4、緑(リョク)の蛇
山で遭難したのは、私の所為。お兄ちゃんはなにも悪くないから、一人で抱えないで
それは、私が中学生になった記念として山に連れて行ってもらった時の話です。当時から「生き物」が好きだった私に、天然の色んな生物を見に行こうとお兄ちゃんが提案してくれたのです。もちろん私は喜びました。
緑が広がる空気の美しい山をお兄ちゃんと二人で探検していると、珍しい「蛇」を見つけます。お兄ちゃんに悪戯が出来るかもとその蛇を捕まえに行きます。先に行くお兄ちゃんを、まさかもう見ることが出来なくなるなんて。
「『メビ』…どこ行った?」
心配するお兄ちゃんの声は、もう届かない所まで来てしまいました。蛇は中々にすばしっこくて、私もボロボロになりながら追いかけていました。既に酷く後悔はしています、お兄ちゃんと離れるんじゃなかった。そう思っていると、遂に蛇を追い詰める事が出来たのです。
「なに…これ…?」
私は「◻︎◻︎」を見てしまいました。「◻︎◻︎」は私を睨むように、何か語りかけて来るようにこちらに視線を合わせます。
「嫌だ…いやだ嫌だイヤだイヤダ!」
狂う私。否定以外の何も考えられなくなって、まるで糸が切れるように気を失いました。
あれから何日が経ったのでしょうか、「◻︎◻︎」は今だに私を睨んでいます。食事も取れず痩せ細っていく身体、私はきっとこのまま死んでしまうのでしょう。お兄ちゃんに悪戯するはずが、思いもよらない罰を受ける事になるなんて。
きっと私は「遭難」扱い。そしてここには誰も来れない。蛇を追いかけていたら、「世界」を抜けてしまったんだ。
もう枯れ切った涙を、追いかけていたはずの蛇が舐め始めます。
「…ごめんね」
君を追いかけなければ。私の好奇心が全部悪いんだ。この蛇は「帰ろう」としただけ。私「だけ」が悪いんだ。
「…」
蛇が何かを伝えようとしています。理解する気持ちも余裕も無い私は、最後の蛇の踊りを少しだけ楽しみました。
やがて蛇は、増殖して私に張り付き始めます。恐怖も驚愕も出来ない私は、最後に一つだけ呟いて眠りました。
「お兄ちゃん…ごめんね…」




