Interlude: Wind&Snow
鋭い風が吹き抜けた。
積もっていた雪が音もなく崩れ、白い流れとなって、地を滑るように消えていく。
スノーウィは振り返らずに声をかけた。
「ウィンディア……」
いつもの鋭さはない。
ウィンディアは彼の背後に姿を現す。
荒れていた風は落ち着き、穏やかな流れに変わる。
「スノーウィ……リズが来たか?」
無言の肯定。
スノーウィから発せられる、その冷気が答えを示していた。
ウィンディアは、ほんの少しだけ息を吐く。
それは溜め息というより、胸に溜まった何かを逃がす仕草だった。
「何か、言っていたか?」
スノーウィはちらりと、顔だけをウィンディアに向けた。
「……何も」
風が、ふっと消えた。
その答えが、すべてを物語っている。
確信は、安堵にはならなかった。
むしろ、胸の奥に冷たい痛みを残す。
ウィンディアはスノーウィの背を見つめる。
振り返らないその背中は、何よりも雪らしくて、そして拒絶していた。
「……そうか」
低く、落とすような声。
風の音を雪が吸収していき、辺りは静寂につつまれる。
スノーウィはただ、真っ白い世界を見据えている。
いつもの鋭さは鳴りを潜め、珍しく揺らいだ瞳で。
ウィンディアもそれ以上、何も言えなかった。
ただ、想いが風に溶けていく。
怒りとも違う、哀しみとも違う、ましてや、喜びであるはずがなかった。
それは、いつか来る予感さえしていたものだったのかもしれない。
先程とは違う、穏やかな風が雪と混じり合い、空を登っていく。
雪も、同じ想いなのだろうか。
スノーウィの背中の冷気が消えている。
真っ白な髪が風に揺れている。
不意に白銀の瞳がウィンディアを見た。
「選ばせたく、なかったのか……?」
ウィンディアは苦々しい表情を見せた。
黄金の瞳が見返す。
「出来れば、ね」
それは、本心だった。
それでも。
「リズが選んだことだ」
それが、事実だ。
「ああ……」
スノーウィは短く答える。
それから、白銀の瞳を空に向ける。
「選ばせたくなかったのは、俺達だったのかもしれない」
その言葉は、風に溶けるように――消えていった。




