11、不穏はヤマから
「もう過ぎたことは仕方がありません…取り乱してごめんなさい」
男装の少女は深呼吸してから座り直す。
「その…アマテラスAIってなに?」
少女はキッと睨む。
「興味がありますか?興味ありますよね!『アマテラスAI』は僕の育てた最高の理解者であり最強傑作なのです!!」
「うわ…変なスイッチ押したかも…」
その説明は、昼休みだけでは足りなかった。チャイムが鳴り慌てる少女はノートを千切り、何かを書き殴る。そのメモを俺に押し付けて次の授業の準備をし始めた。
頭を掻きながら席に戻るとニヤついてるタツキに揶揄われる。
「新しい友達増えそうじゃねえか 良かったな!」
「こんなの事故でしょう…」
「でもそれ連絡先だろ?」
改めてメモを見る。そこには電話番号と恐らくIDであろう英字の羅列が書かれていた。
「これは…喜ぶべきですか?」
「喜んどけ!後でアタシにも紹介しろよ!」
後に連絡をすると、彼女は『ツクヨミ』というらしい。
「因みにアイツは死んだ」
タツキの指差す先には、鼻血を垂らすヒカネが居た。
「何があったんですか!?」
「お前らの会話が尊いんだとよ」
「どういう事!?!?」
その日、ルフは学校に居なかった。病欠でも、ストレスでも無い。
「おじさん…居るんだろ?」
重い扉を開く。雰囲気のある立派な洋館に、俺の「おじさん」は住んでいる。森の中、日は在る筈なのにどこか薄暗い。気味の悪い場所だが、おじさんが住むにはピッタリの屋敷だ。
「怖いよ…ルフ…」
鏡花が腕にしがみつく。まるでお化け屋敷みたいだと言う風に。
「怖がんなよ!俺もそう見えてくるじゃねえか…」
掃除のされていない広い屋敷。いつ何が出てきてもおかしくない。早く目的を成して逃げたい。
「ひゃっ!?」
電話だ。着信音に鏡花が悲鳴をあげる。
俺は、恐る恐るその着信に出る。
「…もしもし」
「ヤッホー!久しぶり!元気にしてた?アタシ今日急な仕事で今家に居ないの!」
うるさい程元気な声。さっきまでの恐怖を返して欲しい。
「おじさん!…今そのおじさんが住んでる屋敷にいるんだけど…」
「屋敷!?最近そこ使って無かったからちょっと埃っぽいかも!」
なんてことだ。来る場所を間違えていた。
「だからこんなに気味悪いのかよ…なんか納得」
「じゃあ帰ろうよ…!」
怯える鏡花に頷き、入ってきた扉に向かう。
「あれ…扉閉めたっけ…」
俺も鏡花も閉めた記憶は無い。何となく、嫌な予感がする。
「しばらく使ってないウチに 何かが住み着いたカモ…?」
離れた電話から、おじさんの物騒な文言が聞こえる。
「おいおい…嘘だろ…」
「ルフ!あれ!」
扉の隙間から一本、細い影が見える。その影はどんどん数を増やす。俺と鏡花は恐怖で抱き合う。
「へ…へ…」
「蛇の化け物!?」
姿を認識出来ないその化け物から、俺たちは必死で窓から逃げた。
「…悪戯が過ぎた 携帯忘れてるし」
「あら携帯拾ってくれたのね!アナタは?」
「…今は『メビ』だ」
ある山の中にて
「あれ…アイツどこいった…?」
剽軽な背の高い男有りけり
「折角ここまで登山してきたのに、骨折り損じゃねぇか」
その男、名を「イザナギ」
「はぁ…何も上手くいかねーな」
「…ママに会いたい」




