光
季節は巡り、春が訪れた。隠れ里は、以前にも増して穏やかな空気に満ちていた。リゼルは、レイヴンの隣で、日々、呪いを完全に解き放たれた元戦士たちと共に、穏やかな生活を送っていた。レイヴンの左腕の呪いは消え、彼の顔から、あの冷たい仮面は完全に消え去っていた。
ある日、リゼルが庭で花を摘んでいると、ギルバートが深々と頭を下げて彼女の前に立った。
「…リゼル様。この度は、私の愚かな行為により、聖騎士様を危険に晒してしまい、誠に申し訳ございませんでした」
彼の声には、心からの後悔がにじんでいた。リゼルは、優しく微笑み、首を横に振った。
「顔を上げてください、ギルバートさん。貴方は、レイヴン様を心から想っていただけです。貴方の想いは、きっとレイヴン様にも伝わっています」
ギルバートは、リゼルの優しさに、再び涙を流した。彼は、レイヴンの忠実な部下として、この里を守ることを誓い、そして、この里の新しい仲間となった。里の仲間たちは、リゼルを「里の光」と呼び、レイヴンと共に、彼らの新しい未来を築き始めた。
夕暮れ時、リゼルとレイヴンは、二人きりで里の丘に腰かけていた。二人の間には、言葉はなかった。ただ、互いの温かさが、静かに伝わってくる。リゼルは、レイヴンの手に自分の手を重ねた。
「レイヴン様、私…今、とても幸せです」
レイヴンは、彼女の言葉に、心から嬉しそうに微笑んだ。その瞳には、かつての孤独の影はなく、温かい光が宿っていた。
「私もだ、リゼル。貴女に出会う前の人生は、まるで…色を失った世界だった。だが、貴女が、その世界に光と…温かさを運んでくれた」
彼は、リゼルを抱き寄せ、その頬にそっとキスを落とした。
「…ありがとう、私の愛しい光」
リゼルは、彼の腕の中で、満ち足りた幸福に包まれていた。彼女のぷには、もう必要なかった。なぜなら、彼女の心が、そして彼女の想いが、レイヴンを、そしてこの世界を、優しく照らす光そのものになったのだから。二人の瞳は、同じ未来を見つめていた。暗い過去の呪いは消え去り、彼らの前には、互いの愛と、仲間たちの笑顔に満ちた、輝かしい明日が広がっていた。