モフモフの戦闘教室~槍編~
以外と早く完成しました。
もし誤字や脱字があれば、感想にて教えていただければ幸いです。
アゾットが剣の修業を始めて一ヶ月たったある日……。
「お前……剣のセンスねぇな……」
「えっ?マジ?」
アゾットはパラケルススにセンスが無いと言われショックを受けた。
「お前に剣の才能はないが他はどうかわからない試してみるぞ」
「……うん」
アゾットは目に見えて落ち込んでいた。その様子にパラケルススは頭をなでながら言った。
「なに、そんな落ち込むな。あくまで一流には、なれないが普通以上には使えてるんだならな。それに武器も剣だけじゃない、他にもいろいろあるからな」
「……うん、そうだよね!」
アゾットは自分を鼓舞するように言った。その様子に満足そうにうなずいたパラケルススは、どこからともなく2mほどの木の棒を取り出した。
「どこから取り出したのそれ?」
「ん?あぁ、これか?魔法で収納してたのさ。お前もソーマが作れるようになりゃ教えてやるよ」
パラケルススはニヤリとしながら言った。アゾットはいまだにソーマを完成させることが出来ないのだ。
「まだ先が長そうだよ……」
「そうでもないさ。そのうちすんなりできるかもしれんぞ?それよりも、今からやるのは『槍』の訓練だ。」
パラケルススはアゾットに木の棒を渡しながら言った。
「じゃぁ、問題だ。『槍』で一番怖い攻撃は何だと思う?」
「槍の?ん~」
アゾットは少し考え答えた。
「薙ぎ払いか?槍の長さで振られたら厄介だ。」
「おっ、学習したな。そうだ、槍において一番怖いのは薙ぎ払いだ。それは木の棒だからそれ程でもないが、実際の槍の穂先は鉄だ。それなりに重量がある、それをぶん回して足にでも当ててみろ。相手はたまらず体勢を崩して倒れるだろう、そこにとどめの突きをねじ込めばいい。さらに、槍の中には斧と合体しているハルバードなんてものがある。俺らみたいな怪力の持ち主なら余裕で振り回せるだろうな」
パラケルススは魔法で槍と斧が合体したようなもの『ハルバード』を取り出した。
「ちょっと持ってみろ。本物の武器だから注意しろよ」
「う、うん……あれっ?軽い?これ本物?」
ハルバードはアゾットの予想に反して簡単に持ち上がってしまった。
「もちろん本物だ。むしろ俺に合わせて作ってあるから普通のものの三倍くらいは重いぞ」
「え?これで……たしかに木の棒よりはずっと重いけどそれでも軽いよ」
アゾットには手元のハルバードがおもちゃほどの重さにしか感じられなかった。そんなアゾットの様子にパラケルススは訝しげな表情を作った。
「……ちょっと待て。これを持ってみろ」
と、言って取り出したのはアゾットの身長を超えるほどもある巨大なハンマーだった。
「う、うん……あっ持てた」
アゾットはいとも容易く片手で持ち上げてしまった。これにパラケルススは開いた口が塞がらない様子だった。自分の身長を超えるハンマーを片手で持つ獣人の少年を唖然と見つめる大人の獣人……非常に滑稽な光景だ。
「アゾット…よく聴け。そのハンマーを俺が持とうと思うとさすがに両手を使わないとつらいんだが、お前はいとも容易く片手で持ち上げちまった。これの意味が分かるか?」
「え゛っ!?」
つまり、アゾットは純粋なパラケルススの筋力を超える筋力を有しているということだ。さらに……
「お前はまだ筋力トレーニングをしていない。これが意味することは、これからさらにお前の筋力は上がる可能性があるということだ。」
「……マジ?」
パラケルススの言っていることが本当ならばかなりヤバいことなのではないか、とアゾットは考えていた。
「まぁ、気にすることはないぞ、力があって困ることはないからな。それに制御できない、なんてこともなさそうだしな」
「そ、そうか…」
アゾットはパラケルススの寛大さに安心しながらも自分自身の筋力に顔を引き攣らせた。
「ん?なんだ?怖がられるとでも思ったか?」
パラケルススはアゾットをからかうように言った。
「そ、そんなんじゃねーよ!」
「おー、そうかそうか」
と、言いながらパラケルススはアゾットの頭を強引になでた。
「んじゃ槍の訓練に戻るか。槍で一番殺傷能力を持つのが突きなのはわかるな?」
「うん」
「今から究極の一突きってのを魅せてやるよ」
パラケルススはまた、一本の槍を出し構えた。
「見てろよ」
アゾットはその様子を真剣に見ていた。男の子は究極という言葉に弱いのだ。
「……フッ!」
パラケルススが一歩を踏み込むと同時に出した一突きは目にも止まらない極限まで無駄を省き美しい、まさしく神速の一突きだった。
「俺の本来の武器は槍だからなこれくらいできなきゃ話になんねぇよな」
アゾットの方をニヤリと見ながら言った。
「すげぇな……」
「なんだ?反応が薄いな。前みたいに騒がないのか?」
パラケルススはアゾットの予想と違う反応に少し不貞腐れたようにいった。ところがアゾットの反応は……
「ちげぇよ……すごすぎて何も言えないんだ……」
「そ、そうか……よし、槍の訓練をするぞ!そこで構えろ!」
パラケルススは照れるのを隠すように指示を出す。
こうして槍の訓練は一日中続いたのだ。
ちっちゃい体に大きな武器って憧れますよね。
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