プロローグ2
『まずは君のスペック確認からだね。最初に上限がわかっていないと、後でぬか喜びさせることになるかもしれないし』
「そうですね。出来ないことは、最初にわかっている方が良いです」
『それじゃあちょっと待っててね、すぐに調べちゃうからさ』
「お願いします」
それから待つこと十分程度。ソフィアさんが何かぶつぶつ言い始めた。
『……あれ?これって……。う~ん、どうしようかな?』
何か問題でもあったのかな?
『いや、問題って程のことじゃないんだけどさ、君のスペックがちょっとね』
僕のスペック?
「そんなに上限が低かったんですか?」
『いや、スペックの上限は平均的なものだったよ。とりわけ高いというわけじゃないけど、別段低すぎるというわけでもないし』
「なら、僕のスペックがどうしたんです?」
『規格が合わないようなんだ』
「規格?」
『そうだよ。君が向かう異世界は、レベルやステータスが存在している世界なんだ。だけど、君の前世の世界はそうじゃない。そのせいで、レベルやステータス、魔力関係の規格が異なっているみたいなんだ』
「つまり?」
『通常の手順ではチートをあげられないってことだよ』
「えっ!チートも無しに異世界行き!」
それはいくらなんでも自殺行為なんじゃ。
『いやいや、そんなことはしないよ。それじゃあ、あの方の命令に反することになるからね。それに、普通の手順では無理だってだけの話しだよ』
「普通じゃない手順があると?」
『もちろんだよ。ずばり、【スキルシード】というものだよ』
「【スキルシード】?技能の種?それってどういうものなんですか?」
『向こうの世界では、先程言ったレベル制なんかが実装されている。それは魂に情報を上書きし、肉体にフィードバックするという形のシステムなんだ。だけど、君の規格が違うからこの方式は採用出来ない。そこで【スキルシード】方式だ。この【スキルシード】方式は、まず最初に核となるスキルがある』
「核?」
『種と言い換えても良いね。レベル制は経験値を一定量貯めることで魂を上書きして能力を更新する。それに対して【スキルシード】は、核となるスキルを使用したり、経験値やエネルギーを吸収させることで植物のようにスキルを随時成長させていく方法なんだ。ただこの方式は、レベル制と違ってステータス。つまり、君の素の能力が直接向上するようなことはないんだよね。君にある知識で言えば、完全なスキル制ゲームののノリだね。スキルを組み合わせて戦っていく感じの』
「ああ、なるほど」
たしかにステータスがないのなら、スキル制ゲームと同じ感じだよね。
『さて、説明はいったんここまでにしよう。この方式だとスキルは一つしか君にあげられないから、君がやりたいことに合わせたスキルを選ばないといけない。君は向こうの世界で何をやりたいんだい?記憶は初期化されているから、フィーリングで答えて良いよ』
「そうですねぇ……。育成系、ダンジョン、モンスター、召喚。この手のワードが思い浮かびました」
『ふむふむ。たしかにあの方と君が遊んでいたゲームも、その系統だったね。だったらあげるスキルは、【ダンジョンクリエイト】とかが良いかな』
「それってどんなスキルなんですか?」
きっと名前通りの効果だと思うけど、内容はちゃんと確認しておこう。
『慎重だねぇ。けど、そういう子は嫌いじゃないよ。まあ、スキルの効果は君の想像通りだよ。ダンジョンを生み出して管理・拡張が出来るスキルだね』
「やっぱりですか。ちなみにですが、成長した場合はどうなっていくんですか?」
先程【スキルシード】は随時成長していくものだとソフィアさんは言っていた。なら、最初だけじゃなくて成長した先にあるものも確認しておかないと。
『ああ!そうだったね。【スキルシード】の核にするって話しだった。ならこれは没だね』
「どうしてです?」
『このスキルはダンジョン特化で、それ以外の拡張性が高くないんだよ。手間隙かければダンジョン無双は出来るんだけど、逆にダンジョン外で使えるスキルが全然ないんだ。一生ダンジョンに引きこもった生活をするんでもなければ、今回の選択肢としては没なんだ』
「なるほど。たしかに外で役にたたないのは論外ですね」
『さてそうなると、どんなスキルが良いかな?・・・そうだ!』
「何か良いのがありましたか?」
『だいたいの条件を満たしていて、拡張性もあるスキルがあったよ』
「どんなスキルですか?」
『【契約】というスキルだよ』
「【契約】?それってどんなスキルなんですか?名前だけだと、【ダンジョンクリエイト】と違って想像がつかないんですけど」
『うん、今から説明してあげるよ。まずは【契約】が何を出来るかだね。【契約】スキルはね、まずはこのスキルを使いたい相手に条件を提示するんだ』
「条件?何の条件ですか?」
『もちろん契約する為の条件だよ。会社なんかでする仕事の契約と一緒さ。相手にメリットとなる条件を提示して、相手がその条件で了承してくれれば契約成立ってわけさ』
「そうなんですか。けど、会社の契約は自分達にもメリットがあるものですよね?この場合だと、僕のメリットということになるんでしょうけど、どんなメリットがあるんですか?」
『契約した時点では、契約した相手を任意で召喚出来るようになるよ』
「召喚って、さっきの契約は使い魔契約ってやつなんですか?」
『契約相手によりけりだね。モンスター相手なら使い魔契約だし、人間相手なら商取引から奴隷契約までいろいろと使えるよ。ここらへんはまあ、使い方しだいってことだね』
「そうですか」
『さて、それじゃあ次は契約が成立した場合の話しをするね』
「契約が成立した場合の話しって、今召喚が出来るようになるって言ってましたよね」
『それは出来るようになることだね。これから説明するのは、直接の契約に関することだよ』
「直接?」
『そう。では説明を始めるよ』
「お願いします」
『さっきも説明したけど、契約はお互いの条件に納得して行うものだ。そして、契約を破った場合には不利益が発生する。このスキルの場合だと、故意に契約を破った場合は自動的にペナルティーが下されるんだ』
「下されるって、誰からですか?」
ソフィアさんからかな?
『もちろん世界からだよ。【契約】はスキルなんだ。つまり、その契約の見届け人兼保証人は、そのスキルを成り立たせている法則。それはそのまま世界と言い換えられるんだ。だから、契約は絶対に破っちゃ駄目だよ』
「わかりました」
世界から下されるペナルティーとか、怖すぎて絶対に受けたくないよ。
『良し、良い子だ。契約を交わす時は、相手に合わせて条件を設定するんだよ。両者の同意がないと、契約は成立しないからね。逆に言えば、詐欺とかは出来ないんだから、条件選びを間違えさえしなければ、そうそう問題になったりはしないってことさ』
「わかりました、契約は慎重にします」
『うんうん。そうそう、契約は双方の合意があれば、いつでも何処ででも破棄出来るからね』
「そういうところも現実の契約と変わらないんですね」
『そうだね。……ああ、一つ言い忘れてた』
「何をです?」
『契約をした者同士は、相互不可侵になるんだ。だから、フレンドリーファイアとかは発生しないし、間接的なダメージも発生しなくなるよ』
「それはありがたいですね。ゲームと違って、現実だと味方に攻撃が当たるのは問題ですから」
『そうだね。それじゃあ、スキルは【契約】で決定っていうことで良いかい?』
「僕の方は問題無いです」
『なら決まりだ』
こうして僕の最初のスキルが決まった。