モフモフな戦闘教室~戦鎚(ウォーハンマー)編~
少し遅れてしまって申し訳ありません。
ちょっとだけ戦闘?が入るので許してください。
アゾットが槍の訓練を初めて三ヶ月経った頃……
「槍は才能あるみたいだな。じゃぁ、次だ」
「えっ?次?」
パラケルススの突然の一言にアゾットは対応できなかった。
「次って何をやるのさ?」
「お前さんの力を見て思ったが、重い武器が合うんじゃないかと思ってな。」
重い武器のデメリットは重く取り回しが悪いことだが、それを片手で振り回せるほどの力があればそれはたいしたデメリットにはならない。そこで、パラケルススはアゾットに重い武器を持たせることを考えたのだ。
「重い武器って何を?」
「ウォーハンマーだ。前に持ったハンマーだ」
と、パラケルススは言うと前に出した身の丈超えるほどもあるハンマーを取り出した。
「これだ。このハンマーは1000年位前に巨人族から譲り受けたもんだが、使わなかったからこれをお前にやるよ。弟子への二つ目のプレゼントだ」
「えっ?いいの!?」
「あぁ、お前専用の武器だ大事に使えよ。こいつはウォーハンマーだが、お前さんほど力があるなら人並み以上には使えるだろうからな」
パラケルススはそう言うとアゾットにハンマーを手渡した。
ハンマーは全長160cmほどで柄の長さは120cmほど、柄頭が40cmもある巨大なものだった。柄頭の打撃を与える面には凹凸があしらってある。
「ありがとう!大切にするよ!」
「おう、たしか名前があったはずだが……何だっけ?」
パラケルススはハンマーの名前を忘れていた。無理もないすでに1000年も前だ、普通ならば存在そのものを忘れかねないほどだ。
「くれた奴の名前は覚えてるんだが……思い出せないからお前が付けてやれ、鈍器だからそうそう壊れることもないだろうし」
「うん……どうしようかな?」
アゾットはしばらく悩んだ。初めての武器だからカッコいい名前にしたいのだ。
「そんなに悩まなくてもいいと思うぞ。もっと気楽に、直感的なものでいいと思うが」
パラケルススは微笑ましいものを見るようにアゾットを見ながらいった。
「キューン……『キューン』なんてどうだろう?」
「ずいぶんとかわいらしい名前だな。どんな意味が?」
アゾットは『思い出』は失ったが知識は失っていなかった。その『知識』の中にドイツ語があったのだ。恐らく生前学んでいたのだろう。
「俺は『思い出』はないけど、どういうわけか『知識』は残ってるんだ。その知識の中の異国の言葉に『大胆』という意味で『キューン』というのがあった」
「『キューン』で『大胆』か発音と意味でずいぶん差があるな。だけどいい名前なんじゃないか『大胆』」
パラケルススは興味深げにしながらも、いい名だと褒めた。
「そ、そうか」
「じゃぁ、早速だが訓練に移るぞ。と、言ってもウォーハンマーには明確な型はない。基本的に力任せにぶったたく武器だ。」
パラケルススの伝え方は非常にアバウトだった。
「ち、力任せ?」
「おう、そうだ。そもそもウォーハンマーはたたくこと以外やりようがない。上段に構えて振り下ろすか、横薙ぎに振るかそれくらいだ」
アゾットの『もっと他にないのか?』という視線にパラケルススは肩をすくめた。
「だが、お前にはその異常じみた腕力がある。お前のオリジナルで考えていくのが一番だな」
「俺の……オリジナル……」
アゾットは不安げにキューンを見つめた。
「俺にできるかな?」
「おう、心配すんな。手伝いくらいならしてやる」
パラケルススの返答にアゾットはきょとんとしてしまった。
「手伝いって……何?」
「何って、摸擬戦ぐらいしかしてやれんけどな」
パラケルススはそう言いながら身長と同じくらいの鉄の棒を出し、アゾットから4mほど離れた。
「じゃぁ、今から始めるか」
「えっ?摸擬戦?まじで?」
アゾットは突然のことに混乱していた。初めての武器を渡されたと思ったらすぐに摸擬戦だ、混乱してもおかしくない。
「どうした?こないのか?」
「いや、怪我とかしたらどうするのさ?」
元の世界の知識があるアゾットにとって怪我は恐れるものだった。
「気にすんな。それに、お前程度に怪我を負うほど弱くねーよ」
パラケルススは鉄の棒を担いで笑いながら言った。その言葉にカチンときたアゾットは……
「後で泣き言は聞かねーぞ!」
ハンマーを横に構えてパラケルススに向かって走り出した。吸血鬼で獣人のカラダは巨大なハンマーを持ちながらでもかなり速い速度が出た。
「お前が泣かないようにな!」
パラケルススは鉄の棒を体をずらしながら構えた。
「オラッ!」
アゾットは走った勢いのままハンマーを横薙ぎにパラケルススを殴るが……
「よっと」
パラケルススは半歩ほど体を後ろに下げ避けてしまう。さらに……
「足元がお留守だぞ!」
「っ!……ぐぁ!?」
ハンマーを振り終え無防備なアゾットは足払いを受け簡単にこけてしまった。そこにパラケルススはアゾットの喉元に棒の先端を添えた。
「はい、勝負あり」
パラケルススはニヤニヤしながら言った。
「……ちくしょう」
「走った勢いでハンマーを振るのは良かったが、その後が隙だらけだったな」
パラケルススはそう言いながらアゾットを助け起こした。
「まだ続けるか?」
「もちろん!絶対一度は当てる!!」
そう言いながらアゾットは再び離れたパラケルススに向かって走り出した。
結局、その日は一発も当てることが出来なかった。
戦闘と言っても一回しか打ち合いしてませんけど、さらに言うならアゾット君自滅したようなものですが……戦闘って難しい。
いろんな資料を参考にしていますがウォーハンマーってなかなか資料ないんですよね……どうしよう……
ちなみに、アゾット君の現代知識は『こういうものがあった』や『習ったことを覚えている』程度です。
何かご質問があれば感想にてお願いします。