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第二

 周りの同学年が就職活動に励んでいる中、野江良は碌に就活もせずに寮に籠り、昼夜逆転の生活をしている、正しく愚か者だった。

 特に作品を再編集して賞に応募する訳でもなければ、新たな作品を執筆する訳でもない。そもそも文筆家になろうという気概もなく、唯何も考えずに一日が終わるのを所在なく待つ、生来の穀潰し……。将来への危機感もありゃしなかった。

 

 しかも卒業式を翌日に控えた夜も、日頃の不規則な習慣が祟って、一睡も出来ないで出席する始末。夜に開催された記念懇談会には、フラフラの状態でも何とか出席出来たが、その後のクラスでの最後となる飲み会はキャンセルした。

 確かに当時は就職氷河期と言われてはいた。だが、ある深夜番組で引退した男性大物タレントが、就職出来なかったにしても、時代のせいにしたらあかん、と言っているのを野江良は観ていた。ほんとその通りだ……、とは思える。就職氷河期とは言え、同学年でも就職した者は、現実に何人もいるのだから。

 

 しかし就活をサボったとは言え、野江良の東京での人生は終わらなかった。寮長に不動産屋を紹介してもらい、一戸目は無職であることから大屋に断られたものの、二戸目は審査に通り、引続き府中市内の二階建てアパートに転居することが出来たのだ。

 一戸目は府中駅まで程遠い距離だったが、入居が決まった部屋は、最寄駅まで歩いて十分の距離。近くにはコインランドリーや銀行、郵便局もある立地なので、却って良かったのかも知れない。只、無職であることで断られたのは、自分はもう、そんな立場なんだな……、とまざまざと実感させられた。

 何はともあれ、社会人として、野江良の東京での第二の人生は始まるのだった。現時点では、住処以外、仕事も何も決まってはいなかったが。


 社会人となり、乃衣瑠はTKH(東京放送)のアナウンサーとして入社した。アナウンサーとしては珍しく、リケジョである。だが、理系出身であることが役に立つことも多かった。

 例えば、朝の報道・情報番組を担当していた時、新型コロナの話題で男性メインキャスターから、ウイルスと細菌の違いを尋ねられ、

「ウイルスは自己増殖出来ませんけど、細菌は自分で増殖出来る生物です」と即答することが出来た。乃衣瑠は学んだ分野を確りと仕事に活かしていた。

 

 それと、中・高とソフトボール部に所属していた乃衣瑠は、そのことが縁で大の野球好きとなり、全国の球団の本拠地、キャンプ地巡りが趣味となる。

 他には、休日はジムに通って身体を鍛え、ゴルフをしたり船舶免許を取得したりと、活発な人間となっていた。



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