アリス壱:殺し屋アリス
悲鳴も上げずに後ずさる目の前の人。
これからの展開にわくわくしている私。
それだけで、結構満足。
早めに殺しておくべきだと思ったのは、その人物が悲鳴を上げない理由が分かったから。
下に、使用人が居るんだ、こいつ。
仕方がないので、手刀でこいつの喉を一刺し。
私が気にした彼の血は、床に残る痕跡だけだった。
頭は要らない。
そんな汚いものなんて、使いたくない。
手…は、この前取ったし、いっか。
硬そうだし、この前千切るのも大変だったし、パス。
足は論外。
だって、人の足だよ?何踏んで生きてきたか分かんないじゃん。
となると、残りは、内臓か。
長生きしてそうだし、内臓なら使えそう。
お土産が決まったところで、早速腹の皮を剥ぐ。
私の能力の一つ、「自分の手指だけを想像した分だけ強くする」ことを使って毟る。
…あ、なんか、足音?ヤバいかも。
急いでドアと近くにあった重い椅子とを紐で結ぶ。用意周到な私、格好いい!
自分を盛大に褒めた私は、機嫌よく作業に取りかかった。
「旦那様、夕食をお持ちしま…あれ?
…旦那様?旦那様!?」
あーあ、感づかれちゃった。
もうちょっと急ごう。
まぁ、あとは袋に入れて、さくっと逃げれば終わり。
…おっと、忘れてた、証拠消し。
最近発見した、「自分の居た形跡を自分が消したいところだけ消す」ことをしたら、
窓を開け、脱走。
早く、会いに行きたくて、自然と急ぎ足になった。
いつも思うけど、死んでるのにビクッとするの、気持ち悪いと思う。
せっかく、あの子の一部になれるのに、なんて格好の悪いこと。
ああ、でも。
私はあなたに感謝しましょう。
あの子の笑顔を作ってくれるのなら、誰でも。