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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十一章 たった一人の救出隊
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クラーラのお願い

「救出部隊が編成できない?どうしてですか!?」


 基地に着き、負傷者の治療を終えた私はボスの所へ向かい、陛下と話をしていたボスから2人の救出には誰が行くのか聞いたところ、救出部隊が編成できず、2人の救出には誰も行けない状況だと説明された。

 そんなことはないはず、ラーイ帝国との戦争の最中とはいえ、街で働いている兵士や新兵の訓練の為に残っているベテランの兵士が国には多くいるのだから。


「2人の救出に向かわせる部隊が編成できるのはおおよそ3ヶ月後だそうだ。まぁ、新生魔王軍とラーイ帝国を相手してこの国が3ヶ月程度でそんな余裕ができるとは思えないがな」


「で、では、2人はどうなるのですか?見殺しにするつもりですか?」


「エリカ、状況が変わったんだ。今、この国にはもう余裕が無いほど危機的状況になってる。そもそも、ここはラーイ帝国と魔王達の国に挟まれている最悪な場所だ。いつこうなってもおかしくない状況だったことは、ミラーシャから聞かされていただろう?」


 確かに、我が国は位置的に最悪な場所にある。

 ラーイ帝国と新生魔王軍の魔王達がいる国に挟まれ、同盟を組んでいる国とは必ずラーイ帝国の領域を通らなければ行くことができず、支援も期待できない。

 ボスの話からして、恐らく魔王軍が動き始めてしまったことを悟った私は両手を強く握った。


「くっ………なら、私が行くしか……」


「それはできないだろう。言っただろう?余裕が無いんだ。エリカにも出動命令が下されるはずだ。だが心配するな、2人は必ず助け出す」


「まさか、ボスが2人を?」


「フフ、そうしたいんだが……。私は少し遊びに行こうと思っていてな。少し羽を伸ばしてこようと思う」


「え?こんな時に何を考えて……」


「大丈夫だ。私が行かなくとも、勝手に行く奴が居るからな」


 ボスはポケットから葉巻を取り出して葉巻を口に咥えると、私の横を通り過ぎて廊下を歩いていった。


「勝手に行く奴って………誰のこと?」


 腕を組んで考えていると、クロエ曹長が廊下を走って来た。

 クロエは私の目の前で立ち止まると敬礼をし、私も軽く敬礼を返した。


「少尉、ここに居ましたか。閣下より通達です」


「話して」


「はっ、アジダーニイ隊を率いてヴェストヴァルへ向かえとのことです」


「西の壁に?魔王軍は東側なのに……」


 魔王軍が攻めてくるなら、今残っている兵を全員向かわせなければ東に防衛線を張ることは難しいはず、一応東側には防衛のために設けられている要塞があるけれど、ほとんど使わないせいで兵力や設備などがヴェストヴァルへ流れているはずのため、魔王軍の侵攻を抑えられるほどの力は無い。


「……考えても仕方ない、陛下の指示ならすぐに行動しないと……。クロエ、急いで準備しましょう」


「はっ」


 私はクロエを連れて西にある防壁、ヴェストヴァルへ向かう準備をするため、廊下を早歩きで歩いていった。







 クラーラさんに呼ばれ、彼女の装甲車に乗って私は基地にある倉庫に来ていた。


「ソフィ、ナイトレイドスーツ持ってきたよ。……本当に行ってくれるの?今は武器庫から銃を持ってこられないから武器を渡せないし、向こうへ行ったら支援も何もしてあげられないし、無線機で連絡するくらいしか私はしてあげられないよ?」


「良いんです。現地で何とかしますから」


 私はクラーラさんの用意してくれたスーツを着ながらそう言い、クラーラさんは私が着替えている様子を腕を組んで見ていた。


「無茶なお願いだけど、今は他に誰も行けないだろうし、ソフィに頼るしか無いんだ……。無理はしないようにね?」


「大丈夫、わかっていますよ。それにしても、このスーツ………体のラインが出てなんだか恥ずかしいです……」


 着替え終えて自分の体を見るとスーツが肌に吸い付くように密着し、体のラインがハッキリと出て胸の形も出て谷間ができるほどだった。


「おぉ、流石良い体をしているだけあって目の保養になるね。まぁ、ベストで隠れるし、スーツの上に服を着るんだから恥ずかしいのは今だけだよ」


「ベスト?」


 クラーラさんは机の上に置いていた袖無しの首が隠れるくらい襟の高いベストを取ると私に差し出した。

 差し出されたベストを受け取り、着てみると谷間が出ていた胸が隠れ、不思議と袖が無いのに寒くはなく、ベストの中が丁度良い温かさで寒く感じることはなかった。


「スーツと組み合わせることでどんなに寒いところでも適切な温かさを保ってくれるベストだよ。まぁ流石に死んじゃうくらい寒いような場所じゃ意味ないけど、死なない程度に寒いくらいなら寒さを感じさせないと保証するよ」


「へぇ、凄いですね。動きを妨げることもありませんし、動きやすさは着る前と同じで違和感もほとんど無いです」


「でしょ?それにそのベストには拳銃程度なら防いでくれる鉄板も入ってるから、防弾ベストとしての役割もしてくれるよ」


 クラーラさんは胸の辺りを軽く叩きながら鉄板が入っていることを教えてくれた。

 確かに叩かれても衝撃が伝わって来る程度で、ベストに鉄板が入っていることがわかる。


「ありがとうございます。本当にこんなに良い装備を貰って良いんですか?」


「いいんだよ、全然問題ない。それじゃ、忘れないうちに服を着て……」


 クラーラさんが話している最中に扉が叩かれ、扉の方を見ると扉のドアノブが動き、何かを取り出そうとしている音が聞こえ、彼女の方を見ると収納空間から段ボールを取り出していた。


「そこに膝を抱えるようにして座って!早く!」


「は、はい……」


 小声で急ぐように言われて背中を押され、壁の近くで膝を抱えて座るとクラーラさんが箱の状態にした段ボールを私に被せた。


「クラーラ、少し良いか?……ん?何をしてる?」


「い、いや~たまには部屋の掃除でもしようかと思ってね~。ミラーシャがここに来るなんて珍しいね。いつも無線機で連絡してくるのに」


「極秘の依頼を頼みに来た。ここじゃなく、ストライカーの中で話そう」


「うん、わかった」


 2人の足音を聞き、2人の足音が聞こえなくなったところで段ボールから出ると、部屋には誰も居なくなっていた。


「ふぅ……狭かった……」


 窮屈な段ボールから出て、扉を開けて小屋から出ると2人は装甲車の兵員室で何か話をしているようだった。

 私は足音を立てずに倉庫の外へ繋がっている扉へ向かい、私は扉から息が白くなるほど寒く、雪が降っている外へ出た。


「……待っていてください、今行きます。ジョンさん」


 私は基地の兵士に見つからないように気を付けながら基地の外へ出ていき、ジョンさんが囚われている城へと向かい始めた。

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