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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第二章 犯罪者の教え
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料理の教え

 街は人で溢れかえっていた。

 道には店があり、どの店も客を入れるために大声で今日の特売品や限定品などを言って客を引き寄せようとしていた。


「凄いね」


「人が集まっている場所はあまり好きじゃない」


「馬車から降りなければ関係ない、この街の人間は馬車を優先的に通すはずだ」


 しかし、人が多すぎるせいで馬車はゆっくり進んではいるがなかなか人混みから抜け出せない状況が続いた。


「ふむ、こればかりは仕方ないか……人が少なくなったら降りるといい、私は少しこの国の王に用がある」


「えっ?俺どうすりゃ良いんだ?どこにも行く場所ないんだけど」


「なら着いてくるがいい、だが邪魔だけはするな」


「お、おう、わかった」


「私はジョンさんと2人で行きたい場所があるのでそこに行ってきますね!」


「行きたい場所?」


「そうです!料理を作るために必要な材料と料理を作って部屋で食べられる場所があるんですよ」


「俺は先にギルドに行きたいんだが……」


「そんなの後で行けるんですから一緒に行きましょうよ!」


「どうしてもか?」


「どうしてもです!」


「………仕方ない」


「やった!」


 俺は手を引っ張り、しつこく言ってくるセリーネに仕方なく返事をして、付いて行くことになった。


「じゃあ集合場所を決めないと…」


「なら王の城の門でいいだろう、中央のあの建物だ。あそこならわかりやすくて良いだろうからな」


「わかった」


「集合場所も決まったことですし、人混みを抜けたら早速行きましょう!」


 しばらく待って人混みを抜けたところで俺とセリーネは馬車から降りてまずはセリーネの言う場所へと向かった。


「ここです!」


 そこはレンガ造りの建物だった。

 一階の窓から中の様子が見え、一階では料理している様子が見えた。


「じゃあ次は材料を調達しましょう!」


「金はあるのか?」


「いいえ?無いですよ?でも大丈夫です、後で払うように言えば良いんですから」


 そんな簡単に行くわけがないと思っていたがセリーネは店の店主を体を使って誘惑して必要だと言う材料を集めていき、夕方になるまでそれが続いた。


「……俺はあまり多く食べないが…」


「大丈夫ですよ!夕方だとあそこ凄く混むので、他の人達に分けてあげればすぐ無くなりますよ」


「………」


「大丈夫です、信じてください」


「……そうか」


 大量の材料が入った袋を持って俺とセリーネは最初に行った場所へと戻り、店の中へと入って行くとセリーネの言う通り人が最初に来た時よりも多くいた。


「凄く混んでますね、とりあえずあそこにしましょう」


 空いている場所はなさそうに見えたがセリーネは女性が3人で料理を作っているところに決めたようだ。


「すみません、他に空いてないみたいなので少し貸してもらっても良いですか?」


 セリーネは料理を作っている3人の女性に話しかけた。


「ええ、良いですよ」


「凄く多いですね、そんなに食べるんですか?」


「いえいえ、こんなに食べられませんよ」


「そうですよね、良ければ私達に分けて貰ってもいいですか?料理の練習をしていたので材料はたくさん欲しいんです」


「勿論、良いですよ」


「ありがとうございます」


「ああ、また死にゆく材料達が増えてしまったわ」


「つ、次は失敗しないから」


「ソフィ、そんなこと言ってもう何回も失敗してるじゃない」


「うぅ……うん……ごめん、なんで失敗するのかな」


 ソフィと呼ばれた女性は薄いピンク色の髪で、半袖の首元から胸元までボタンを留める場所がある薄いピンク色の服に濃い茶色のロングスカート姿だった。


「はぁ……貴女余計なことをしてる自覚ないのかしら…」


「えぇ?私レシピ通りにやってるはずだよ?」


「もう……とりあえずまた材料ができたんだし、作ってみましょう」


 しばらくソフィと呼ばれた女性の料理を見ていたがどうやら彼女には才能がないのかもしれない、レシピ通りにやっているがどうしても何かをしたがって失敗しているようだった。

 セリーネは料理は得意と言っていただけあって彼女達とは違い、素早く料理を進めているようだった。

 特にやることのない俺は彼女達に手を貸すことにした。


「俺も手伝おう」


「あ、大丈夫です。私達が居ますから」


「だが何一つ料理らしいものを作れていない、簡単なものなら教えてやれるがやってみるか?」


「……どうする?ソフィ?」


「うーん、じゃあお願いしても良いですか?」


「わかった」


 俺はまず手本を見せるために簡単な料理を作り、作った料理を食べてみてもらった。


「す、凄い。これ美味しい」


「あんなに簡単に作れる料理があるんですね」


 3人は俺が簡単に作った料理を食べると美味しいと言ってくれた。

 俺は本当に簡単な料理を作って出しただけでこんなに喜んでもらえるとは思いもしなかった。


「あ、あのこれを作れたりしませんか?この2人はこれは作れないみたいなので」


 ソフィと呼ばれていた女性がレシピの書かれた紙を俺に見せた。


「ソフィ、貴女が作りたいって言ったものなのに他の人に作ってもらってどうするのよ」


「お、お上手だから今みたいにお手本を見せて欲しいなって思って」


 彼女から渡されたレシピには難しく、俺ができるか怪しい料理だった。

 とりあえずレシピ通りに料理を作るために必要な道具を店の中で借りて作っていき、なんとか完成した料理をソフィと呼ばれている女性に食べてみてもらった。


「とりあえずレシピ通り作ったが…」


 俺の作った料理を一口食べるとソフィは困ったような顔をしていた。


「うーん……違う……見た目は同じなのに」


 どうやら出来上がった料理の味は彼女の希望の味ではなかったようだ。


「この料理、私の兄が好きで、それでできれば誕生日に作ってあげたいと思って練習をしているんですけど、全然上手くならなくて…」


 落ち込んでいるソフィに何か助言になるような言葉を探していると俺はある言葉を思い出した。


「料理には愛情と才能がいると俺に料理を教えた奴は言っていた」


「えっ?」


「ソフィ…だったか?ソフィは才能が無いだろうが、才能がなくても努力をすれば良い料理は作れるらしい」


「才能がなくても努力をすれば良い料理が…?」


「才能があれば美味い料理は作れる。才能が無くても努力次第で美味い料理は作れる。才能があって努力をすりゃ淚が出るほど美味い料理が作れる……と俺に料理を教えたそいつは言っていた」


 俺はとにかく努力すれば良いんじゃないかと言う意味でこの助言を憶えている。


「努力……わかりました。私……まだ頑張ってみようと思います」


 この助言になったのかもわからない言葉を聞いて再びソフィは料理を作ろうとしていた。


「じゃあ私と一緒に作ってみよう!」


 その時、料理を作り終えて暇になっていたセリーネがそう言った。


「あ、えっと…」


「私セリーネ!こっちはジョンさん、さあ作ろうか!」


「は、はい、よろしくお願いします!」


「ジョンさんは私が作った料理食べててください」


「ああ、わかった」


 セリーネが教えているのを見ながら俺はセリーネの作った料理を食べることにした。

 料理が完成しないうちにソフィの友人達は用事があるようで夜になると帰ってしまった。

 しばらく待っているとソフィの料理が完成したようで、その料理を少し取った皿をソフィが持ってきた。


「ジョンさん、良かったら…食べてみてください」


「ああ、さっきセリーネが入れていた粉末は?」


「隠し味だそうです。私もわかりませんが私も食べていますから大丈夫ですよ」


「……そうか」


 俺はセリーネの入れた粉末が気になっていたが出された料理を食べないことは失礼だと思い、ソフィから料理を受け取ると一口食べてみた。


「……美味いな」


「良かった……」


「さっきは酷かったが、これなら食べられる」


「そうですか………本当は母が作っていた味にしたかったんですけどね…」


「これでも十分美味い、これじゃ駄目なのか?」


「いいえ、駄目じゃないです。あの時の味を兄に作ってあげたかっただけなんです」


 相当思い入れがある料理らしく、失敗し続けていたのはその料理を再現しようとしていたからなんだろう。


「もう夜に…早く…帰えらない……と」


 突然ソフィがふらつき始め、倒れそうになった。

 俺はふらついているソフィを肩に手を置いて支えた。

 体が震えていて、意識はあるようだが体が思うように動かせないようだった。


「大丈夫ですか?ジョンさん!部屋に運びましょう!」


「ああ、わかった」


 俺はソフィの体を抱え上げ、顔の様子が見えるようにして抱えるとソフィの顔が青くなっていた。

 ソフィを持ち上げた俺はセリーネの後について行き、店の部屋に入った。


「ベットに寝かせましょう」


「ああ」


 ソフィをベッドへ寝かせようとした時、俺の腕が少し震え始め、俺はソフィを寝かせるとふらついたが、壁に手をついて立ったままの状態を維持した。

 それを見ていたセリーネが笑い始めた。


「ふふ……あははははっ!さあ待ちに待ったお遊びの時間が来ました!運んでくれてありがとうございます。ジョンさん」


「……ついに本性を現したか」


「まだ口が聞けるんですね。結構強い麻痺薬を入れたはずなんですけどね」


 セリーネが扉の鍵を閉めるとどこからか取り出したナイフを持ってソフィの寝ているベッドへと近付いていった。


「……なにを……するつもりだ」


 薬で手や足が震えながらも俺はセリーネに聞いた。


「何って……遊びですよ?実は私、綺麗な人を殺すのが好きなんですよ」


 綺麗な人、良く俺も顔が男にしてはかなり綺麗だと言われることがあったがまさか狙われるとは思わなかった。

 セリーネはベッドの上へと膝立ちで乗るとソフィの上にまたがった。


「…ぃや……ぃやぁ……」


 ソフィは目から涙を流しながら体を動かそうとしているようだったが麻痺薬のせいで体は震えるだけで動くことができないようだった。


「ふふ、ソフィさんの体を見せてください」


 セリーネはナイフをソフィに向けて刃を突き立てているのだろう、俺はセリーネの後ろの壁で手をついているため何をしているかわからなかった。

 俺はポケットからナイフを取り出すと刃を出して震える足をゆっくりと動かして音を出さないように遊びに夢中になっているセリーネの後ろから一歩ずつ近付いた。


「怖がらないでくださいよ。興奮して一気にめちゃくちゃにしたくなっちゃいますから」


 体を震わせているソフィの服をナイフで切るかと思っていたが音からしてナイフを持ったまま、手で服を脱がしているようだ。

 あと二歩ほどで俺はセリーネを後ろから刺すことができる。


「ソフィさん、凄く肌が綺麗じゃないですか〜。これをめちゃくちゃにしちゃうのはもったいないですね」


 セリーネはソフィの上着を脱がして露わになったソフィの肌に見惚れているようだ。

 震える足を動かしてなんとかあと一歩のところまで近付けた。


「あぁ……綺麗な肌ですね。良い匂いもして……ふふっ」


 セリーネはソフィの肌を触っているのかまだソフィを刺すつもりではないようだった。

 セリーネがそんなことをしている間に俺はもう十分刺せる距離まで近付けた。


「はぁ……十分堪能させてもらいましたし、そろそろ殺しますね」


 セリーネはソフィの首にナイフの刃を当てた。


「死んだ後も貴女の体で楽しませてもらいますね」


 俺はセリーネが言葉を言い終えると同時にナイフを振り下ろし、セリーネのうなじにナイフを刺してそのまま空いている片手で服を引っ張りながらナイフを引き抜き、ベッドから引きずり下ろすとうなじを刺されたことで体が動かなくなったセリーネの首をナイフで切った。

 首からは血が吹き出すように流れ、そんなに時間がたたないうちにセリーネは呻き声も出さなくなって少しも動かなくなった。

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