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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十一章 たった一人の救出隊
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話し合い

 二人がいる場所へ目指して走りながらハインドを見ていると、ハインドは旋回してすぐに戻ってきた。

 私は残っている手榴弾を取り出し、戻ってくるハインドの進路を予想して手榴弾を投げる準備をしていると、ハインドの機首の下にある機銃が火を噴き、機銃の弾が地面に当たると雪が舞い上がり、私の顔や服に冷たい雪が飛んできた。


 私は走ることを止めて勢いを止めるために体を横に向けて足を横へ出して踏ん張っていると機銃の弾が足や腕にかすり、気にならない程度の痛みを感じた。


 持っていた手榴弾の1つをハインドに当たるように目掛けて投げると、ハインドの近くで手榴弾が爆発し、ハインドは機体を少しだけ揺らすと頭上を通りすぎていった。

 ハインドが戻ってくる前に二人の元へと辿り着こうと再び全力で走り出すが、ハインドの速さには敵わない。


 走りながらハインドを見ていると再び旋回して戻ってこようとしていた。

 残った手榴弾ではハインドを落とすのは難しい、でも重要な部品が1つでも損傷すればハインドもあのように元気よくは飛べなくなるはずだ。

 そんなことを考えながら戻ってくるハインドに手榴弾を投げる準備をする。


 再び機銃掃射をしながら向かってくるハインドへ向けて、一気に残っている手榴弾全てを投げるとハインドの両側で手榴弾が爆発し、ハインドは機体を揺らして上を飛んでいくと黒い煙を出し、そのまま旋回する様子もなく飛び去っていった。


 しかし、戻ってこないと安心はできない。

 急いで二人の元へと走り、周りに止まっているトラックから武器を調達しようと考えていると二人がいる場所へ戻ってきた。


「お2人とも、怪我はありませんか?」


「え……えぇ……、信じられない………」


 ナタリアさんは驚いた表情で私を見ると呟くように言った。

 確かに空を飛ぶ戦闘ヘリを相手に手榴弾で戦おうなんて普通は思わないだろう。


「急ぎましょう、もしかしたら戻ってくるかもしれませんから」


「確かに、ゆっくりはしていられないだろうな」


 ジョンさんは怪我をした人を担いで立ち上がると何処からかヘリの音が聞こえてくることに気が付き、ジョンさんとナタリアさんは空を見上げると音のする方向を見た。


『お待たせ、ソフィ無事?』


 飛んできたヘリはアパッチとハインドを合わせたような見た目のヘリだった。

 操縦席はアパッチ、操縦席から後ろはハインドのように兵員室があるヘリのようだ。

 攻撃ヘリとしての役割もできるようになのか、ハインドのようにスタブウイングにロケットポッドや対戦車ミサイルなどあるのが確認できた。


「はい!無事です!」


『良かった。何とか間に合った』


 ヘリが機体を横へ向けて降下してくるのを見ていると、突然瓦礫で塞がれた城の入り口が吹き飛び、煙の中からロケット弾がヘリへ向かって飛んでいくとヘリの近くでロケット弾は爆発して、爆風で押されるように機体を傾けると城壁の向こう側へとヘリは消えていった。


「クラーラさん!?」


『び、びっくりした。APSが無かったら当たってた……』


 慌てて無線機に手を当てて呼び掛け、クラーラさんの呟く声が聞こえたことで安心した私は息を吐き、吹き飛ばされた城の入り口を見ると煙の中から転生者の少年が出てきた。


「落とし損ねたか……。まぁ、でも誰も乗り込んでいない所を見ると、なんとか間に合ったみたいだし、別に良いか」


 持っていたパンツァーファウスト3を捨てるとMG3が少年の手の上に現れ、少年は両手でそれを持つと私達に銃口を向けてきた。

 少年の指がトリガーにかけられた時、私はジョンさんだけでもと思い、怪我をした人を担いでいるジョンさんに向かって動き出した。


 自分の周りの時間がとてもゆっくりになり、ジョンさんを助けた時と同じように自分も周りの人の動きもスローモーションに見える。

 一歩一歩ジョンさんに近付いていくが、間に合わないとわかってしまった私は手を伸ばした。


 しかし、手は彼に届きそうにもなかった。


 少年が現れた時に動いていればと後悔しながら諦めずに足を進めていると少年の後ろから女性が現れ、少年に突撃するようして抱き付いた。

 私の手がジョンさんの腕に届き、腕を手を掴んだ瞬間に周りの動きが普通になった。


 周りの動きが普通になった瞬間に女性が抱き付いたことで少年の持っていた銃から数発地面へ向けて発射されると少年は抱き付いてきた女性を見た。


「邪魔をするな!!」


 少年が女性を振り払おうと体を激しく動かす。

 私は少年に抱き付いている女性の顔が見えた瞬間にすぐさま女性の助けに向かった。

 少年に抱き付くようにして動きを妨げているのは城の中へ案内してくれたリアさんだった。


「離せ……離れろ!!」


「くぅっ!」


 リアさんは必死に少年に抱き付いていたが、激しく動く少年に振りほどかれ、少年の前で倒れてしまった。

 少年は銃を倒れたリアさんに向けると引き金を引こうとしていた。


 だけど、そうはさせない。

 私は右へ体を向けている少年の横から銃を両手で掴んでリアさんに銃口が向かないように銃口を上へ向け、銃で少年の体を押して少年の銃を握っている手から力が抜けた瞬間に一気に自分の体に銃を引き寄せると少年の手から銃を奪い取ることができた。

 少年に奪った銃を向けると、少年は私を睨み付けてきた。


「なんでだよ……。なんで邪魔をするんだよ……」


「……少し落ち着いて、酷いことを言われて怒る気持ちはわかります。でも、少し冷静になりましょう」


 私は向けていた銃口を下ろして銃から弾薬箱を外して弾帯を銃から外して撃てないようにし、銃をゆっくり地面へ置いた。


「お話をすれば分かり合える。私はそう思っていますが、貴方はお話が嫌いですか?」


 少年に問いかけると先程まで私を睨み付けていた少年は戸惑っている様子だった。


「あ……あぁ、話をするのは……嫌いじゃない……」


「なら、お話をしましょう。お互いに銃を向け合っていては、仲良くなんてなれませんから」


「確かに………じゃ、じゃあ、聞くけど………貴女は……その……平和な世界を作りたいって思わないかな?」


 少年の質問に頷いて私はそう思うことを伝えると、少年は嬉しそうに少しだけ笑うような表情になった。


「私も平和な世界にしたいと思います。争いの無い世界、戦争等で多くの人が亡くなることがなくなり、悲しむ人達がいなくなる。そんな世界になってほしいと、そう思います」


「同じだ……。俺と同じ考えだ……。俺もそんな世界になってほしいと思っているんだ。でも、周りは戦争ばかりで平和な世界を望んでいる人なんてあの国の人達だけなのかなって思ってたけど、ここにも同じ考えをする人がいたのは嬉しい」


 少年は私の前まで歩いてくると手を前に差し出した。

 私は手を見た後に彼の目を見ると彼はすぐに手を後ろへ引っ込めた。


「ああ!いや……ええっと……、嫌なら握手は良いんだ……。貴女の目を潰してしまったのは俺だから、握手なんてしたくないと思っても仕方ないことだ。でも、仲間になってほしいと頼む時の癖でつい……」


「仲間に?」


 そう聞くと少年は申し訳なさそうな顔をしながら私と顔を合わせると深呼吸をして、真剣な表情に変えた。


「仲間になってほしい、俺は貴女のような人とこの世界を平和にしたい」


 少年は私の目を真っ直ぐ見て私を誘った。

 私は少年の目を見ていて嘘はついていないとわかり、手を前に差し出した。


「えぇ、世界を平和にする為なら、是非」


「ありがとう」


 少年が私の手を握ろうと手を上げようとした時、ジョンさんが私と少年の間に割って入ってきた。


「ジョンさん?」


「悪いがお前にソフィは渡せない」


「なんだって?」


「お前は邪魔をしてくる奴らは狂ってるか犯罪者だと決め付けて殺すだろう?ソフィは平和的な方法で解決しようとするが、お前の場合は力で解決をしようとする。ソフィと同じ平和な世界を望んでいても、お前の言う平和な世界とソフィの平和な世界は違う。それに、お前の言う世界平和はラーイ帝国とかいう国の考えだ。信用できたものじゃない」


 ジョンさんの言葉を聞いた私は少年を見ると、少年は視線を地面へ向けて頭を抱えて呟いていた。


「違う……違う…俺は……俺は決め付けてなんかいない……邪魔をしてくるのがいけないんだ……。俺は平和な世界を望んでるのに……わかってくれる人はあの国の人達だけで………俺は……俺は……」


「ソフィ、クラーラを呼ぶんだ。こいつとは話し合いをしても無駄だ」


 ジョンさんは顔を前に向けたまま、そう言った。

 少年の様子からして精神的に彼は色々問題があるように見えた。

 なんとか助けてあげたいが、私が前に出ようとしてもジョンさんが私の前に立って助けようとする私を止めた。


「で、でもジョンさん……」


「ソフィ、助けてやりたいのはわかる。だが、あれはもう何を言っても無駄だ。奴は狂ってる。奴を助けるくらいならレジスタンスの奴らを助けた方がいい」


 ジョンさんにそう言われた私は後ろを見ると立ち上がって私を見ていたリアさんと目が合った。

 私は少年の頭を抱えている姿に申し訳ないと思いながら、クラーラさんを無線で呼ぶことにした。

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