やはりヤバかった会社
グッドウィルは、二〇〇八年一月三十一日に、登録スタッフを港湾業務に従事させた際、五百円程度の賃金が上乗せされていた。これが、無許可派遣の職業安定法違反にあたる疑いがあると指摘される。そして同年六月三日、グッドウィルの課長や元支店長などが、派遣先企業の無許可派遣を幇助した容疑で、派遣先企業の元常務と共に逮捕される。本件は会社の業務として行われたと判断されたことより、同法第六十七条の規定が適用され、法人としてのグッドウィルも書類送検された。当時はNHKを含めた、テレビ各局などのメディアで大きく取り上げられていた。
これにより、労働者派遣法第六条の欠格事由に該当する為、一般派遣事業許可取消となることがほぼ確定。厚生労働省が、七月中にも取消処分を発令する見込みにまで追い込まれた。これに伴い、野江良は残業が出来なくなるばかりか、他の正規社員の人達から、
「原田君、もうヤバいんじゃないか? 職場はそのままで、うちの傘下の派遣会社に移った方が良いよ」とアドバイスされる。
野江良自身も全く同感だったので、職場は河野電機製造部のまま、子会社である派遣会社、河野ヒューマン・クリエイトに登録し直す。
こちらの会社は社員との面談の後に、必要書類に署名、捺印して銀行の口座番号も記入する。給料は手渡ではなく、普通の会社と同様に振込だ。
河野電機の社員達の狙い通り、事業継続が最早不可能になったグッドウィルは、取締役会で事業の廃止と、内勤スタッフ・社員全員へ合意退職の申し入れを決定させる。廃業の決定がなされた為、事業廃止命令の発令はされることはなかったが。
しかし、人材派遣会社グッドウィルが廃業したのは、紛れもない事実。しかも……。
グッドウィルは、基本日雇や短期派遣のアルバイトであった会社にも関わらず、何と有給制度があったのだ。これは登録時の面談では全く説明されなかったし、野江良は派遣事業許可取消となるまで知らなかった。
野江良は当然、男性内勤スタッフに事実確認し、与えられていた有給を全て消化した。
「使っちゃって」内勤スタッフは笑みを浮かべて言っていたが、野江良にとっては笑いごとではない。そのまま廃業していれば、知らないままだったのだから。




