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揺蕩う音符とシンデレラ 〜無能力者の私がなぜか貴族トップの家の次期当主に溺愛される〜  作者: 泉紫織
第2部

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上院

 時は少し遡り、2月末日。宝条家現当主、宝条一史(ほうじょうひふみ)は2週間前に起きた山梨の大戦(関係者はそう呼んでいる)の後片付けに追われていた。今日は大戦後初めての上院、すなわち貴族会議が行われる。


 貴族会議とは、貴族の名家の当主が勢揃いし、直近で話題になっていることを共有したり、今後の政治をどう運ぶのか話し合ったりする場である。貴族のヒエラルキーのトップに位置する宝条家の当主として、今回は大戦を経て生じた不満をぶつけられるだろう。どうしたものか、と頭を抱えつつ、秘書の白井彰人(しらいあきと)と共に車に乗り込む。


「20XX年2月の貴族会議の開始を宣言します」


 議長が会議を始める。予想できたことだが、神楽家の席は空席だ。


 まずは大戦の報告が担当者からあり、被害に対する謝罪を一史が行うことになっていた。


「今回は、宝条が神楽家を押さえ込むことができず、反乱を予見できなかったことで、市街地に多大な損害を与えてしまった。宝条現当主として、申し訳なく思っているよ。現在、さまざまな情報を集めているところだ。きちんとした報告、対策が取れるようになるまで、もう少し待ってほしい」


 立ち上がって頭を下げる。本当に申し訳ないと思っているし、ちゃんとそういう表情を見せた。こういう時は感情を表に出す。貴族は感情を表現してはならないという暗黙の了解があるが、時と場合によると一史は考えている。たまに感情を見せるのも、人身掌握の基礎だと。


 とはいえ、一部からはやはり批判の声が上がる。


「避難民は未だ家に帰ることができていない。不満の声も出ている。早くに対策をしないと、貴族としての権威を守ることが不可能になるのではないか」

「神楽家の反乱のきっかけは、琴葉嬢が宝条家次期当主くんと婚約したことだと言うではないか。予見できなかった、というには無理があるのではないか。反応等を見ればわかったことだろう」

「うちの将来有望な能力者が今後戦闘できない体になったんだぞ。損失は計り知れない。どう責任を取ると言うのだ」


 一史は落ち着いた声で、一つ一つの不満に誠心誠意回答した。


「山梨の復興をまず何よりの優先事項とする。そのため、現場検証をなるべく早く終わらせ、各家で雇っている無能力者も集めて復興作業に入りたい」

「神楽家が反乱を起こす可能性が全くなかったとはいえない。それでも、反乱を起こすと悟らせないのが普通で、やはり事前に予見するのは困難だったと思うんだ」

「損失に関しては謝罪してもしきれないよ」


 バックに月城がいると考えていることは伏せて。もちろん、気づいている当主も中にはいるだろうが、あえて誰も口にしない。確信のないことをこの場で大っぴらに言うのは危険だし、月城とつながっている貴族が他にいることも考えられる。


 一度批判の声が出てしまったら、あちこちから不満が漏れ出る。これは人間の性だ。謝っているのなら、なおさら。

 

 そこに、威厳のある声が響いた。


「今、貴族の中で分裂している場合ではなかろう。内部分裂を誘って今回の反乱を引き起こした可能性も考えられる。そうなれば、奴の思う壺だろう。それとも、そなたらは市街地を危険に晒した神楽家に賛同する気かね?」


 声の主は浅桜家現当主、浅桜茂彦(あさくらしげひこ)だった。その瞬間、議会はシーンと静まり返る。浅桜の当主はこの議会の中で最年長であるがゆえ、周囲から一目置かれている部分がある。その茂彦がこうやって宝条を庇う発言をした。その事実は非常に大きかった。


 流れはなんとか協力の方向へと持っていくことができた。一史としては、茂彦が口を挟んでくることはなんとなく予想していたが、その結果いい方向に向かってくれて内心ほっとしたのだった。


「今後、平民の中で貴族批判が高まるだろうと考えられるから、それに対する対応を考えよう」


 議題は進んでいく。議会の豪奢なシャンデリアに、疲労が溜まった目がチカチカした。


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