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いけめん主人公と月の魔王とモブな俺

静かな空間で、誰かが本をめくる音やカリカリとペンを走らせる音。

それを邪魔しない様な、密やかで柔らかな吐息だけが時折響く。

ここはテリュー王立美術館図書館。

千ギルと言う日本円で千円相当の入館カードさえ作れれば、テリュー王国民なら誰でも利用できる場所だ。

テリュー王国はこの世界でいちばん盛っている国で、他に。

俺や俺の両親の出身国である小国な東方王国。

軍事寄りな隣国オレキュア帝国。

聖女様達の本拠地神殿がある、エナメル聖教国。

あと、空に浮かぶ有翼人の空中都市ラーナ。

魔族や魔法中心のカステル魔法公国。

そんで、本来ならキルケアが住んでいたラスダンで、太古文明の置き土産。

人工月のマリューバル。

尚、本来の月は白月、マリューバルは銀月と呼ばれている。

太古に世界は滅びかけて、人工月に移住。

だが、人工月独特の流行病で大半が死に絶え、キルケアは最後の生き残り設定だったはず。

どうやって地上に来たのかは禁則事項ですって言われた。

地上は地上で、文明が退化したけれど生き残った少数が新たな文明を築いた感じです。

たしかそんな設定だったかな?

旧人類のキルケアと新人類の主人公達の、世界を掛けた戦いとかなんか壮大なネタバレが有るのだが。

俺の隣で本を読むカナディアと、反対側隣でメモ書きして居るキルケアからは、想像も付かない。

どう見ても、普通に学生エンジョイしてる様にしか見えないよな。

「なぁ、キルケア。」

「んん〜?なんだ?」

「昼飯カレーとシチューどっちが良い?」

「お前、具は変わらないじゃねえか。

ルー変えるだけじゃん!」

「まぁそうなんだけどさ。」

「え?二人でご飯作るの?

いいな、混ぜて混ぜて。

僕シチューがいい!」

「ん、良いよ。」

「お子ちゃまだなぁカナディアは、おれはカレーライスかな。」

「えー酷いなぁ。」

「こらこら、作るのはほとんど俺だろ?

てか、ホワイトカレーなら大人も子供も関係無いよね?」

「ちょ、馬鹿。

ホワイトカレーなんて邪道だよ。」

「美味けりゃどっちでもいいと思うよ?」

「じゃあ、今日はシチューにして置くよ。

なんかシチューな気分になった。」

「適当だなオイ!」

そのまま図書館から出ると、具材を買い足して寮に帰る。

何と、新居を作ることになったので、俺は短期間寮に暮らすことになったのだ。

寮に食堂もあるが、自炊も可能なのでそれなりにやってます。

ジェインちゃんがやはり拗ねた。

学校でも逢えるだろうと言ったのだが、何だが聞いてくれなかった。

取り敢えず、一人暮らしに必要な項目を渡されました、洗濯物や洗い物、掃除やご飯の栄養素表などとても細かいです。

おかしい、まだ恋人でも無いのに凄えヤキモチ妬かれたり、怒られたりと管理されてますよ。

外堀埋められてるのか、これ?

自己管理は難しいから助かるけども。


それと現在、キルケアは俺の部屋に転がり込んできてます。

「なんか嫌な予感するんだ。」

とだけ言われた。

守りに来たのかころがりこんで来ただけなのかは不明です。

寮からの出入りは、姿を消して出入りしているのか誰からも見られません。

一応一人部屋設定です。


シチューを野郎三人で食べる、何とも華やかさの無い食事会も終わり。

カナディアが図書館へと戻って行った。

女子の様なお喋り系男子は友達に居ないので、何とも淡々としたやり取りしかしてません。

ただ共通した言われるのは。

翡翠と居ると居心地が良い。

ですかね?


「なぁキルケア。」

洗い物をしながらキルケアに声を掛ける。

「んん〜?何?」

「俺大学生の頃に死んだから有ったか分からないんだけどさ。

暁の続編って出たの?」

「大学生の野郎だったのか?」

「いんや、女子大生。」

ギギギとこちらを向くキルケア。

「そっか…女子大生か、えへ、えへへ。」

「おいそこ、俺で妄想すんな!

キモいだろそれ。」

「は!な、何のことかね?」

目を逸らしながら、鳴らない口笛を吹く。

「だから、俺が女子大生だった話は、取り敢えず一旦忘れてくれ!」

「えっと、続編が出たかどうか、か?

確か出たと思う。

ゲームやる前に、25歳の社会人だった時に俺は亡くなったから手はつけてない。

でも、設定が少し小出しに出てた。」

「おう、どんな?」

「月の姫と月の皇子の末裔、だったかな?

姫は多分邪神と呼ばれる前のジェインちゃんの前世だと思う。

月の皇子は、人工月での俺たちの祖先で、ジェインちゃんの婚約者、だったかな?

後、大陸の皇女と堕天の神ってのが出るのしか分かってない。」

ぶっそうなラインナップである。

「そのラインナップだと、地上側と月側とで戦闘が有ったって感じ?」

「戦闘って言うより、一方的な殲滅?

月の病気も、堕天の神の仕業かも、とは言われてるしね。」

「え?そうなの?」

「うん、ゲームだとその辺りボカして全然情報無かったけど。

地上が荒れ果て、月へと流れた者達を、嫉妬深い神が許さなかった説が有るんだよ。」

「その割に、キルケアは元気だね。」

「隔離されてコールドスリープしてたのもあるみたいだけど。

目覚めて地上に降りたら、その病気発症しないんだよ。」

「うへぇ、元気なのは良いけど、なんか色々薄気味悪いね。

堕天の神が続編のラスボスなのかな?」

「かもしれないね?」

一呼吸置いて、キルケアは続けた。

「俺何となくだけどね、続編のプレイヤー主人公になる皇子の末裔ってお前の事だったりしてなって思ってるんだ。」

「ちょ、何言ってんの?

俺どう見てもモブだろ?」

「うーん、モブにしては関連キャラ相手に活躍しすぎだと思うぜ?

東方王国自体、小国の割に確か古代遺跡の多い国だから、今後謎解きギミック有りそうだよね。

まず邪神ジェインの幼馴染なのが出来すぎてると思うよ。」

「まあ、な。」

俺だってそれは何度も考えたさ。

「後、続編のゲームは時間移動出来るそうだ。

歴史を変えていく中で、世界の真実に辿り着くってさ。」

「別ゲームになってね?」

「別ゲームだよな、ヤッパリ。

まぁ、翡翠が続編の主人公かどうかはともかく、本編も続編の事も踏まえると、厄介な感じはするから色々気をつけろよ。」

「そう、だな。

気をつけるよ。

なるたけ一人にならない様にする。」

少し深呼吸してから返事をした。

焦るとロクなことにならないからだ。

食休みして、図書館で借りた本を読みながら。

思考をリセットすることにする。

ザワッとした感覚は拭えないが、焦燥感は薄れたと思う。

不意にジリジリと近寄っていたキルケアに気付く。

何をと言う間もなく、何か術を掛けられた。

ボフン!

「ひゃー!女子大生!」

ケルキアが沈黙に飽きて何をやらかしたか判明。

「翡翠たん女子大生の時にお逢いしたかったデスヨデスヨ!」

谷間にダイブして来やがった!

「治せ!戻せ!うわぁぁぁぁん!」

取り敢えず、本の角で殴打した。

俺は悪くない!

途中で我に返って回復術を掛けたが、奴が気絶から帰還するまでは、懐かしい前世の姿のままだった。

前世の俺の事見た事ないのに、何で術が成功したのかは不明である。

キルケアが目覚めた時、俺の姿は何とか元に戻っていた。

前回の聖女様といい、どうしてみんな俺を女体化したがるのか、解せぬ…。

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