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契約で結ばれた、異世界道中  作者: 中野 翼
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4.四人の【王】

第三者視点

暗い暗い洞窟の中、その一番奥にそれは居た。光りの届かない暗闇の中で、それの鱗が淡く発光している。その光りで僅かにうかがえるそれの姿は、十二の頭を持つ巨大な蛇のようなものだ。そして、その全身には無数の鎖が幾重にも巻き付けられ、全ての頭の口を塞ぐように剣で地面に縫い止められている。

この蛇の名はレルリオス。人間達からは【毒蛇の魔王】。【調整者】達からは【沼霧しょうむの王】と呼ばれているヒュドラの系譜に連なるモンスターである。

今から数百年前、レルリオスはこの洞窟に住み着いた。一般的なヒュドラは住み処を毒で汚染する性質があるが、レルリオスは複数の属性の頭を持つせいかその性質が変異していた。毒をばらまくのではなく、環境属性を豊かにする風に。結果として、レルリオスがここに住み着いてからはこの洞窟を中心に肥沃な大地が広がることとなった。それに目をつけたのが人間達だ。人間達は肥沃な大地を自分達のものにしようと侵攻を開始しだした。しかし、第一陣はレルリオスに返り討ちにあって、あっさりと敗退。そこで人間達は、第二陣として自分達の最高戦力である勇者を派遣した。それから一年近い時間、両者は何度となく戦いを繰り広げた。最終的には三日三晩に渡る激闘の末、レルリオスは勇者に敗れてこの地に封印されることになった。

ヒュドラの系譜であるレルリオスは当然というか、常識外れの再生能力を持っており、勇者の力を持ってしても滅ぼすことは叶わなかったのだ。なので勇者は封印を施し、監視役を置くことしか出来なかったのだ。

その監視役はというと、数百年経った今でもレルリオスの傍で佇んでいる。

金色の金属的な輝きを放つ、つるりとした人型のボディー。全長はレルリオスと同じくらいあり、10mを軽く越えたサイズとなっている。

監視役の名前はオリハルコンゴーレム・マーク2。勇者の仲間の一人である賢者が製造したゴーレムである。ちなみに、このゴーレムは自由意思を持ったモンスタータイプではなく、賢者がプログラムしている術式どおりに行動するロボットタイプとなっている。さて、レルリオスとオリハルコンゴーレムについては、封印されてからの数百年の間はとくに何も無かった。

レルリオスは封印されっぱなしだし、オリハルコンゴーレムは洞窟に入って来た侵入者を撃退し続けているからだ。しかし、人間側はそうでもなかった。勇者達にレルリオスが封印され、何の障害も無くなった人間達は、第三陣をこの地に派遣した。結果は全滅。レルリオスが封印されたことでこの地の環境属性のバランスは狂い、それが引き金となって天災のオンパレードとなったからだ。自然の猛威の前に人間達は無力だった。あっという間に全滅し、以後百年近くの間人間達に間接的な被害を撒き散らすこととなった。その天災は百年程度で鎮まったわけだが、それは自然に落ち着いたわけではない。百年も経つとさすがに問題が深刻化してきた為、【調整者】達が環境の鎮静化と調整を行ったからだ。結果的に、この地はまた肥沃な大地に戻ることになった。そうすると、また人間達はこの地への侵攻を開始した。

諦めが悪いというか、学習能力の無い連中である。

今度来た人間達も、数百年前に来た人間達と同じ道を辿った。つまりは全滅したのだ。今回は制御された天災。【調整者】達の手によって。指向性を持った天災は計画的に人間達を追い詰めていった。結果、現在まで人間達はこの地に立ち入ることは不可能となった。



暗闇の中、レルリオスの目がうっすらと開く。レルリオスは何かを探すように視線をさ迷わせた。そして、ある方向でその視線は固定された。

この時のレルリオスは知らないことだが、その方向はセイヤ達のいる方向であった。

レルリオスがその方向をじっと見ていると、レルリオスの視界にだんだん無数の幾何学模様が映りだした。それはやがてレルリオスの居る洞窟内を満たし、レルリオスの身体を越えてさらに広がっていった。

レルリオスがいくつかの目でその後を追った直後、今度はレルリオスの周囲に変化がおとずれた。

レルリオスの周囲の景色が歪みだし、次の瞬間にはレルリオスとオリハルコンゴーレムの姿は洞窟の中から掻き消えた。

次にレルリオスが周囲の状況を確認した時、レルリオスとオリハルコンゴーレムは石壁に囲まれた広い空間に存在していた。いや、存在していたのは二体だけではなかった。レルリオス達が存在している空間には、他にも複数の姿があった。

その一つ目の影の姿は、無数の植物が絡み合って人型を形成しているような形をしている。随所で多種多様な花や果実が実っていて、かなり色彩豊かで美しい。またレルリオスと同様に、無数の鎖と剣によって封印されている。

この植物の名前はサエーナ。人間達からは【深緑の魔王】、【調整者】達からは【樹花の王】と呼ばれている、世界樹などの高位の霊格を持った植物の系譜に連なるモンスターである。

元々のサエーナは、セイヤ達から見て西側の森の中に封印されていた。封印されていた理由も、レルリオスと似たようなものである。サエーナには、様々な植物の恵みをもたらす力がある。中には万病を癒すものや、四肢などの欠損・欠落を再生させられるものまでも。当然というか、人間達はそれを求めてサエーナに襲い掛かった。しかし、レルリオスの時と同様に第一陣は敗退した。広大な森と、そこに棲息している食人、食獣植物などによって。そして第二陣で勇者が派遣され、また似たような激闘が繰り広げられ、サエーナは封印された。サエーナもまた、レルリオスのように常識外れな強い再生能力を持っていたのと、元々の目的がサエーナから得られる恵みだったからだ。だが、当然というか今回も人間達の思い通りにはならなかった。サエーナという生態系の頂点を失ったことで、今までサエーナが統率していた植物達は大暴走を起こした。数多の危険な植物達が大繁殖を繰り返し、周囲にあった村や町を大量に飲み込んでいった。今ではただ、かつての建物の廃墟が立ち並ぶジャングルとなっている。こちらも最終的には【調整者】達の介入で大繁殖はおさまったが、危険な植物達は放置されているので、人間達は現在も森に入ることが出来なくなっている。


二つ目の影の姿は、魔法使いのような黒いローブを纏った骸骨の姿をしている。全身から黒いオーラが放たれていて、心の弱い者ならコロリと逝ってしまいそうな雰囲気を醸し出している。また前者二人と同様に、鎖と剣によって封印されている。違いがあるとすれば、鎖の色が白銀であることくらいのものだ。

この骸骨の名前はノーディオン。人間達からは【呪怨の魔王】。【調整者】達からは、【鎮魂の王】と呼ばれているリッチの系譜に連なるモンスターである。

ノーディオンが元々封印されていたのは、セイヤ達から見て北側にある荒野。

その荒野はいにしえの古戦場跡で、無数の浮かばれない魂達がさ迷っている場所だった。ノーディオンはその地を住み処とし、長い間その魂達の鎮魂を執り行ってきた。そんな地に、今度の人間達は恩恵目当てではなく、国内の不満解消の為にノーディオン討伐を掲げ、勇者と軍を派遣した。その国内の不満というのは、ノーディオンの住み処である荒野でかつて起きた戦いにたんをはっするものだった。人間達は死んだ自分達の同胞をほとんど弔わず、それを鎮魂しているノーディオンを魔王に仕立てて討伐することで、国内の勝者無き戦いの結果をごまかそうとしたのだ。こちらも激闘の末、ノーディオンも封印されることとなった。なぜ討伐から封印なったのかというと、途中でそれどころではなくなったからだ。自分達を弔いもせず、自分達を弔ってくれているノーディオンに対する元同胞達の仕打ちに荒野にいた亡魂達が大激怒。一斉に故国に向かって報復活動を開始したのだ。呪いやら祟りやらが古戦場で散った人の数だけ国に降り懸かり、除霊などもほとんど出来ずに国はあっさりと滅びた。情報が行き届いていない場所での電撃作戦だった為、ほとんどの者達が気づく暇さえなかった。だが、亡魂達の怒りはこの程度の報復ではおさまることはなかった。感情のベクトルが完全に人間達側からノーディオンの方に移行していたからだ。モンスター化した亡魂達は、かつての故国で大量のアンデットを発生させ、それをノーディオンへの援軍として派遣した。しかし時すでに遅く、ノーディオンは勇者達によって封印されてしまっていた。そして、賢者が配置した監視役のオリハルコンゴーレムも、聖属性が付与されたマーク3型でアンデット達では封印を解くことが叶わなかった。亡魂達はしかたなく、これいじょう人間達にノーディオンに手出しをさせない方向で行動を開始した。

滅ぼした故国をアンデットの都に変え、ノーディオンの封印されている荒野への道を閉ざす為に行動し、そしてそれは現在まで成功している。この成功の影には、【調整者】達の助力もあった。


三つ目の影の姿は、そのまま影だった。あるいは空間の揺らめき。あるいは虚空に空いた穴。あるいは視認、理解の出来ない何か。この影については鎖と剣ではなく、無数の魔法陣と数多の柱状の封印石。封印特化型のオリハルコンゴーレム複数体でガッチガチに封印されている。

この影の名前は、この世界の人間達は誰ひとりとして知らない。ただ【調整者】達からは、アンノーンと呼ばれている。他の【王】達と違い、この【王】には複数の異名が存在している。人間達からは、【最悪の魔王】、【災厄の魔王】、【破滅の魔王】と呼ばれている。【調整者】達からは、【混沌の王】、【虚影の王】、【鏡映の王】、【境界の王】などと呼ばれている。そのルーツは表立っては知られておらず、何の系譜に連なるモンスターであるかは人間達は誰も知らない。

アンノーンが元々封印されていたのは、セイヤ達から見て東側にある雪山の頂きだ。

封印された理由は他の三【王】達とは違い、人間達がアンノーンの存在そのものを恐れたからだ。人間達いわく、アンノーンに相対すると自分達が酷い異物か何かであるような違和感を受けるのだそうだ。はっきり言って、そんな理由での討伐もどうかと思うのだが…。それはともかく、人間達は前者三【王】と同じように勇者と軍を派遣した。結果は第五陣まで勇者パーティーも軍も全滅。アンノーンとの戦いで、勇者と呼ばれる者達のパーティーが十組消滅した。最初は単品の勇者を派遣して瞬殺された。それから人間達は順に勇者の数を増やして派遣していったが、次々に撃破された。最終的には十二の勇者とそのパーティー、複数の国の連合軍を派遣してなんとか相打ちの形でアンノーンの封印に成功した。


この四人の【王】達と、監視役の型違いのオリハルコンゴーレム達。これが、今この空間にいる影達全員の正体である。



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