6、「いすゞは辛辣ポコ」
「アイドル…ってなんだ!?」
「偶像崇拝の現代版 承認欲求を満たしつつ金も稼げる最強の稼ぎ方じゃ」
「難しく説明しないで下さい!!」
歌って踊るアイドル。今の俺にそんなもの出来るわけがない。
「安心しろ 頼れる先輩たちも呼んでおる」
「えっ…先輩ですか?」
階段の昇る音。二人の足音はやがて俺と姉さんと対峙した。
「テレビで見た事ある!」
可愛い衣装を身に纏った少女と、自分と同じような巫女装束を着ている少女が来た。
「ポコの事を知ってくれて嬉しいポコ! ポコはポコポコ!」
「ぽこ…ぽこぽこ…なに?」
「…その紹介じゃややこしいでしょ」
巫女装束を少女がぶっきらぼうにツッコむ。
「ポコがごめんね 僕は『いすゞ』でコイツが『ポコ』」
「よろしくポコ!」
なんだか不思議な雰囲気の二人だ、いかにも「アイドル」って感じの衣装を身に纏っている「ポコ」とドライだけどなんとなく優しそうな「いすゞ」。なんか…俺たちに似ているような。
「二人もワケありでのう いすゞがポコを世話してるのじゃ」
あっ、立場逆なんだ。ポコは隠す気のない「狸耳」をぽこぽこ動かす。
「ポコは僕が居ないとすぐに豹変するからね 世話し甲斐があるよ」
「そんな事ないポコ!ポコは一人でも大丈夫ポコ!」
「…えいっ」
いすゞはポコの服をつねった。するとポコの顔を青白くなり、叫ぶ。
「いったァァァい!!!」
なぜ服を触るだけでそんなに痛がるのか、ポコの服はシュルシュルと体の内側に吸収されていく。
「ポコぉ…痛かったポコ」
全裸になってしまったポコから慌てて目を逸らす。そんな俺を見ていすゞはクスっと笑う。
「見ても問題ないよ こいつ男だから」
「待って…ポコの代わりに言わないでポコ…!」
そう聞いて、ゆっくりとポコの裸を見てみる。…確かに体格は「男」だった。
「えっと…君は?」
「女だよ 安心して」
「姉さんは?」
「メスじゃ」
「このうずくまってるのは?」
「男だよ」
「俺は?」
「ん…可愛らしい顔だけど男だよね」
いすゞに見つめられ少し照れる。男女の見た目がややこしすぎると痛感する。
「ポコがうざくなったら服をつねると良い ちょっとばっちぃけど」
「ばっちくないもん!ちゃんと洗ってるもん!…ポコ」
必死すぎて語尾を忘れそうになってるポコ。なんか生々しい、アイドルの裏事情みたいでやだな。
「ポコの服はのう…アレの皮なんじゃ」
「アレの皮?」
「お主にもついておるじゃろう アレじゃ」
姉さんが俺の下半身を指差す。なんなのか困惑していると、いすゞがストレートに教えてくれた。
「き⚪︎たまの皮だね」
「嘘ぉ!?」
いたいけな少女が絶対に口にしてはいけない言葉をズバッと唱えたことに驚いてしまう。
「ポコ…ポコはそこだけ変化が上手いから…歌うのも好きだし…アイドル衣装にしてみたんだポコ…」
「辛いなら元の姿に戻れば?」
うぅ…と辛そうな声をあげた後、ポコは小さく、「狸」の姿に変わってしまった。
「狸だ!姉さん!狸!」
「分かっとるわ まぁ狐の方が可愛いけどのう」
「姉さんは小さくなれる?」
「なれるがやらん 余は見下ろすのが好きなのじゃ」
「残念」
溜め息が姉さんを傷つけた。姉さんはぴょいっと軽くジャンプをすると、小さい狐の姿になる。
「どうじゃ!」
姉さんは俺の膝の上に乗る。その姿は愛くるしくて、ちょっと感動した。
「ポコ…いすゞと違って楽しそうなやつポコ」
「僕じゃ不満?」
「そうじゃないけど…!」
ポコといすゞにちょっぴり険悪なムードが流れる。
「でも一緒にアイドルやるなら楽しそうだよね」
「ついて来れるポコ?」
ポコに煽られるが状況を理解出来ずにいる。俺がこの人たちとアイドルをするの?
「高みの見物じゃ 『虎の威を借る狐』になりたいのう」
「あなたもやるんだよ」
「…本気か娘っ子」
俺たち四人の、歪なグループ結成をした瞬間だった。




