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負の連鎖

 ニ〇〇八年九月十五日、アメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻し、そこから連鎖的に世界金融危機が発生した。これは一九ニ九年に起きた、世界恐慌以来の世界的な大不況だった。

 

 河野電機もこの影響で事業環境が悪化し、翌ニ〇〇九年に、製造部だけでも約四十人の派遣社員が解雇される。その中に野江良も入っていた。野江良を含めた派遣社員は、九月三十日付で全員が契約終了となる。

 野江良は翌十月一日から、また無職に逆戻り。だが、グッドウィルにて短期派遣で二年、河野電機を含めると五年、短い期間ではあるものの、野江良にしては自分なりにもまあまあ頑張った期間であった。


 しかしその後は……メールコミュニケーターという求人を見て面接を受けたら、何のことはない。出会い系サイトのサクラのアルバイトだった……。次にハウスクリーニングの会社の面接を受け採用されるものの、社長と野江良の二人だけ。おまけに、人の家のトイレに手を突っ込んで掃除した後に手も洗えない。疲れ切って食欲もなくなってしまう。

 

 また派遣に戻り、某電機メーカーの携帯電話修理工場にて、問合せの部署に配属されるも、野江良なりに早く職能を上げようと一生懸命だったが、主任は、仕事が遅い、人をチェンジしてくれ、こう担当者に告げたらしく、一カ月で解雇……。

 

 派遣社員は気楽な稼業ではなく、使い捨てだったのだとまざまざと思い知らされた。

 しかし、二、三週間でペースを掴む人もいれば、ニ、三カ月くらい経って、やっとペースを掴んでくる人もいる。人間には早成型と、反対に晩成型とがある。それらの人々が入り混じって、人間社会は成り立っているのではないのか。


 ところがその電機メーカーは、ニ〇一五年、不適切会計事件をきっかけに経営危機に陥り、大規模な事業再編が行われた。ニ〇一七年に電池事業などの部門を除き、各事業の分社化・子会社化を完了させており、事実上の事業持株会社に近い形態となり、ニ〇ニ三年十二月に上場廃止となっている。

 野江良にとっては、ざまあみろな姿である。

 

 だが、野江良は携帯電話修理工場を解雇された時点で、鬱症状も重なり、心身共に疲弊はピークとなっていた。 

 しかも皮肉なことに、河野電機が人材派遣会社、河野ヒューマン・クリエイトを、二〇一〇年三月三十一日付けで解散すると発表したのだ。

 同社グループ内に人材派遣を行ってきたが、事業環境の悪化に伴い、人材派遣のニーズが大幅に減少したことや、事業構造改革を進める中で、今後もこの状況の改善が難しいと判断しての決定だったそうだ。

 

 よって、野江良が登録していた派遣会社は、二社続けて廃業してしまうのだった。


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