Ⅵ.それでも
雪の気配を探してリズはここまで来た。
けれど、探していたはずの雪はもうそこにいた。
真っ白な雪原の中、ひとり佇むスノーウィは冷たい空気と同化したように、そこにいた。
リズは静かに歩み寄る。
何も言わず、スノーウィは振り向いた。
なにかが、違う。
スノーウィはそう感じた。
「どうした?」
白銀の瞳がリズを見据える。
ふふっと微笑ってリズは彼の隣に立った。
「別に」
そう答えてから、少し間を置いて、言葉を継いだ。
「みんなに……会いに行ってるの……」
スノーウィを見つめる。
降ったばかりの雪のようにふわふわした真っ白な髪が揺れる。
白銀の瞳は雪の厳しさを秘め、鋭くリズを見つめ返していた。
なぜか、責められているように感じてしまう。
その厳しさが、リズは少し怖かった。
それでも。
それでもリズはスノーウィが好きだった。
いまは……その奥にノエルを感じる。
『守りたいって思っちゃったんだから、仕方ないよね』
屈託なく微笑って言ったノエル。
スノーウィは最後まで……その選択を受け入れようとはしなかった。
あの時の慟哭を、未だ覚えている。
それでもノエルは守ったのだ。
彼の生命を。
彼の視線が鋭さを増す。
冷たい風が吹き抜けた気がした。
固めたはずの決意が、わずかに揺らいだ。
「私は……」
そこまで言ってリズは言い淀んだ。
「リズ」
瞳と同じく鋭い、声だった。
「君が選ぶ必要はないんだよ」
その言葉は閉じ込めたはずのリズの感情を、わずかに揺さぶった。
「…………なぜ……?」
かろうじて声が零れる。
「君が……」
スノーウィは一度言葉を切る。
冷たい空気が2人を包む。
「君が選ばなくても、世界は続く」
その言葉にリズの胸は一気に冷たくなっていくのを感じた。
「でもっ……」
反射のように言葉が零れかけて、喉の奥で止まる。
「君が……恐れていたことを知っている」
少しだけ、感情が溶け出したようにスノーウィの表情が変わる。
それを見てリズは込み上げた感情を、そっと飲み込んだ。
「……そうね」
小さく、頷く。
静寂が支配する。
それから、リズは顔をあげて再びスノーウィを見た。
泣きそうになっている自覚はあった。
それでも、リズの胸の中で灯った炎は消えない。
冷たさを凌ぐ温かさが、心を駆け巡る。
アースへの想い――
「それでも、私は選ぶわ」
スノーウィは少しだけ、驚いたように口をきつく噛み締めた。
いや、最初からわかっていたのかもしれない。
「……そうか」
スノーウィはその後の言葉を飲み込んだ。
――ならば、止めることはしない。
最初にリズに抱いた違和感の理由がわかった気がした。
雪が静かに舞い降り始め、世界をさらに白く埋めていく。




