告白は謎解きの合図にて
それは、翡翠にとってはとんでも無く長い時間に感じた。
だが後で聞いたら、白い閃光が発生したのは、ほんの数刻の事だったそうだ。
「ごめん、ホーエンさん。
花が何でか腕輪に…。」
俺が我に返った慌ててホーエンさんに、薔薇の花の腕輪の事を謝ろうとした言葉に被せるようにホーエンさんは小さく呟いた。
「…朱鷺音ちゃん?」
呆然とした表情で、ホーエンさんは俺を見上げている。
「光が収まる時、朱鷺音ちゃんがみえただよ…。」
小さな声で、自信なさげにホーエンさんが呟く。
オドオドとした口調、何より前世の名前を苗字ではなく、名前もちゃん付けで呼んでいた身近な者は1人しか思い浮かばなかった。
前世の俺の後ろを、てくてく雛のようについて回った、凄く引っ込み思案な女の子が脳裏に浮かぶ。
「…まりあ?」
俺も囁くような小声で呟く。
パァッとホーエンさんが嬉しそうな表情を浮かべた。
あぁ、間違いない。
あの事故で前世の俺が庇った親友だ。
そうか、彼女も助からずにここに転生していたのか。
少し離れていたカナディアには2人の声は聞こえなかったのか、ただ不思議そうにしていた。
「もしかして、さっきの変な煙というか発光したら薔薇の腕輪になったのかいそれ?
ダンジョンの謎アイテムだね?」
我に返ったホーエンさんが、答えた。
「うん、不思議だべ。
オラが持った時は何ともなかったんだべ。」
「翡翠に必要な物なのかな?
それがどうしてホーエンさんに届けられたのも謎だね。」
俺は息を飲んで、観念する。
そして、2人に切り出した。
今までキルケアにしか話した事の無い、前世の話とこれからの話を。
多分、ゲームとか今のリアルとか含め、ホーエンさんはともかく、カナディアと今後行動するなら隠し通すのは信頼関係的にも難しいだろうと判断した。
「あのさ、これから話す事はキルケアも知ってることなんだけど…。
信じなくてもいいから、笑わないで聞いてくれないか?
俺は前世の記憶があるんだよ、キルケアも、多分そこのホーエンさんもだ。」
そう言って、俺はカナディアとホーエンさんに、知っている情報を話し。
ホーエンさんも異世界の前世の記憶がある事を認めた。
暫くして、呆然とした表情で俺たちを見ていたが。
カナディアは我にかえると嬉しそうにはにかみやがった。
「そんな重大な秘密を…信頼してくれたんだね。
ありがとう。」
イケメンのキラキラなハニカミとか、なんなの?
クソ!
目がとろけてしまうわ!
極上ありがとうございます。
てか疑いもしないのかよ。
流石だな、心根が綺麗な主人公過ぎる件。
「キラキラだべ翡翠さん。」
「ホーエンさんや、あのキラキラは天然物だよ。」
「「ありがたやありがたや。」」
人心地付くとつい昔のように悪ふざけをする2人に気付かず、コテンとカナディアは首を傾げた。
「順を追って纏めると、キルケアとジェインのストーカーは、この世界に近い環境って言うゲーム?通りじゃないかもしれないね。」
「と言うと?」
「三人もゲームとやらの事を知る人が居たんだ。
他にもゲームを知る者が居たとしても変じゃ無いさ。
そいつが2人を攫ったと見るべきじゃないかな?」
考えなかったわけじゃ無いが、俺は冷静な判断が出来ていなかったらしい。
客観的な意見に頷く。
「じゃあ、まずこの薔薇の腕輪の力で時間を遡ってしらべるしか無さそうだべ。」
カナディアの声に、ホーエンさんが言い出した。
「時間を遡る?」
「キルケア君の続編の情報が確かなら。
謎解きは事件の前まで時間飛行して調べるしか無いと思うんだべ。
その薔薇は、多分そう言うキーアイテムだべ。」
そこまで言った後、ホーエンさんは沈む。
「ただ、1人しか行けないのかみんなで行けるのか…。」
「あ、そうか…。」
考え込む俺たちの手をカナディアが掴んで繋げた。
「行ってみればわかるよ。
翡翠にしか発動出来ないアイテムでも、手を繋いでいたら行けるかもしれないよ?」
悪戯っぽく微笑むカナディアに、俺たちは感動して頷いた。
「カナディア…。
うん、やってみよう。
準備はいい?」
「アイテムボックスに食料と武器装備は一月分くらい突っ込んであるから、何時でも問題無いよ。」
「あ、オラもアイテムボックスすぐ持ってくるべ。」
俺も食料は二週間ぶん位アイテムボックスに入れてあるからホーエンさんを待って、三人手を繋いだ。
「起動、2人が攫われる過去へ。」
腕輪に魔力を通すと、腕輪の薔薇がブウン!と花開き、青薔薇の花吹雪のエフェクトを巻き起こすように三人を包みんだ。
一瞬後、花吹雪が消えるとそこには何も残って居なかった。
目を開けると、ホーエンさんちの家の中のままだ。
失敗か?
と思ったが、ホーエンさんがビックリしている。
「翡翠君、一ヶ月前に来てるよ。」
指差したのは暖炉の上。
サイコロのような月や日付を転がすタイプの石に数字が彫刻されたカレンダーが置いてあった。
「す、凄いなこれ。」
ビックリした様子で薔薇の腕輪を眺めた後、カナディアが苦笑した。
「言い出した手前、心配が無かったとは言わないが、本当に過去に飛んだんだね驚いたよ。」
「んだんだ。」
「んじゃまぁ、少し変装してジェインとキルケア周りを調べるか。」
そう言って三人は頷いた。
ぶっちゃけた!




