自分なりのアップデート
案の定、一〇〇円ショップのアルバイトも、一年で精神的苦痛を感じ始め、退店……。精神的に嫌になると直ぐ逃げてしまう、野江良の悪い癖。二年間の接客業ではあったが、得られたものもある。それは、年上の女性店員三人、年上の男性店員一人と親しい友人関係になれたこと。
退店した後も半年に一度くらいは五人で集まり、居酒屋で飲んだり、カラオケに行ったりした。野江良が九州に帰郷してからも、四人との友人関係は続くのだった。
この間にも、母はちょくちょく電話をかけてきたり、メールを送信してくる。母にだけは、仕事とか近況をあれこれ伝えていた。その母との電話での話。
『瑠美がこの前、電話で言ってたのよ』母が電話の向こうで、噛み締める様に苦笑を浮かべている姿を、ありありと想像出来た。
母の話によると、
「私も大学の頃、研修で少年施設とかに行ったけど、うちは普通の家庭だよ、陰惨な家庭で育った子は、他に数多といるから……」瑠美はこう言いながら、切ない笑みを浮かべている様子だったそうだ。
そう、何もうちだけが、自分だけが特別ではない。家庭内の問題は、各々の家族にあって然るべき。問題のない家族など存在しない、まちまちなのだ。今でこそ、野江良もやっとそれが解る様になり、少しはアップデート出来ていっている様だ。




