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「ジグ」:四の物語  作者: らゐをふ


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3/4

3、緑(りょく)の亀

 アイツらが羨ましい。仲は悪いのに暴走してしまう奴らを救ってしまえて居るのだから。

「俺だって…」

 拳をいくら強く握ったって、俺には救う力なんて無い。

 「妹」さえ救えない俺に、誰かを救えるワケ無いんだ。


 「イジメ」なんてものは、最近ではあまり見かけないし「ジグ」が認められてから大分良くなったのだろう。それでも人のストレスは無くなったりしない。小さな不安の積み重ねで「暴走」を果たす人も多い。

 現にこのように、俺の目の前で暴走する生徒が居るんだ。

「またか…」

 俺に悪気があるワケじゃない。憎むべきはこの体格と顔だ。俺がどれだけ優しくしてるつもりでも皆怖がってしまう。実際は人を殴った事もないのに「殺し屋」って呼ばれた事もある。あの時は流石に泣きそうになった。

 まぁ、今も若干泣きそうではある。俺にぶつかって転んで、大丈夫か声をかけようとした矢先に姿が変わってしまった。臆病そうな少女だったし色々溜まっていたんだろう。俺が「切っ掛け」になるのはいささか不愉快なのだが。

「あっ!また暴走させてる!」

 そして見つかるんだ。緑の髪を靡かせた少女に。

「お前あれほど気をつけろって言ったのに!」

 この学校で暴走を鎮める奴らの一人、「龍忌タツキ」。口は悪いが、誰よりも暴走を鎮める事を考えているであろう少女だ。そんな偉い少女に俺は深々と頭を下げる。

「すまねぇ!事故とはいえ俺の責任だ!」

「言い訳は後で聞いてやる さっさと退け!」

 情けない、俺の半分くらいしか身長の無い少女に頭を下げて逃げるなんて。俺だって、何か力になりたいのに。下唇を強く噛み締めながらその場を去ろうとする。

 実は俺にも「ジグ」は居る。でもこの状況だとまるで役に立たないのだ。

「くそっ…意外と手強い…!」

 後ろで龍忌が苦戦している。おとこなら助けてやれよと自分を鼓舞するが、どうにも出来ないんだ。下唇からは血が流れ始めていた。

(ならせめて…「守る」だけでも…!)

 俺はジグに問う、アイツの手助けをしたいと。

「…」

 言葉は返ってこない。「イカメン」らしいや。

 それでも力は貸してくれる。イケメンな亀で「イカメン」だ。

「おおおおおお!!」

 大きく叫びながら龍忌の元へ戻る。驚いた様子の龍忌だったが、すぐに戻った意味を察してくれた。

「共闘してくれるのか 足引っ張んなよ?」

「俺は…守る!」

 イカメンの力を得た俺は、甲羅のような盾を至る所に装備した状態になっている。攻撃の手段は「無い」。だがその硬さは折り紙付きだ。

「守ってくれるだけでも嬉しいもんだ!」

 暴走した怪物の攻撃を受け止める。そしてその隙に龍忌が、大きい大剣で「俺ごと」吹き飛ばした。

「いい防御力だ!後でストレス解消のサンドバッグやってくれない?」

「…絶対いやだ」

 吹き飛ばされても俺は無傷。怪物はかなりのダメージを喰らったのか動かなくなってしまった。

 その怪物の背中から「手」が生えた。俺はその手を引っ張り上げる。

「なんだ お前が協力したら楽勝じゃんか」

「俺なりに葛藤があったんだよ…」

 怪物は消え、臆病な少女に戻ってくれた。何とかこのやらかしは解決出来たみたいだ。

「ところでよ お前のジグも便利に使えそうなんだけど…一緒に『暴走した生徒を鎮めるためのスーパーヒーロークラブ』に入らない?」

「名前なっがいしだっさいな!」

「何だと!アタシが考えた名前なのに!」

 確かにコイツの行いは「ヒーロー」への強い憧れから成っている。しかし誰しもがヒーローになれる筈が無いのだ。

「俺は…やめとくよ 守る事しか出来ない奴に誰かを救う事は難しいからな 今回はお前が居てくれたおかげだ」

 断られ、あからさまに苛立っている龍忌。

「お前が居れば救える人も増える!ヒーローってのは『助け合い』なんだから一人で抱えるな!」

 助け合い…か。こんな俺でも力になれるのかな。

「…本気で言ってる?」

「ああマジだ 仲間にならないならせめてサンドバッグにだけでも…」

「サンドバッグよりは仲間の方がマシだ…」

「仲間兼サンドバッグ」

「やっぱこの話無かった事にして貰おうかな!?」

 どうしてもサンドバッグにしたいのかコイツ。でもコイツの言葉で、俺の悩みが少し軽くなった気がする。

「そういや名前知らないな 『サンドバッグ』で良い?」

「良いワケないだろ!俺は『カヘ・ドゥーサ』だ」

「あ…外国の方?」

「まぁ…名前だけみたいなもんだ」

 野球部のような坊主頭を掻きながら、俺を認めてくれる存在に少しだけ心が躍ってしまった。

「ものはついでなんだが…俺の悩みを聞いてもらっていいか?」

「悩みの解消は大事なことだな 髪を伸ばしたいんだろ」

「違うわ!」

 ロングヘアーに憧れた頃もあったけど…そう説明しようとした時、携帯が鳴る。

「兄様 今いずこへ?」

 妹の『メビ』からの着信だった。そして俺の、大きな悩みの一つがこの「妹」なんだ。

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