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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「出来心」

作者: 霧夜シオン


落語声劇「出来心できごころ


台本化:霧夜きりやシオン@吟醸亭喃咄ぎんじょうていなんとつ


所要時間:約30分


必要演者数:最低3名

      (0:0:3)

      (3:0:0)


※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品

 に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。

 それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。



●登場人物


新米しんまい:新米の泥棒だが、かなり間抜け。親分に見込みがないから堅気かたぎにな

   れと言われる始末。でも親分の観察眼は間違まちがってない。


親分おやぶん:新米の親分。

   あくまで泥棒を続けるという男の為に、空き巣から始めろと

   あらゆるテクニックを教え込む。


八五郎はちごろう:貧乏長屋の住人。結構けっこう小狡こずるい考えの持ち主で、

    泥棒に入られたとさとるや、五か月分溜め込んでいて催促さいそくされてい

    る店賃たなちんを待ってもらう言い訳にしようとたくらむが…。


男:新米の泥棒が空き巣を始めて最初に出会う人。

  明らかに挙動不審な新米泥棒を疑ってかかる。


大家おおや八五郎はちごろうの住む貧乏長屋びんぼうながや大家おおや

   八五郎はちごろうが五か月分もめ込んだ店賃たなちんを盗まれた(嘘)と知ったら

   払うのを待ってやろうと言い出す、ふところの広い人。




●配役例


新米・枕:

親分・大家:

八五郎・男:




枕:商売と名のつくもので、優しいものはないと申します。

  アレぁ優しいよ、誰だってできるなんて人から見える商売でも、

  決してそうではないものです。

  これはなにも堅気かたぎの仕事だけに限ったことでもないようで。


親分:おい新米しんまい、こっちへ入れ。


新米:へっ、どうも親分、お呼びだそうで。


親分:お呼びだそうでじゃねえよ、ええ?

   仲間が言ってるぞ。

   おめえは泥棒にむいてねえって。

   もう足洗って堅気かたぎに戻した方がいいってみんなそう言うんだ。

   堅気かたぎに戻れ。


新米:えぇ、そんなこと言わねえで、もう少し面倒めんどう見てやってもらえやせ

   んか親分。

   お願いしますよ。せっかくね、親分をしたってここへ来たんでござん

   すから。なんとかこの道で…。


親分:なんとかこの道ったっておめぇな、泥棒なんてのは人の物を盗みゃ

   それで仕事になるだろうと思う。誰だって盗みの一つや二つしねえ奴は

   ねえがな。

   ところがおめぇ、これが商売となるってと、なかなか安直あんちょくにいかね

   えもんなんだよ。

   泥棒ってのはおめぇみたいにその、ぼんやりしてちゃダメだんだ。

   ま、どうしてもこの道で行きたいってんなら、了見りょうけん入れ替えなきゃ

   ダメだ。

   今までみてえな甘っちょろい了見りょうけんじゃなくて、明日からと言わず、

   たった今から真面目まじめな気持ちで悪事にはげむってんなら、

   まあ置いてやってもいいけどよ。

   それァそうと、おめぇ今までになんか商売したことあんのか?


新米:へい、親分聞いて下さい。

   こないだね、家尻やじりを切りました。


親分:ほお、家尻切やじりぎりか。土蔵破どぞうやぶりたぁ難しい仕事だな。

   で、どうした。


新米:へい、親分に教わった通りね、土蔵どぞう土手どてッ腹にてめえの身体からだ

   やっと入るくらいの穴を開けやした。


親分:そうだ、あんなのに無駄に大きな穴を開けるこたぁねえ。

   それで、どうしたんだ?


新米:中へ入りましたが、どうもおかしいんですよ。


親分:なにがおかしいんだ?


新米:ええ、入ってみるってえと、あたり一面に草がぼうぼうとえてるん

   ですよ。


親分:蔵の中一面に草がぼうぼうとえてる?

   珍しい蔵だな。


新米:そうでしょ?

   あっしも珍しいなァと思ってよくよく見たら、どうも様子ようすがおかし

   いんです。


親分:どうおかしいんだ?


新米:大きな石がね、ゴロゴロゴロゴロしちゃってて。


親分:大きな石?


新米:ええ、ずいぶん大きな石なんですよ。

   小さいやつでもだいぶ大きいんです。


親分:ふうむ、そういう蔵があんのか。


新米:あっしもそういう蔵があんのかなァと思ってよくよく見るってと、

   どうも様子ようすがおかしいんですね。


親分:今度はどうおかしいんだ?


新米:ひょいっと上を見るとね、星が出てるんですよ。


親分:またみょうちきりんな蔵だな…。


新米:みょうちきりんでしょ?

   あっしもみょうちきりんだなァと思ってよくよく見るってと、

   …親分の前ですがね、大笑いなんですよ。


親分:なんだその大笑いってのは。


新米:蔵だと思って入ったら、お寺の練塀ねりべい切り破って墓場ん中に入っちゃ

   ってたんです。


親分:そんなの蔵だか墓だか分かりそうなもんじゃねえか!


新米:それがあいにく暗くてわからなかったんです。

   星を見てから気が付きました。

   そら(空)見たことかって。


親分:何をくだらねえこと言ってんだお前は!

   そんな事を言ってる泥棒があるか、ええ!?

   おめえにゃまともな仕事は無理だ。

   だいいちお前、土蔵破どぞうやぶりなんてのはな、いちばん難しいんだよ。

   しょうがねえ、俺が教えてやるからな、ひとつでも探してみ

   ろ。


新米:え?


親分:を探せ。


新米:はぁはぁ、を探すんですか。


親分:を探してどうすんだよ。

   おめえは泥棒だろうが。

   うちでも建てようってのか?

   そうじゃねえよ、人の住んでねえとこを探すんだ、いや、

   住んでねぇぁいや、住んでるけれども人のーー見ろ、おめえが

   そういう事を言うから俺まで変なのがうつっちまったじゃねえか!

   人がいるけども今いねえ、つまり、留守るすを探すんだよ。


新米:あぁ~、留守るすなら留守るすだってハナから言って下さいよ。

   留守るすならいくらでもありそうですね。


親分:いや、そりゃいくらでもあるんだが、これがなかなか初めのうちは

   おもてを見ただけじゃ区別がつかねえ。

   俺ぐらいになると、ひと目で留守るすかどうか分かるんだがな。

   当たりを付けるには、まず声を掛けるんだ。


新米:へ?わざわざ声を?


親分:そうだ。

   おもてからごめんください、ごめんくださいとやるんだ。


新米:なるほど。


親分:それで返事があって誰か出てきたら、これァダメだ。

   もし返事が無かったら中へ入って仕事だ。


新米:返事がなけりゃ仕事にかかっていいんですね。


親分:ただな、返事がねえからって安心しちゃいけねえ。

   おめえが入れるようなとこはな、大体だいたい近所に出かけててすぐ戻って

   来るようなのばかりだ。

   そん時はな、泥棒ってのはあわてねえように逃げ道てものを考えとか

   なくちゃいけねえ。

   おもてから帰ってきたら裏へ、裏から帰ってきたらおもてへ逃げる。

   これが肝心かんじんなんだ。

   万が一「どろぼォーーーーーッ!」かなんか言われてあわてて表へ

   飛び出すとな、かえって近所の人が出て来て捕まっちまう。

   そんな事になってこりゃいけねえと思ったら、すぐ家の中に取って

   返して盗んだものを全部おっぽり出すんだ。

   そして両手をついて謝るんだ。


新米:え、えっ、せっかく盗んだのに?


親分:しょうがねえだろおめぇ。

   命にはえられねえってやつだ。

   「誠に申し訳ございません。長いこと職につけずにいまして、

   うちに帰ると八十になるお袋がながわずらい、十三をかしらに五人の子供がお

   ります。ほんの出来心できごころからの盗みでございます。」

   とな、涙の一つもこぼしてあわれっぽく持ちかけてみろ。

   あぁそうか、出来心できごころじゃ仕方がねえ、可哀想かわいそうにな、

   これからはもうこんなことするんじゃねえぞ、ってさとされてな、

   上手うまくすりゃあ何がしかのぜにもくれて逃がしてくれるって寸法すんぽうだ。


新米:へえぇ、ぜにをもらえるんですか?

   なんだか親分の話を聞いてるってとなんですね、盗むよりも捕まっ

   たほうがもうかるような気がしますね。


親分:いやいや、必ずくれるってわけじゃねえぞ。

   くれるかもしれねえ、だからな。


新米:あ、かもしれない、ぁそうですか…。

   じゃとにかく向こう行って、ごめんくださいって声を掛けるんです

   ね。


親分:そうだ。


新米:で、返事が無かったら中へ入って仕事すると。

   「はぁ~い」って誰か出てきちゃったら、「すいません、ほんの

   出来心からの盗みでございます」って言うと。


親分:そりゃ捕まってから言う言い訳だよ!

   いきなり顔合わせて、出来心できごころからの盗みでなんて言ったら、

   てめえが泥棒だって看板ぶら下げて歩いてんのと同じじゃねえか!

   しっかりしろィ!

   そういう時にはな、とぼけて何丁目何番地はどのへんでございます

   か、なになに兵衛べえさんのお宅はご存知ぞんじですかって聞くんだよ。

   向こうが知ってようが知らなかろうがかまわねえ。

   ありがとうございます、さようならって出てくりゃいいんだ。


新米:あ、なるほど…これァうまいですね。分かりやした。

   ぇ~じゃああの、これから行ってきやす。


親分:おう、うまくやってこい!


新米:【つぶやく】

   ぇ~、まず声かけて、返事なかったら入って仕事…。

   誰かいたら、なになに兵衛べえさんのお宅はどのへんで、

   何丁目何番地はご存知ぞんじですかって聞いて…あれ?

   っと、このうちから始めるか…。


   ごめんくだーい、ごめんくだーい。

   少々うかがいますごめんくだーい。

   少々うかがいますー。


親分:【声を落として】

   おーい…!

   隣からやるんじゃねえよ…!

   町内を離れてからやれェ…!


新米:【声を落として】

   ぁっ、へ、へい…!


   【二拍】

   このくらい離れたらいいかな…?

   ごめんください、ごめんください!


男:おい。

  そこのあんた。


新米:!ぁ、ぁっ…どうも…。


男:お前さん、そこだよ。


新米:ぇっ……。


男:あの、表通おもてどおりに酒屋あるだろ。

  そこが大家おおやさんだから、行って聞いてみな。

  探してんだろ?


新米:あ、いえ…留守るすさがしてます…。


男:なんだと?変な野郎だなこいつは。


新米:そ、そう見えますか…?


男:うさんくせえ野郎だ。


新米:はあ、ごもっともで…。


男:なんだとこの野郎ッ!


新米:うわわッ、ごめんなさいィッ!


   【二拍】


   なかなか難しいねこれ…留守るすうちなんてどこにでもあると思ってた

   けど、そうでもねえよ…難しいなァこれ。

   あれ?走った勢いでこんなとこに飛び込んで来ちまったけど…

   きたねえ長屋ながやだなあこらァ。

   ははあ、貧乏長屋びんぼうながやかな?

   両側ののきが腐ってぶら下がってやがる。

   …あれ、いちばん奥のうちが少し戸が開いてるよ。

   ちょっと行ってみようか。


   ごめんください。ごめんください。

   少々うかがいます。

   …もうちょっと開けてやろうかな…。

   ごめんください…!

   …どなたもおいでになりませんか…?

   誰もいないという事は、物騒ぶっそうですよ…泥棒が入りかかってますよ…

   ?

   …こりゃぁありがてえや。

   犬も歩けば棒に当たるだ・・・。


   …あれ?なんだこの家は…か?

   いやそうじゃねえ。部屋の真ん中に越中えっちゅうふんどしがしてあるって

   事は、人が住んでるからなんかしてあるって事だな。

   けど変なうちだな。

   たいがい人が住んでたらなんか置いてあるもんだけどな…ちゃぶだい

   とか、茶箪笥ちゃだんすとか、七輪しちりんとかさ。

   けど、何にもねえな、このうちは。

   たたみってたたみが全部見えるって家も珍しいよ。

   にしても汚いね…こりゃたたみとは言えねえな…。

   「たた」が無くなって「み」ばかりになっちゃってるよ。

   ん、なんだこりゃ。土鍋どなべがあるな。

   何が入ってるかな…ってああ、おじやだ。

   …食ってやろ。朝から何も食ってねえんだ。

   このふちの欠けた茶碗ちゃわんにちょいとよそって…いただきましょうかね。

   ずずーっ、んむ…んむ…ずずっ、ずずーっ、んむ…んむ…。


   【しみじみと】

   うまい…うまいねこれ。

   お代わりいただこう…ってあ、あと半分しかねえや。

   一杯半てのはしみったれだね…。

   ずずっ、ずずーっ、んむ…んむ…。

   ンまいなこれェ…かつぶし使って出汁だしとってるね…!


八五郎:お隣のばあさん!いまけえったよ!

    留守中るすちゅうに誰も来なかったかい?


    ああ、誰も来なかった、うん、ありがとありがとう。

    今日はもう出かけねえから。


新米:い、いけねぇ、このうちのやつけえって来ちゃった…!

   どっどっどっどうしよう…!

   【残りのおじや全部かき込む】

   ずずっ!ずずーっ!

   【もぐもぐしながら】

   うんとね、おもてから帰ってきたら裏に…ッあっ!大変だ!

   裏ぁ石垣いしがきで行き止まりだ!

   【慌てる】

   どっどっどうする石垣いしがきでびったりこっちまであぁぁダメだ逃げらん

   ねえあぁこれどうしようかなっいけねェ入ってくるあぁこれどうし

   ようかなあぁぁぁしょ、しょうがない、この台所の板上げて、

   なか入ってぬかみそおけの隣にこうやって…あとを閉めて…

   はあぁぁなんまんだぶなんまんだぶ…!


八五郎:あれ?誰か来たのか?

    誰も来ねえからって少し戸を開けていったら、いま盛大にいて

    るじゃねえか。

    おや、土鍋どなべふたが…っあ!

    誰か俺のおじや食っちゃったのか?

    もらったのがあんまりうめえから残しといたんだよ?

    なんだよおい、人が食っちゃうくらいなら食っとけばよかったよ

    …。

    あ、ああ、あ、なんだこれ、なんだこの足跡は。

    泥の足跡いっぱい付いてるな…泥かあ……泥棒…。

    !これァ泥棒だよ…!

    さあ大変…でもなんでもねえな。

    俺のうちに入ったってなんにも持ってくもんねえんだからな。

    バカな野郎だね…入るにこといて、俺んとこ入るこたぁねえだ

    ろ。

    他のうちならなんか持ってくもんあるだろうに、間抜けな奴だな…

    いや待てよ。これァ悪く言えませんよ。

    せっかく入った泥棒だ。こいつをただのがす手はないね。

    大家おおやさんとこから店賃たなちん催促さいそくが来てたね。

    矢のような催促さいそくだよ、五つもまってんだ。


    よし、これ言い訳に使っちまおう。

    せっかく入ってくれた泥棒だ、ありがたいと思わなくちゃいけね

    ぇや。


    大家おおやさーーーん!

    大家おおやさーーーん!ちょいと出て来てくれェ!

    大変だよォーー俺んとこに泥棒が入ったんだ!

    大家おおやさんちょいと早く出てきてくれェー大家おおやさん泥棒だよ大家おおや

    んどろぼうどろぼう大家おおやァーーー!


大家:誰だ、いま俺のこと泥棒大家どろぼうおおやっつったのは!

   いつ俺が泥棒した!


八五郎:ぁあっはは…いやどうもすいません。

    「が入った」って真ん中を取っぱらっちゃったら、その、ね、いや、

    すいません。

    あの、大家おおやさん、泥棒が入りました。


大家:泥棒が入った?お前のところへか。

   何か置いて行ったか?


八五郎:いや、置いてったんじゃなくて持って行ったんですよ!

    泥棒なんですから。

    いや、大変なんですよ。あの、大家おおやさんのとこにね、

    まってた店賃たなちん五つ、やっと払えそうだってんで持ってこうと

    思ってたら、そっくり持ってかれちまったんで。

    すいませんが、もう少し待ってもらいてえんです。


大家:おうそうか。

   そりゃ泥棒が入ったら店賃たなちんどころじゃねえな、うんうんうん。

   わかったよ、待ってやろう。


八五郎:あ、そうすか、待ってくれますか!

    あぁ良かった…どうも、ありがとうございます。

    じゃ、あのもう結構けっこうですから、またいずれお会いいたしましょう

    。


大家:おいおい、何がまたいずれだこの野郎。

   俺はな、この長屋ながや大家おおやだ。そういう事があったら、ちゃんと届け

   を出さなくちゃいけねえんだ。

   まずそこへ座れ。

   矢立やたてと紙を出して…ほれ、何をられたか言ってみろ。


八五郎:…え?


大家:何をられたか言ってみろ。


八五郎:い、言ってどうするんで?

    あ、あの、おかみへ持ってくんですか?

    あ~…それ持ってくとどうなるんですか、それ。


大家:どうなるってお前、そんなこといちいち聞かなくたっていいよ。

   ほれ、俺の仕事なんだから。

   いや、どうなるったってまあそうだな、泥棒が捕まった時には、

   盗まれた物がこっちへ戻って来るよ。


八五郎:あ、盗まれた物がこっちに戻って来るんですか。いいですね。

    へえぇ、いいなそれ。

    人の家で盗まれた物はこっちへ戻ってくるんですか?


大家:人の家で盗まれた物はその人の家へ戻るんだよ。

   お前の盗まれた物が、お前のとこへ戻るんだ。


八五郎:あぁそうすか。

    じゃあいいです。あっしはね、そう言うこと気にする性質たちじゃ

    ありませんから。


大家:そうはいかねえんだ。こっちの仕事なんだから、何を盗られたか

   言ってみろ。


八五郎:【つぶやく】

    ぇっ、ぇえ弱っちゃったなこらァ…。


    あのね、大家おおやさんの前ですけど、あの、あれですか。

    あの泥棒ってのは何をるんですか?


大家:俺に聞くなよ。

   お前がられたんだから、られた物をかたぱしから言ってけばいい

   んだ。俺がそれを書いてくからな。

   で、何をられたんだ?


八五郎:いぃえそれがね、かたぱしからったってね、いや、あの、見て下さ

    いよ。これもうそっくりられちゃったんだ。

    もうきれーいにられちゃうとね、もうどこに何があったかての

    を忘れちゃうくらいられちゃってるんで。


大家:わけのわかんねえこと言ってやんな。

   まあ、俺も詳しくは知らねえが、泥棒なんてものはな、絵で見ると

   タンス開けて着物とか、あと布団ふとんなんかも持ってくな。


八五郎:あ、布団ふとん布団ふとん布団ふとん!ええ、布団ふとん持ってかれました!


大家:おお、布団ふとんか。布団ふとん持ってかれちゃ寝る事はできねえな。

   どんな布団ふとんだ?


八五郎:綿わたの入ってる布団ふとんです。


大家:あたりめぇだよそりゃ。綿わたの入って無い布団ふとんがあるか。

   綿わたが入ってなきゃ、ただ布っ切れが二枚じゃねえか。

   綿わたが入って初めて布団ふとんてんだよ。

   おもてはどうなってる?


八五郎:おもてにぎやかですよ?


大家:長屋ながやおもての事じゃないよ!

   布団ふとんおもての事だよ!


八五郎:布団ふとんおもて

    ぁ~…あ、大家おおやさんのとこにあの、してる布団ふとんがあります

    よね?あの布団ふとんおもては、何ですか?


大家:俺んとこのはな、おもて唐草からくさだな。


八五郎:あぁそうすか、じゃあうちのとこも唐草からくさですね。


大家:ふむ、じゃあ布団ふとんおもて唐草からくさ、と…。

   裏はどうなってる?


八五郎:裏は石垣いしがきで行き止まりです。


大家:お前のうちじゃないよ!布団ふとんの裏!


八五郎:あ、布団ふとんの裏。

    裏はですね、大家おおやさんのとこでよくしてる、

    あの布団ふとんはなんですか?


大家:ああ、俺のとこのはな、丈夫向じょうぶむきであったかだからって、花色木綿はないろもめん

   だよ。寝冷ねびえをしないんでな。


八五郎:あ、そうなんですか。

    あっしんとこもね、丈夫向じょうぶむきで、あったかだってんで、

    花色木綿はないろもめんです。

    …寝冷ねびえをしないってんで。


大家:それじゃまるっきり同じじゃねえか。


八五郎:恨みっこもないよね?


大家:別に恨んじゃいないよ!

   ぇ~、これァ布団ぶとんだな。

   掛け布団ぶとんはーー


八五郎:【↑の語尾に喰い気味に】

    えぇ掛け布団ぶとんられました。


大家:どんな掛け布団ぶとんだ?


八五郎:あぁあの、アレですね。

    ビードロの掛け布団ぶとんですね。


大家:びいどろぉ?ビロードの事じゃねえか。


八五郎:あっ、ビロードビロード。ビロードです。


大家:で、どんな色なんだ?


八五郎:え~色はね、黒いんです。


大家:おぉ、黒のビロードか。


八五郎:えぇ、黒いんですけど立てるとこう、ふちが黒くなってましてね、

    真ん中が赤いきれになってるんで。


大家:ほぉ、おめえそいつは鏡布団かがみぶとんっつっておつなモンだよ。

   へぇ…っておい、そんなおつ布団ふとんがおめえの家にあったってのか?


八五郎:ぁいや、それはね、ゆん女郎買じょろうかいに行った時にそれで寝たんで。


大家:そんなゆんべの女郎買じょろうかいの話はどうでもいいんだよ!

   おめえのうち布団ふとんの話をしてんだ!

   それでこの布団ふとんは何組くらいられたんだ?


八五郎:三十六組はられました。


大家:おいおいおい、おめえのうちにそんな数の布団ふとんがあるわけねえだろ!


八五郎:ぁ、おもての宿屋の話です。


大家:おもての宿屋はどうでもいいんだよ!おめえのうちの…まぁいいや、

   二組ふたくみぐらいにしとくか、二組ふたくみ…と。

   で、それからどうだ、やわらかもんか何かられたか?


八五郎:やわらかもんられましたねぇ、ええ。

    おじやにおかゆに…


大家:食べ物じゃない、着る物だよ!

   羽二重はぶたえとか…


八五郎:羽二重はぶたえ!そう!

    羽二重はぶたえられましたよ羽二重はぶたえを。

    羽二重はぶたえられてもう弱っちゃった。


大家:で、どんなやつだ?


八五郎:羽二重はぶたえのね、衣紋付えもんつきですね。


大家:ほう、黒紋付くろもんつきか?


八五郎:えぇ黒紋付くろもんつき


大家:?…おめえのうち紋付もんつきなんてのがあったか?


八五郎:えぇあるんですよ。あの、先祖伝来せんぞでんらい紋付もんつきがね。


大家:先祖伝来せんぞでんらい

   だいいちおめえに先祖せんぞなんていたのか?


八五郎:あ、ありますよ!

    あっしがいきなりオギャアと生まれてくるわけないでしょ!

    先祖せんぞがあって、順々に生まれてくるんですから。


大家:そりゃまそうだろうけどさ。ふぅむ、これァ驚いたな。

   ええと、羽二重はぶたえ黒紋付くろもんつき…と。

   で、もんは?いくつくっついてんだ?

   三所紋みところもんか?いつ所紋ところもんか?


八五郎:ぇ、えっと…六所紋むところもんかな?


大家:六所紋むところもん!?

   なんかもんがひとつ余計よけいだなそれ。半端はんぱじゃねえか。

   どこに付けてんだ?


八五郎:ぁー、お尻へ付けますか。

    肛紋こうもん(肛門)、なんて。


大家:なにくだらねえこと言ってんだよ!

   まったく…まぁいいや、いつ所紋ところもんにしておこう。

   それで、どんなもんだ?


八五郎:え?


大家:どんなもんだって聞いてんだよ。


八五郎:ぇえと雷紋かみなりもん(雷門)だったかな。


大家:雷紋かみなりもん!?そんなもんがあるかよ!

   どういう形してんだ?


八五郎:え、どういう形って言われたって弱っちゃうね。

    ぇえと、こう、なんかね、こんなふうに、こんなね…あの、

    人間のお尻が三つくっついてるようなもんですね。


大家:きたなもんだね、お前のとこのもんは。

   あ、そうか、そりゃ片喰かたばみってんだろうな。


八五郎:えぇ、うわばみですね。


大家:片喰かたばみだよ!


八五郎:ぇあぁ片喰かたば片喰かたばみ。


大家:ぇえと、片喰かたばもんで…いつ所紋ところもん黒紋付くろもんつきが一枚と…。


八五郎:で、裏が花色木綿はないろもめんと。


大家:なに?…おめえな、羽二重はぶたえなんて結構けっこうな着物の裏に、花色木綿はないろもめんなん

   てくだらねえきれを使うわけねえだろ。


八五郎:ぇぇ、でも丈夫向じょうぶむきであったかい。

    寝冷ねびえをしない。


大家:なに言ってんだい…。

   紋付もんつき着て寝るバカがどこにあるんだ。


   【二拍】

   他に何かられたか?


八五郎:あとはおびを一本、られました。


大家:おびか、どんなおびだ?


八五郎:はだかおびです。


大家:はだかおび博多はかたおびじゃねえか?


八五郎:あぁそうか、博多はかたおび博多はかたおび

    …裏が花色木綿はないろもめん


大家:そんなところに花色木綿はないろもめんつけるかよ!


八五郎:丈夫向じょうぶむきであったかい。

    …寝冷ねびえもしない。


大家:…何をグダグダ言ってんだい…。

   ぇーおびを一本、博多はかたおびな…。

   それからどうだ、夏物なつものなんかられたか?


八五郎:夏物なつものられましたよ!スイカにキュウリにまくわうり


大家:そういう夏物なつものじゃないんだよ!着る物だ。

   上布じょうふかなんかられてないか?


八五郎:ぁそうそうそう、上布じょうふ上布じょうふ

    ぇ~とても丈夫じょうぶ上布じょうふで…


大家:なに言ってんだよ。

   えーと、この上布じょうふしまか、かすりか?


八五郎:ぇぇし、しまかすり(霞)か雲か。


大家:なんだよそれは…。

   しまか?


八五郎:っそうそう島、しま、しま、…桜縞さくらじま(島)かな。


大家:桜縞さくらじまァ?

   おめえ、そんな鹿児島みてえなしまがあるかよ!

   で、大名だいみょうか?


八五郎:ぇっ大名だいみょう…。

    大名だいみょうまでァいかないでしょう、うちあたりは。

    旗本はたもとかな?


大家:旗本はたもとォ!?そうじゃないよ!

   たてじまのこう、細いのを大名だいみょうってんだよ!

   ったくしょうがねえな…じゃ、しまの…大名だいみょう、と…。


八五郎:安宅あたけ本間ほんまか。


大家:淡路あわじ佐渡さど大名豪族だいみょうごうぞくじゃないんだよ!


八五郎:え、ホンマ(本間)ですか?


大家:くだらないよ!


八五郎:で、裏が花色木綿はないろもめん


大家:……あのな、夏物なつものなんだよ。

   ぴらぴらしてる。

   向こうがけて見えるようなのを上布じょうふってんだ。

   そんなもんに裏地うらじを付けてどうすんだよ!


八五郎:丈夫向じょうぶむきであったかい。

    寝冷ねびえもしない。


大家:バカの一つ覚え言ってんな、ほんとに…。

   あとは何かられたか?


八五郎:あ、あとね、そういえば刀ァられましたね!

    刀を一本。


大家:刀ァ!?おめえのうちに刀なんかあったのか?


八五郎:あったんですよ!ええ、先祖伝来せんぞでんらいの刀がね!


大家:また始まりやがったな。

   えーと、それでどんな刀だ?

   長剣ちょうけんか、短剣たんけんか?


八五郎:えぇと…中剣ちゅうけんかな。


大家:中剣ちゅうけん!?

   そんな刀があるか!

   長い刀が長剣ちょうけんで、短い刀が短剣たんけんだ。


八五郎:あぁ…え、じゃあ、じゃんけん…。


大家:な、なに言ってんだよ!

   もしどっちでもないってんなら、中剣ちゅうけんて言い方じゃなくて、

   脇差わきざしってんだよ。


八五郎:あぁそうすか!

    いやでもあっしの名前がね、八五郎の(はちごろう)八公はちこうですから。

    別に忠犬ちゅうけんと言っても、おかしくないかなって…。


大家:…あのな、俺ァおめえの洒落しゃれを聞く為にこうやってあれこれ書いて

   るんじゃないよ!

   まったく…、で、めいはあるかい?


八五郎:あ、めいね。

    めいはないんですけどね、えー、埼玉さいたま叔母おばさんがね。


大家:おめえの身内みうちを聞いてるんじゃないよ!

   刀のめいがあるのかって聞いてるんだ!

   無銘むめいか?


八五郎:む~~…無銘むめい無銘むめいです!

    たしかあそこにね、「むめい」って書いてありました!


大家:あのな、何か書いてあったらそれはもう無銘むめいとは言わねえんだよ!

   何にもないから無銘むめいと言うんだ。

   ぇ~…無銘むめい脇差わきざし一振ひとふり、ねぇ…。


八五郎:裏が花色木綿はないろもめん


大家:バカ野郎!

   刀に裏なんか付くか!


八五郎:丈夫向じょうぶむきで、あったかい。

    寝冷ねびえをしない。


大家:【わざと無視して】

   さ、あとられたのはなんだ?


八五郎:あ、あとはですね…タンスなんかられました。


大家:なんだその、「タンスなんか」とは。

   タンスならタンスと言え。


八五郎:え、えぇタンスタンス。


大家:だいいち、おめえのうちにタンスなんかあったのか?

   いっぺんだって見た事ねえんだが。


八五郎:えぇ大家おおやさんに見つからねえように裏の方に隠してましたんで。


大家:別に隠すこたぁねえだろ。

   で、どんなタンスなんだ?

   なにでできてる?


八五郎:ぇ、き、き、き、きりですよ。


大家:きりのタンス!

   そんな結構けっこうなタンスがおめえのうちにあったのか?

   これァ驚いたな…。

   で、きりはどんなきりだ?

   総桐そうぎりか?前桐まえぎりか?

   それとも三方桐さんぽうぎりか?


八五郎:ざんりかな。


大家:ざんぎりィ?

   …ま、おめえのうちだから前桐まえぎりだろうな。

   前桐まえぎりのタンスが一棹ひとさおと。


八五郎:裏が花色木綿はないろもめん丈夫向じょうぶむきであったかい。

    寝冷ねびえをしない。


大家:おめえな…タンスに裏は付けねえよ。

   あ、タンスのおおい掛けか。


八五郎:そうそうそうおおい掛けですよ。裏が花色木綿はないろもめん丈夫向じょうぶむきであった

    かい。寝冷ねびえをーー


大家:【↑の語尾に喰い気味に】

   わかったわかった、一人でいつまでも言ってろ。


   あとはなんだ?


八五郎:え?


大家:あとは何をられたんだ?


八五郎:えぇあの、ですからさっきも言った、大家おおやさんとこへ持ってこう

    と思ってた、あの、あれ、お金ですよ、お金。

    店賃たなちんられました。


大家:おぉそうだったな、店賃たなちんか。そうかそうか。

   そりゃあがくは大きいだろ。


八五郎:えぇ大きいすね、畳二畳敷たたみにじょうじきくらい。


大家:なに言ってんだい…。

   額面がくめんが大きいのかってんだよ。

   ぇ~店賃たなちん五か月分な…。


八五郎:裏が花色木綿はないろもめん丈夫向じょうぶむきであったかーー


大家:おさつに裏を付ける奴があるかい!バカだな。


新米:おぉいおいおいおいッ!!冗談じゃねえやこらァ!

   さっきから黙って聞いてりゃ、アレをられたコレをられたって

   嘘八百うそはっぴゃくならべやがってよ!

   てめえのうちにゃ、何にもねえじゃねえか!

   嘘ばっかりつきゃがって!


   噓つきはな、泥棒の始まりってんだこの野郎ォ!

   この大噓おおうそつき!!

   とんでもねえ野郎だ!俺と一緒に奉行所ぶぎょうしょへ来い!


大家:【少々あっけにとられている】

   なんだこいつは。

   いきなりえんの下から飛び出して来やがった。

   ははぁおめえはなんだな、このうちへ入った泥棒だな?


新米:泥棒?冗談じゃねえやな!

   泥棒ったって、何かりゃ泥棒だろ!

   このうちるもんなんか何もねえんだ!

   どこ見たってるもんなんか一つもありゃしねえじゃねえか!

   俺ァおじやを一杯半食っただけだ!


大家:おじやを一杯半食おうと半分食おうと、人のものったら泥棒だろ

   この野郎ッ!

   そんなとこでえばってる奴があるか!

   そこへ座れィ!

   俺ァこの長屋ながや大家おおやだ!


新米:えぇ!?

   【いきなりトーンダウン】

   大家おおやさんですか…ぁあいけね、夢中になって飛び出しち

   ゃった…あ、あのぁの、あれでございます。

   実はあっしはなげえこと失業いたしておりまして、うちへ帰りますと

   十三になるお袋がながわずらいで、八十をかしらに五人の子供がおります。

   ほんの出来心できごころからの盗みでございます。

   お金ください。


大家:な、なんだこいつは…!?

   そうか、どうもおかしいと思ったらおめえはなんだな、

   新米泥棒しんまいどろぼうだな?

   まぁたとえな、なんだろうとそうやって出来心できごころだと言われちゃ、

   こっちも矛先ほこさきにぶるよ。無理におかみに突き出したくはねえ。

   大体だいたいよ、おめえみてえな奴は泥棒にむいてねえ。

   早く足を洗え。


新米:えぇみんなからそう言われます。


大家:そうだったら早く洗った方がいいやな。

   出来心できごころと言われちゃあ、こりゃしょうがねえ…

   あれ?

   あれ?八公はちこうの野郎どこへ行きやがったんだ?

   姿が見えなくなったぞ?


   ってあッ!この野郎ッ!

   八公はちこうッ、おめえがえんの下にもぐり込んで何してんだ!

   こっちへ出て来いッ!


八五郎:へぃっ…。


    どうも、大家おおやさん…しばらくで。


大家:何がしばらくだバカ野郎ッ!この人を見ろ!

   たとえうそにもそういう暮らしをして、それで貧しくってしょうがね

   えから出来心できごころでこんな事をしてるってんだ。

   てめえはなんだって、られもしねえのにあれられたこれられ

   たって、そんな嘘ばかり並べるんだ!


八五郎:【少々べそをかいている】

    大家おおやさん、これもほんの出来心できごころです。




終劇




参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)


柳家小三治(十代目)



※用語解説


家尻やじりを切る

盗人が家や蔵の後ろ壁を切り開いて侵入し、盗みを働くこと。

また、その盗賊自体を指す場合もある。


了見りょうけん

料簡とも書く。

思いを巡らす事、考え、思案。


練塀ねりべい

土と瓦を交互に積み重ねて作られた土塀のことで、特に江戸時代では

寺社仏閣や武家屋敷などでよく見られていた。


・犬も歩けば棒に当たる

実は幸運説と災難説の二つの意味が存在している。

うろつき歩いている犬が人に棒で叩かれるという事から、

「でしゃばると思わぬ災難にあう」という、戒めの意味と、

現在では「何でもいいからやってみれば、思わぬ幸運にあう」

という事の「たとえ」としても使われているようです。


店賃たなちん

お家賃のこと。


矢立やたて

今で言う、筆記用具のセット。


鏡布団かがみぶとん

裏布を表の方に折り返して、額縁がくぶちのようにい上げた布団。

鏡の形に似ているところからいう。


やわらかもん

白い糸で白生地しろきじを織ってあとから色を染めた染めの着物のこと。

呼び名の通りやわらかいのが特徴。 色無地いろむじや訪問着、付け下げなどが

これにあたる。


羽二重はぶたえ

平織りと呼ばれる経糸たていと緯糸よこいとを交互に交差させる織り方で織られた織物の一種。

絹を用いた場合は光絹こうきぬとも呼ばれる。

通常の平織りが緯糸と同じ太さの経糸1本で織るのに対し、羽二重は経糸

を細い2本にして織るため、やわらかく軽く光沢のある布となる。

織機しょっきおさの一羽に経糸を2本通すことからこの名がある。

白く風合いがとてもよいことから、和服の裏地として最高級であり、

礼装にも用いられる。

日本を代表する絹織物で『絹のよさは羽二重に始まり羽二重に終わる』と

言われる。

そりゃアニメの中で故・桂歌丸師匠が怒るわけだ。


紋付もんつき

物や羽織に家紋を付けたもののことを指す。

特に礼装用の和服を指す場合が多い。

紋付は、格式を表すために用いられ、結婚式や葬儀、卒業式など、

フォーマルな場で着用される。


黒紋付くろもんつき

葬儀で着る紋付で家紋が縫われている。

昔は祝い帯を締めて結婚式に出る事もあった。


三所紋みところもん

背中に一つ、両胸に二つ家紋が縫われている紋付。


いつ所紋ところもん

背中に一つ、両胸に二つ、両袖に二つ家紋の計五つが縫われている紋付。


片喰かたばもん

多年草の片喰(カタバミ、酢漿草とも書く)の葉をかたどった家紋。

片喰は夜に葉を閉じた姿が葉が食いちぎられたように見えることから

「片喰」と名付けられた。雑草として踏まれても枯れない力強い生命力

から家紋として用いられ、もっとも歴史のある家紋の一つとなる。


花色木綿はないろもめん

花色と書くが、実は青色。

多くは裏地に使われる。


上布じょうふ

細い麻糸(大麻と苧麻)を平織りしてできる上等な麻布 。

過去に幕府などへ献上、上納された。縞や絣模様が多く、

夏用和服に使われる。


安宅あたけ

淡路の安宅氏のこと。


本間ほんま

佐渡島の本間氏のこと。


佐渡さど

佐渡島のこと。


淡路あわじ

淡路島のこと。


脇差わきざし

一般的な日本刀よりも短い日本刀のこと。

江戸時代、武士は腰に2振の日本刀を差していたが、その短い方が脇差。

打刀が使えなくなった場合の予備の武器として使用された他、武士階級

ではない町民も持つことが許されたため、江戸時代には特に多くの名刀が

作られた。


総桐そうぎり

家具、特にタンスなどの主要部分が全て桐材で作られているものを指す。


前桐まえぎり

タンスなどの家具で、前面の板にのみ桐材を使用し、側面や背面には

桐以外の杉などの安価な材料を用いたものを指す。

主に桐材が高価だった時代に、全体を桐材で覆うのではなくコストを抑え

るために用いられた製法。


三方桐さんぽうぎり

タンスなどの前面と左右の側面を桐材で作り、その他の部分は桐以外の

材料で作られたものを指す。主に桐箪笥に見られる構造で、前面と側面を

桐にすることで、外観の美しさと桐の特性を活かしつつ、コストを抑える

ことができる製法。




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