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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十一章 たった一人の救出隊
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転生者の怒り

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 二回の銃声が空間に反響し、クラーガとソフィの話し声が無くなったことで周りは小さくなっていく銃声が長く聞こえるほど静かになっていた。


「お父……さん……?」


「うぐっ………かはっ……………クソッタレ………」


 クラーガは口から血を吐き出し、後ろから貫かれた胸の中心を押さえていた。

 俺が放った銃弾は奴の脇腹に当たったようだが、効き目が無さそうな様子からして防弾ベストか何かを着ているのだろう。


 そして、俺は立つことも辛そうなクラーガの背中に空いた傷口を見てクラーガはもう助からないとわかってしまった。


 あの位置は間違いなく心臓だ。


 苦しませるためにわざわざ頭ではなく、心臓を狙って撃ったのか、それとも単に適当に撃ったのかと予想するが、撃った張本人の目を見れば答えはすぐにわかった。


 奴は衝動的に銃を向けて引き金を引いたらしく、撃った本人が驚いた表情になっていた。

 そして、奴はクラーガの背中から吹き出ている血を呆然と見ていた。


「リーダー!!」


「なんてことを………」


「おい!急いで治療を!」


 一人がクラーガに駆け寄ると、その後に続いて周りに居た奴らも次々とクラーガに駆け寄った。

 クラーガが人の壁で見えなくなり、その様子を見ていると数人の奴らがクラーガを撃った奴に駆け寄ると一人が襟を掴んで無理矢理立たせた。


「この野郎!!一体どういうつもりなんだよ!!おい!!なにも殺そうとすることはないだろう!!」


「ち、違う………殺すつもりなんて………」


「ふざけんなよ……!何が転生者は救世主だよ……。リーダーの言う通り、お前ら転生者は英雄気取りの狂った人間だ!!お前ら転生者はこの世界に必要ないんだよ!!」


「必要………ない………?」


 一人の男がそう言ったことで奴の目から光が消えていったような気がした俺は少し距離を取って様子を見ていたナタリアの元へと駆け寄った。


「ナタリア、今すぐソフィを連れてここから出ろ。急ぐんだ」


「何かあったの?」


「転生者が怒り狂うはずだ。そうなったらここは血の海になる」


「わかった。任せなさい」


 俺の後ろを見て奴に掴みかかっているレジスタンスの男を見るとナタリアはすぐに動いてくれた。


 後は2人が逃げる為の時間稼ぎだ。


 そして、俺の予想通り、空間にまた銃声が響いた。

 それが三回続けて聞こえ、後ろを振り返ると奴を取り囲んでいた3人のレジスタンスの奴が胸や頭を撃ち抜かれて死んでいた。


「………そうかよ、じゃあ………お前らは敵ってことでいいんだよな?」


 そう言うと奴はクラーガを囲んでいた奴らに銃を向けて躊躇いもせずに弾切れになるまで銃を撃った。

 クラーガを囲っていた連中が倒れていく仲間を目で追った後、怒りの表情を浮かべて銃を取り出そうとするが、取り出す前に奴の手に突然現れた銃によって撃ち殺されてしまった。


 次々と倒れていく連中の中にナタリアに伏せさせられているソフィを見つけ、俺は歩いて生きている奴らに近付こうとしている奴に向けて持っていた銃を撃った。

 しかし、銃弾が胴体へ当たっているというのに奴は少し体を揺らす程度で効き目があるようには見えなかった。


「雑魚は引っ込んでろよ……」


「その雑魚に投げ飛ばされたのは何処の誰だろうな?殺人鬼」


「黙れ……今度こそ、二度と口を開けないようにしてやる」


「そうか、そのオモチャで大勢殺した後に今度は人一人を惨殺か?本当に殺人鬼だな」


 俺が奴の気を引いている内にナタリアとソフィが動き出したが、ソフィが生きている奴らに治療魔法を使っているのが見えた。

 できれば自分の命を優先して欲しいが、ソフィらしい。


 奴が持っていた銃を俺に向けてきた瞬間に持っていた銃で頭を狙って引き金を引いたが、奴は頭を横へとずらして弾を避けた。

 まさか、この距離で避けられるとは思っていなかった俺は死ぬと思った。

 諦めずに引き金を引こうとはするがどうしても次を撃つまでの間に奴の持っている銃で蜂の巣にされてしまうだろう。


 そう思いながら再び引き金を引こうとしていると奴の銃声とは違う銃声が聞こえ、奴が体を激しく揺らすと横へと倒れた。

 銃声の聞こえた方を見るとクラーガが上半身だけを起こして両手でサブマシンガンのような銃を握っていた。


「あぁ……畜生め…………折角、娘との再会だったのにな……ゴホッゴホッ…………俺もツケが回ったか………」


 クラーガは立ち上がると銃の弾倉を変え、一歩一歩ゆっくりと近付いてきた。


「おい…………ジョン……………さっさと行け………こいつは俺が足止めしてやる………」


「……あぁ、わかった」


 俺が足止めをするつもりだったが、クラーガに任せることにし、俺は奴が起き上がる前に小走りで2人のところへ小走りで向かう。


「娘を頼む……」


 通り過ぎざまにそう言われ、俺は立ち止まって顔を横へ向け、クラーガの背中を見た。


「できる限りのことはする」


「あぁ………それでいい…………」


 俺は前を向いて、2人のもとへ向かった。

 2人は3人の怪我人を運ぼうとしている様子だった。


「3人だけか?」


「ええ、手伝いなさい」


「ああ」


 俺が加わったことでもう一人を運び出す準備ができると、ナタリアが怪我人に肩に担ぎ上げて通路の方へと走り出し、俺は怪我をして歩けない男を背負って通路へ向かった。

 後ろを振り返るとソフィが怪我人を背負ったままでクラーガを見ていて、通路へ入ってこないことに気が付いた。


「ソフィ!急げ!」


「………はい!」


 ソフィは少し間をおいてからこっちに顔を向けて返事をすると通路へ入ってきた。

 俺達3人は出口を目指して走っていると後ろから鳴り響いてきた銃声が通路に銃声が響き渡った。


 クラーガが長く足止めできるとは思えないが、少しでも奴から離れることができれば生き延びられる可能性が出てくるはずだ。


「今、クラーラさんがヘリでこちらに向かってきてくれているそうです!」


「本当?じゃあ、急がないとね。奴は対空用の武器も出せるからヘリなんて簡単に落とされるわ。奴が地下から出てくる前に地上へ出ないと」


 通路の先に階段が見えてくるとさっきまで鳴り響いていた銃声が鳴り止んだ。

 やはり時間稼ぎをするにはクラーガの一人では大して稼げなかった。


 俺達は階段を駆け上がり、階段を上りきる頃には少し息が上がっていた。

 ソフィはまだ余裕のようだったが、俺とナタリアは少し息が上がってペースが落ちていた。


「こんなところで死ぬわけにはいかない。死ぬつもりで走ってやる」


 息を整えながらナタリアはそう言い、背負っていた怪我人を背負い直した。

 怪我人を背負って玄関までたどり着いた俺達は扉を開けて外へ出ると突然、地面が揺れるほどの音が辺りに響き渡り、俺はソフィに押されるようにして横へ倒れると玄関の上が爆発して崩れ落ち、出入り口を塞いだ。


「戦車?クソ……どうして戦車が……」


 俺よりも先に地面へ伏せていたナタリアは伏せたままそう言った。

 戦車はゆっくりと前進してこっちへと向かってきていた。


「まずいわね……。とても今の装備じゃ……」


「私が戦車を排除します。この方をお願いしますね」


「えっ?」


 ソフィはそう言って背負っていた奴を下ろして立ち上がると、近くにあったトラックへ走っていき、荷台へ乗り込んだ。

 あの荷台に何があるのかソフィは知っているのか、迷いもせずに乗り込んだが何かあるのだろうか。

 そして、ソフィが荷台から出てくると手には手榴弾を握っていた。


「ナタリア、あれで戦車を破壊できるのか?」


「無理よ。でも、破壊はできなくて移動をできなくさせる程度ならできるはずよ」


 ナタリアからそれを聞いた俺は再びソフィの様子を見てみた。

 俺の目にはソフィが戦車を行動できなくさせるようなことを考えているようには見えない気がした。

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