姫と奴隷君①
土砂降りの雨が降る。
顔に、身体にその滝の様な雨粒が打ち付ける。
けれど、ぬぐってもぬぐっても纏わり付く雫はけぶる様な鉄錆の臭いがした。
ソレは雨では無かった。
いや、雨は確かに降ってはいた。
けれど霧雨だ。
土砂降りなんかじゃ無かった。
デハナニカ?
周辺から複数の微かな呻き声が聞こえる。
そして、血飛沫がボクの身体に纏わり付いていた。
ボクの父ちゃんと母ちゃんは既に躯と化している。
いや、乗り合いの幌馬車に居た数人も又殆ど死んで居る。
呻き声は死にぞくないの残り香みたいな物だ。
盗賊だか山賊だかに遭遇して戦闘になった。
護衛の冒険者がグルだったらしい。
そりゃ生存率低いわ。
ボクは数少ない生き残りなのかな?
いや、そもそもコレは現実なのかな?
ボクは黒髪で日本の中学生だったはず、何だけど。
今は薄い水色髪と水色瞳の西洋人っぽい5歳児位。
先ほど死んだ両親らしき人達も同じ水色系統だ。
夢か現実かよく分からない。
俺の意識が覚醒したのはついさっき。
それまではボクでしか無かったんだ。
コレが現実ならアレか?
異世界転生とか言うやつか?
ハハハ、転生したけど早速早死しそうですよ。
何だこれ、詰んでる。
てか、どうやって死んだんだっけ?
ん〜?
まぁ思い出せないけれど、それはまあ置いておく。
問題は、もう意識が朦朧としてるんだわ。
困ったなぁ。
現実味が薄いからか、他人事みたいに気持ちが冷めてやがる。
意識がブラックアウトした後、目覚めたら奴隷の首輪を付けられていたと気づく。
何とか生き残ったけど、何この強くてニューゲーム状態。
けれど、治療され見知らぬフカフカベッドで寝かされていたのか、身体はどこもおかしくは無かった。
「あら下僕?起きたのね?」
我の強そうな女の子の声が聞こえた。
「残念ながら、わたくしが辿り着いた時には同行者は皆亡くなられていたわ。
生き残った貴方も奴隷の首輪を付けられた後だったから、この国で奴隷落ちした者は身分を取り戻す為にお金がかかるの。
まあでも盗賊を殲滅した後わたくしが貴方を確保して上げたのよ、炭鉱送りや男娼になるより幸運な事でしてよ?
せいぜい感謝なさいね?」
なんかどさくさでボクのご主人様になったこの自称女神の生まれ変わりとか言う頭のネジが飛んでる美少女は、後に色々残念でめんどくさい事ばかりするストーカーとして暗躍する為に、ボクをこきつかうのだった。
「オホホホホ!コレで翡翠さまは、わたくしがゲットですことよ〜!」
「隠密行動とは?」
黄昏ながら、ボクの奴隷ライフは続く。
黒幕サイドになります




