課外授業中止のお知らせとか聞いてない ③
「よっしゃ〜開始だからバフ頼むよ。」
「おっしゃ後衛の側に固まれ、詠唱始め。」
支援魔法を使える俺とキルケア、それとクラスメイトの魔法使いの女子エテルナさんとシスター見習いの マリアさんとノエルさんが詠唱を開始する。
残りのメンツは攻撃特化な魔法使いなのでバフ受ける側だ。
訓練前の話し合いで、無駄を省くため掛ける支援魔法は分担してある。
魔力も体力同様無限じゃないからね。
入口ゲートを開けると、マップが見えて来る。
こちらのマップは勾配のある森林。
あちらは沼地だ。
試合はいわゆる陣取り合戦で、全員戦闘不能かリタイアもしくはそれぞれの基地に隠したメダルを取られたら負けとなる。
あちらは沼地に足を取られるし、こちらは森林なので大きな武器は振り廻し辛い。
どちらも走るのには慣れが必要だろう。
まずあちらの前衛がこちらへ突撃してくる。
だが、こちらは氷魔法や土魔法で足止めしたり。
罠を仕掛けて転ばせたりする。
あちらもこちらも隠れられる岩場が必ず有るので、それぞれ待ち伏せさせたり隠れたりする。
始めこそ前衛が突撃してきたが。
一旦退いて攻め方を変えて来る。
木々の間隔を覚えて、罠を貼り始めたのだ。
しかし残念、時既に遅し。
木の上に登って潜伏して居た中衛の一部が、彼らを攻撃し始めた。
木の上からの投石、投網、魔法攻撃。
痺れ薬を風魔法で操ってふりかける。
などである。
これが索敵魔法や索敵感覚の能力が有るとバレて返り討ちなのだが。
Dクラスなら問題なく効く。
そうやって相手の前衛を削り、今度はこちらも攻撃に出る。
まず、浮遊魔法を前衛に掛けて先に行かせ、土魔法を使える者が地慣らしして足場を作る。
まぁ、多少相手にも足場になるのだが、こちらの行動範囲の関係でそれは気にしない。
サービスと思って諦める。
相手の陣地についてからは早かった。
前衛のダイナさんが斬り込んだ先に見事メダルを発見。
ゲームオーバーでBクラスの勝利が決まったヨロコビも束の間。
2戦目の対戦相手がSクラスに決まって、俺ら一気に葬式ムードに。
短い春だったよ…。
しかし、二戦目の前に事件が起こる。
Aクラスと落ちこぼれのEクラス戦の結界内の訓練場に、魔物が出現したのだ。
それは殲滅に近い惨状だった。結界が逆に密室殺人現場となったようなものだ。
試合が開始されると、結界内から出るにはリタイアすると宣言しなくてはいけない。
しかし、魔物が大量発生してパニックを起こす彼らに、逃げる余裕なんてなかったし。
俺らも食事休憩に教室へ戻っていたから、異変に気付いて教室から訓練場へ戻った頃には、事態は沢山の犠牲者による大惨事と、訓練の審査で居合わせた王立騎士数名による救援戦闘が終わった所だった。
訓練場の関係上、彼らは死にはしなかったが。
相当なショックとトラウマになったのか、中には学校を辞める生徒も出て来た。
勿論訓練戦闘は中止となり、生徒を安全な校舎へと誘導された。
本当に何処が安全なのやら…。
「とうとう、学校に魔物を仕込まれたか…。」
悔しそうにキルケアが呟く。
「俺らの訓練戦闘の時は発動しなかった。
何かこう意図的なもんを感じるね。」
「何時でも殺せるんだぜ、的なか?」
俺は頷き俯いた。
「それに、魔王も邪神も覚醒して無いのに、自体が進むのが気持ち悪いね。
無理矢理でも覚醒させて倒したいとかなら、許せないな。」
すると、キルケアが不敵に嗤う。
「はっ、馬鹿野郎だよな黒幕。
暗躍無双したい、手段選ばず低脳転生者だったりしてな、犯人。」
「俺ツェーしたい系?」
「そそ、事によったら俺が現人神だとか言い出しそうな…ん?現人神…あ!」
「何か思い当たったのか?」
「エナメル聖教国の若き法皇エメラーダ、凄いスピード出世で法皇になったんだけど。
例の名も無き創造神?アレの生まれ変わりだって言われてて。
どう見ても現代日本知識チートで無法してるバカ女なんだけど。
逆ハーレムモドキとか作ったり色々難ありな輩で、表の顔は大好評だけど。
どーにも黒い噂もある人だ。
そいつが少し臭い。」
「確かに調子こいてる感じは臭いね。」
「だろ?
たく面倒くさいが取り敢えずエナメル聖教国と法皇の近辺に、使い魔忍ばせておくわ。」
「あんま無茶すんなよ。」
「お、心配してくれるのか?
やっぱ翡翠は優しいな。」
何故か頭撫でられた…解せぬ。
そうして、楽しいはずの戦闘訓練は渋い形で終幕し、一週間程学校は休校になった。
まぁ、安全点検なんだろうな。
寮に居たり、自宅へ帰還したりと様々だが。
俺は何となく寮に居た。
帰れば、もしかしたら、ジェインが攫われるのも防げたかもと後悔する事を、この時は気付く事はなかった。