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「ジグ」:新たな神話  作者: らゐをふ


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5、「青(あお)」の龍

 アタシは「ヒーロー」になる!それはもう「決定事項」だ!!


「また食事しながらSNSですか…行儀が悪いですよ」

「うっせこの昼休み中こそ『暴走』が起きやすいのは知ってんだろ」

「せめて食べ終わってからにして下さい もう弁当作りませんよ?」

「む それは困る」

 ある時期から文也に弁当を貰い、昼飯に困らなくなったのは良いんだけど文也が食事中も絡んできてかなりウザい。まるで親みたいなこと言いやがる。

「ごちそうさまでした これで良いだろ?」

「おあいそさまでした 口に合いました?」

「食えりゃ気にしねぇよ」

「俺が気にするんです!」

「はーい 美味しかった美味しかったー文也は料理は世界一」

 棒読みで思いついた賛辞を並べてみる。味なんて全く気にしていなかったのだが、苦手な物を入れずにサクッと平らげれらてしまうこの弁当はさぞ自信作なのだろう。

「ありがとう…ございます」

「素直に受け取れてよろしい」

「どの目線のセリフですか…?」

 他愛も無い会話、平和な日常。「暴走」っていう概念がなければピースフルな世界だったのに。アタシはこの学園を、日常を愛しているっていうのに。

「龍忌は居るか!?」

 ほーれお客さんだ。見慣れた人物の登場だ。

「イルカなら居ませんよ 鳥と竜なら居ますけど」

「そこに狼である俺が居ればまさに最強…って言ってる場合か!」

「動物さん達いいな…私なんて骨だよ?」

 アタシを置いて楽しそうにしやがる。流布と鏡花はヒーローとしての「仲間」なのだがどうもソリが合わないっつーか…上手く仲良く出来ないんだよな。

「で どうした流布」

「理科室で暴走をした奴がいる!一緒に来れるか!」

「報酬は?」

「あるわけないだろ!」

「よし 着いてってやる!」

 相変わらず必死な流布をからかうのは楽しい。


 既に理科室では混乱が起きていた。逃げる人叫ぶ人、そして「守る人」。

「遅かったな!どうだ 俺は役に立てているか!」

 屈強な体格の坊主頭は言う。

「誰アレ…」

「よく聞け文也 あの坊主こそ新しい仲間のサンドバック…もとい!『カヘ・ドゥーサ』だ!」

「サンドバックって言ったか今!?」

 カヘは攻撃を受けながらも私にツッコむ。元気そうでなによりだ。

「相手は蛇口の勢いが強すぎる事を考えて暴走したらしい」

「そんな理由!?」

 カヘに冷静に状況説明されるも、理由がショボすぎて文也がツッコむ。

「俺も 口にして困惑してる」

「じゃぁ雑魚だろ さっさと倒そうぜ」

 玩具のベルトを取り出す。これは母ちゃんが作ってくれた自信作のベルトだ。

 深呼吸して、肩に力を入れる。

「…憑依!」

 横のボタンを叩く、すると音が…流れなかった。

「電池が入ってなかったようじゃのう」

「そんなのアリ!?ちょっと待って変身するな」

 ジジイに体を乗っ取られて怪物の方に走る。カッコよく決められなかったのは不服だけど、戦闘がカッコよければいいもんね。

「まずは一撃!」

 怪物の横っ腹を、鞘に収まったままの大剣で殴る。すると一撃で怪物は行動不能になってしまった。

「一撃とは…流石は龍忌殿」

「褒められてもなんも出ねーよ」

 カヘに褒められて鼻を掻きながらピースをする。

「因みにそんなに勢い強いんですか?」

 蛇口を捻る文也。蛇口の向きを確認していなかった文也は顔に高水圧の水を浴びていた。それを横目に怪物から生えてきた手を引っ張る。中からびしょびしょの男子生徒が現れて、なんとなく暴走するのも無理は無いなと思ってしまった。


 好きな物が沢山飾ってある自分の部屋。明日こそはカッコよく決めるためにもベルトの電池を確認する。

「うわ…液漏れしてる…」

「やらしいのう」

「ジジイは黙ってろ!」

 なんでこんなにセクハラ気質なんだアタシのジグは。まぁ理由はわかってるんだけど。

「龍忌 夕飯が出来たらしいぞ」

 父ちゃんの声。その父ちゃんこそ、アタシの憧れの「ヒーロー」だった。

「うん あとで行くから待ってて」

「あっ…スマン! デリカシー無い父親ですまん!!」

「何を想像した!?今行くから!!」

 絶対、父ちゃんの影響だよな…。

 部屋を出る前に貼られているポスターを見る。アタシの父ちゃんが「スーツアクター」を演じたヒーローがカッコイイポーズを取っている。そしてその横には、とある俳優が並んでいた。

「やっぱヒーローってかっけぇよな…」

 呟いてドアを開ける。そのポスターの隅には小さく「スサノオ」というサインが書いてあった。

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