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一方、あの世にて
「フフフ……お父さん、今見た情景も、真実よ」
「お前、知ってたのか!?」
「ええ、こちらの世界では全てお見通しですから。野江良も乃衣瑠さんが既婚者なのは知っていたし、お父さんだけが何も知らなかったのよ、フフフフフ……」
「何が可笑しいし!」先立った妻に笑われたら、定の屈辱感は大きかろう。
「さあ、お父さん、お迎えの船が来たわよ」笑顔のシメ子とは裏腹に、
「ああ……」意気消沈の定は船に乗り、一応、三途の川を渡ることに成功、成仏は出来るのだ。
しかし、
「私はもう時期、将来、三人目の総理大臣に就任する女の子に生まれ変わりますから。せっかくお父さんに会えたけれど、一緒に過ごす期間は短いわ」明鏡止水のシメ子に、定は、
「じゃあ、俺はまた独りで……」
「そうです。親族達も次々に他の人に生まれ変わっていますし、乃衣瑠さんと野江良が言った通りの運命です」とどめを刺された。
「人が嫌がることは押し付けてはいけないのだな……」後悔先に立たずたが、定がまた誰かに生まれ変わって、今の思いを覚えていてくれるのを、シメ子は切に願っていた。




