで家から出て行った。
俺はコップの茶を飲みながら新聞をまた読み返していた。
そして夜になったがソフィは帰ってこない、俺はソフィが帰ってこないことに嫌な予感を感じていた。
家の中はすっかり暗くなり、窓から月の明かりが入ってくる。
(そろそろ服は乾いただろう……)
俺は椅子から立ち上がり、二階のベランダへと向かう。
静かな家の中は何の音もなく、俺が階段や廊下を歩く音だけが聞こえるだけだ。
二階のあの男がソフィを捕まえていた部屋に入り、その部屋の中にあるもう1つの扉を開けてベランダに出ると俺の服が干されていた。
俺は服を取って着替え、フードをかぶるとソフィに渡された服は折り畳んで机の上に置いておく。
そして俺は家から出て、とりあえずあの肉屋へと向かった。
外は夜になると少し肌寒く感じるが恐らく乾ききっていない服のせいもあるだろう。
肉屋に着くまで歩きながら少し月を見ていた。
夜空に輝く美しい月を眺めていると不思議と心が落ち着く、しかし今は街の中、人が何人か外を歩いているため歩きながら見ていたら誰かとぶつかるかもしれない、俺は月を見るのをやめて肉屋へと向かう、しばらく歩いて肉屋の前に着いた。
店は明かりがついていて、店内には誰もいない様子だった。
店に入っていくと外ではわからなかったが言い争いの様な声が聞こえてきた。
ゆっくりとカウンターの後ろにある扉に近付いて扉を開けると声が聞こえてくる。
俺は声が聞こえてくる方へ近付いていった。
「馬鹿野郎!!大事な肉を切り刻みやがって!!」
「わたし、お腹空いた!もう我慢、できない!」
「さっき食ったばかりだろうが!!これ以上俺に逆らう様だったらお前を食っちまうぞ!!」
どうやら女と男が言い争いをしているようだが部屋には色々な道具が置いてあり、主に肉を切るためのものが多い、恐らくここで肉を切っているのだろうが俺は肉を切るための台の上に見知った顔があった。
(あれは……昨日のソフィの友人か?)
台の上にはバラバラにされた女性の体のパーツがあり、台から落ちたのか首が床に転がっている。
「うるさい!!」
その女の怒号とともに何か機械の動く音がする。
この音は恐らくチェーンソーの音だろう、回転が上がる音と共に男も同じように怒号を飛ばす。
「お前!ここまで育ててやった俺を食う気か!?」
「食べるの、邪魔しないで!!」
「おい!よせ!」
チェーンソーが何かを切り裂く音と共に男の断末魔が部屋の中に響き渡る。
チェーンソーの音は止まらないが俺はあるものを部屋の中に見つけた。
それは今日男に渡したはずの拾った銃だった。
俺はゆっくり部屋の中へと入っていき、声のする方を見ると少女がチェーンソーで朝に会った店主を切り刻んでいた。
床は血だらけになり、壁も少女が着けていたエプロンも血だらけになっていた。
俺はゆっくりと銃を取るために部屋の肉を切るための道具や色々な物が置かれている机に歩いた。
「うーん?だれ?」
しかし、突然こっちを向いた少女に見つかり俺は動くことをやめた。
「……気付かれたか」
「お兄さん、誰?」
俺はチェーンソーを持った血まみれの少女と向き合い、俺は手を自然とポケットに入れていた。
「俺は客だ。肉を買いに来た」
「客?お肉、買いに来たの?」
「ああ、そこの店主から肉を買うはずだった」
「そうなんだ」
「ああ、そうだ」
「ねえねえ、お兄さん、お兄さん」
「なんだ?」
「わたし、ブッチャーっていうの、私と、お友達に、なってくれる?」
突然少女が友達になろうと誘ってきた。
「友達?俺は人を切り刻むような奴と友達になる気は無い」
突然の誘いに驚きながらも俺はその問いに対しての答えを返した。
「じゃあ、やめたら、お友達になってくれる?」
「どうだろうな、だが人を切り刻むのをやめれば友達は作れると思うぞ」
「うん、じゃあ、やめる」
「本当にやめるのか?」
「うん、お腹、空いてただけだから」
少女はチェーンソーのエンジンを切って、血だらけのエプロンを取ると台の上のバラバラになった死体のパーツを持って向かい側の部屋の扉を開けた。
その部屋は調理するための部屋らしく、調理用の道具と肉を焼くための鉄板や網があった。
ブッチャーは部屋の道具を使って持っていた肉を焼き始めた。
ふと廊下の奥を見ると階段があった。
「ブッチャー、あの階段は地下室に続いているのか?」
「うん、そうだよ、お肉、腐らないようにするためのお部屋」
「見てきても?」
「うん、良いよ」
俺は階段を降りて地下室へと向かった。
下に向かうにつれてだんだん寒くなってくる。
下に着くとそこには色々な肉に混じって人も吊るされていた。
何故ジョンがバラバラ死体を見ても平気なのか?と思うかもしれませんがそれはまた後ほど書いて行きたいと思います。