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ミリオンメモリーズ

作者: 八坂勇壱
掲載日:2016/07/12

右に山、左に海と、大きな自然に囲まれている村、豊玉村。

山からはしゃんしゃんと蝉の鳴き声が、海からは小々波の音が聞こえてくる。

田んぼからは、時折なるチャポンという音、チョロチョロと水の流れる音がする。

そんな自然の音楽が鳴り響いている中、一人の少年が、まるでそんな自然の音楽を堪能するかのようにゆっくりと、歩いている。

これは、そんな少年の、楽しくて、悲しい物語である。





「ふわぁ〜・・・」

俺、三瀬島拓海は欠伸をしながら、いつもの集合場所へと向かっていた。

俺は高校一年。

まだ入り立てだが、上の学年の生徒も、来年に入ってくる学年の生徒も、メンバー的にはほとんど変わらないため、生活に不自由は感じない。

ただ、男子より女子の方が多い、という点が俺の精神力と体力を蝕んでいる。

彼女出来たことないし、女の子と遊ぶ、なんてこともないから、どう接すればいいのかわからん。

とか言いつつも、実は俺には、異性の幼馴染がいる。

「おはよー!ごめん、待った〜?」

そう言ってこちらへ近寄ってくる女の子、八生優羅である。

周りの評判は、十人中九人が可愛いと言うレベルのルックスである。

美人、というよりかは可愛い、と言った方が似合う顔立ちだ。

髪型は茶髪のショート、子供っぽさを感じさせる顔立ち、小さい胸が特徴的である。

そんな彼女が、俺の幼馴染。

小学の入学式の頃、偶然登校する時間帯が被り、俺たちは親を通じて仲良くなり始めた。その時から一緒に登校するようになり、今ではこんなに普通に接することが出来るようになっていた。

相手は、幼馴染とはいえやはり異性だ。必然的に羞恥心も湧いてくる。だが、居心地悪く感じるかと聞かれたら、答えは否であるため、こうして一緒に登校することをやめていない。

だが、唯一やめてほしいことがある。

「おはよう、優羅。今日も元気そうだな」

「うん!もっちろん!だってたっくんに会えるんだもん!」

俺は優羅のことは普通に名前で呼んでいるが、優羅はというと、俺のことをたっくんと呼ぶのだ。恥ずかし過ぎてどうにかなりそうだ。それに加え、【たっくんに会えるんだもん!】や【大好き!】と言ったフレーズを、なんの躊躇もなく口に出す。その度周りの奇異の視線が胸に突き刺さるから、穴があったら入りたいとはこういうことかと実感した時が幾度と無くあった。

「あのなぁ、いつも言ってるだろ?その呼び方とその、普通は恥ずかしくて言えないような言葉、なんとかならないのか?」

俺は、いつもやっていることを、今日も繰り返す。

「呼び方は変えないよ〜?」

「どうにかしてくれぇ・・・」

「あと、恥ずかしくて言えないような言葉って、何?」

そう可愛く首を傾げながら聞いてくる。

不覚なことに、その仕草にドキッとしてしまった。

「そ、その・・・たっくんに会えるんだもん!とか・・・だ、大好き・・・とか」

ゴモゴモとした口調で返したため、相手に伝わるかわからなかったが、案の定

「ん?ごめん聞こえない、もう一回言って〜?」

と返された。

こんな恥ずかしいこと、口に出せないし、言おうとすると、急激に音量が下がってしまうため、どうにもならない。

「あーもー!なんでもない!行くぞ!」

その、やり場のない羞恥心を、どうにか外に放出しながら、学校へと足を進める拓海だった。

優羅が拓海へ、恋をしているとは知らずに・・・。





いつも通りの、優羅との再会を果たし、いつも通りの会話をして、いつも通り学校に着いた。

優羅とクラスは同じのため、最初から最後までずっと一緒だった。

だが、今日は一つだけ、いつもとは違うことが起きた。

「ねぇねぇたっくーん!私の靴箱に手紙入ってるー!」

そう、優羅の靴箱に手紙が入っていたのだ。

見たところ、紛れもなくラブレターだ。

その手紙がラブレターだと認識した時、何故か俺は、胸がズキンと痛んだ。

「・・・!ラブレター・・・よ、よかったな」

いつもとは違うと自分でも認識できるほど、表情が曇ってしまった。

当然それに、優羅は気付くわけで・・・

「どうしたの?もしかして、[俺の優羅が取られるー!]って嫉妬した?」

と、冗談を言ってきた。

俺が、それを否定しようとした瞬間、優羅の口元が、

『大丈夫。まだ誰とも付き合わない』

と動いた気がしたので、あえて何も言わなかった。

だが、手紙の中身はやはり気になる。

「なぁ、なんて書いてあるんだ?」

俺がそう優羅に聞くと、優羅は滑らかな手付きで封を開けていった。

「えーっとねぇ・・・『話したいことあるので、放課後、校舎裏に来て下さい』だって〜」

「校舎裏?屋上の方がロマンティックな気がするが・・・まぁいいか。で、どうするんだ?」

そう優羅に聞いた。すると、考える素振りも見せずに、

「断るに決まってるでしょ〜」

と返してきた。

俺は訝しく思ってしまったので、こう聞いてみた。

「え?なんでだ、勿体無い」

これは、聞く人によっては相手に盛大な勘違いを招いてしまいかねないが、運良く?優羅は盛大な勘違いはしなかった。

「だって・・・好きな人いるし・・・」

・・・!

なんでかわからないが、胸の奥が、さっきとは比べものにならないほどズキズキと痛んできた。

「そ、そうか・・・。まぁ、好きにするがいいさ」

そう返し、これ以上続けるともっとショックを受けそうなので、教室へと歩き始めた。



一時限目は、物理だった。

物理は、あらゆる教科の中で一番苦手な教科だ。

テストの順位がクラス後半な俺に対し、優羅は毎回安定して1〜2位を取る猛者だ。それに加え、幼馴染で仲が良く、席も比較的近いため、必然的に優羅に色々と教えてもらうことになる。

今日も、今朝の一件があったにも関わらず、優羅に教えてもらっていた。

いつも通りだ。そんな、いつも通りの時間が、刻々と過ぎていく。



結局今日も、いつも通りで終わった。

この言い方は、少し語弊があるかもしれないが、決して俺は、非日常を求めている訳ではない。いつも通りが一番だ。

「はい、皆さん、明日も学校で会いましょう〜。ではまた明日〜」

担任からの話を終え、あとは件のラブレターを処理すれば、帰るだけとなる。

「じゃ、行ってくるね〜」

優羅とは、その件を済ませた後、一緒に帰ると約束した。

なのでその間、何もやることがない。

適当に本でも読んでるか。

「・・・」

本を読もうと、いつも愛用している本に手をかけても中々集中出来ない。

落ち着いていられないのだ。嫌な予感もする。

この感情は、一体・・・。


それから間もなく、優羅は何事もなく教室へと帰ってきた。

俺はというと、嫌な予感が何が原因で湧いてくるのかを、己が記憶から探っていた。

だがそれも一旦置いておく。今はそれよりも件のことについて聞くのが先決だ。

「どうだった?」

純粋に気になる、というのもあったが。

だが、優羅から返ってきた返答は、予想外なものだった。

「う~ん・・・。それがね、誰もいなかったんだよ」

好きな子を呼んでおいて本人が現れないなんてやついるかよ、とツッコミたかったが、ここでは我慢しておく。

「なんだそれ。実は今日じゃなかったとか?」

「うん、私もそう思って読み返したけど、今日のって書いてあったよ」

不可思議だ。もしかしたら嫌な予感とはこのラブレターのことなのかもしれない。

だが、今それを考えても詮無きことだ。

「まぁ、いっか。帰るか」

「うん」

今は、とりあえず家に帰ろう。

そう思い、俺たちは帰路についた。



帰り道。俺と優羅は二人でいつも通りに帰っていた。

同じクラスとはいえ、いつも行動を共にしている訳ではないため、話すことはそこそこにあるのだ。

でもやはり、今日一番のイベントが頭から離れずにいた。

なにか、嫌な予感がするのだ。具体的なことは言えないが、なんとなく、そんな気がする。

だがそれでも、時は無情にも過ぎていくものだ。

今はもう、太陽も完全に沈む寸前で、空の色はほとんど青、というか藍色に近い。

視界も悪いため、周りにどんなものがあるのか、ぜんぜんわからない。


一応短編として投稿する予定ではありますが、急遽変更、ということもあるのでご承知下さい。

更新する時の文字量は、大体このくらいにするので、ご了承下さい。

途中で、編集することが多々あり、物語が変化することもあります。ご了承頂ければと思います。

更新が遅れたり、続きを投稿するのが遅れたりしてしまうかもしれませんが、許して下さい。

その他、作品に対するアドバイス等ありましたら、コメントして頂ければと思います。評価などもバシバシお願いします。

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