9、蛇と舞
「『ジグ』に切り替わったか」
その忙しい少女は雰囲気を変える。先程までのあたふたが嘘の様に凛々しい表情を見せる。
「さて 脱ぎましょうか」
「「なぜそうなる」」
思わずツッコんでしまった。タツキと同時に。
「裸とは『美』 このような布など邪魔でしかないのです」
「ふむ 面白い考えだがここで脱がれると少々面倒になる」
「止めて…!『ウズメ』を…!!」
疼くまるタツキという少女が辛そうに叫ぶ。ウズメはその間にもう上着を脱いでいた。
「解放…!」
「少しは待つことを知れ」
袖から大量の触手を出し彼女を包もうとする。しかしウズメは、優雅に回転し私の触手を切断した。
「今のは攻撃とみなします 次はこちらから」
いつの間にやら持っていた「双剣」を構え、こちらに走り出す。
「平和にいきたいのに」
ローブから大量の触手を出し、右往左往から目的を追わせる。しかしウズメは、まるで舞う様に触手達を蹂躙していく。
「美しい…」
見かねた生徒が呟く。この状況を見て助けを呼ぶとかないのか。
そうだ、我が兄様を呼ぼう。多分楽しい事になる、そう思い小さい触手を器用に使って、我が兄「カヘ」に電話をかけた。
「兄様 今いずこへ?」
「メビ」からの電話。全く同じセリフから察するにまた「悪戯」な気がする。でも行かなきゃな、大事な妹の悪戯にも付き合えるのがいい兄貴だよな。
「分かった すぐに行くから場所を教えてくれ」
信用を築いてるからこその短い会話。チャットで届く場所に走り出す。
前回の電話だと、違う連中が暴走を沈めた後の祭りに呼び出されたんだっけ。そこで初めて文也って奴と会話したんだよな。妹のことをキモいって言われて喧嘩になったっけ。でも理解ある奴ですぐ仲直り出来たんだよな。その後みんなでラーメン食べに行って、俺は緑色の麺啜ってたら「妹食ってる!」って馬鹿にされてまたキレて…
「兄様!危ない!」
そうそうこんな感じの緑色の太い麺…。
「…あ」
なんか斬られた。幸いにも俺のジグがすぐに防御体制を作ってくれたから無傷だけど。そして目の前に半裸の女性が居て、混乱して情けない断末魔を轟かせてしまった。
「キャア!!!」
「兄様無事ですか!無事ですねヨシ!」
「メビ…心配雑すぎ…」
恥ずかしさと見てはいけないものを見たショックで顔を隠す。呼んだ理由が分かった、やっぱ悪戯じゃん。
「…起きましたか それでは失礼」
半裸の声と思しき声が聞こえる。目を瞑ったままメビを手探りで探す。触手が俺を掴み、何処かへ再配置される。
「もう…イヤ…!!」
女の子の泣き声、いつになったら目を開けていいか分からない。
「応急処置は済ませた もう見ていいぞ兄様」
「本当か…それでも見ないに越したことはないだろ」
「どこまで紳士なんだ兄様」
だって…きっと良くないもん。
「私が触手で隠している 事情はこれから聞こう」
メビはその女性を守るように包み込んでいた。
「ありがとうございます…優しいんですね…!!」
「御託はいい お前は何者だ?」
「はうっ…その強い口調は刺激が強すぎます…!!」
なんとか事態は収束したみたいだが、俺には何も理解出来なかった。
「おーい…なんか忘れてないか…」
聞き慣れた声がした気がする。




