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揺蕩う音符とシンデレラ 〜無能力者の私がなぜか貴族トップの家の次期当主に溺愛される〜  作者: 泉紫織
第1部

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笛吹きと絵描き

商品が置かれている台の影になってその姿は見えないが、この音。間違いなく鈴葉だ。ただ、鈴葉の笛吹きの能力は人を酩酊させるもので、ここまでいきなり全員が意識を失うほどの威力ではなかったはず。何が起きている?


酒にすぐ酔う人とそうでない人がいるように、神楽の笛には酔いやすい人とそうでない人がいる。そして、酒を飲み続ければ酒に強くなっていくように、身近で笛の音を聞き続ければ、酔いにくくなっていくのだ。だから、琴葉はぐらぐらするだけで意識を飛ばすまでは至らない。


逃げようにもドア付近には何人かいるようだし、店の裏口はあるだろうが、今身動きを取ればよろめいて時間がかかる。その間に制圧されて終わるだけだろう。


何かしなくては。震える手でスマホを開く。宝条独自のアプリをタップして、非常事態を知らせるボタンを押した。


これで本家や珀にも通知が行くはず。仕組みは詳しくは知らないが、発信者が誰であるかとどこにいるかくらいは伝わると思う、多分。頭にもやがかかったようでちゃんと考えられない。


それにしても、笛の威力が強い。いつもは鈴葉が能力を発動しても、最初くらりとするくらいで、全然耐えられるのに。玄が裏で手を引いているのだろうか。それとも、他の誰かが?バフをかけるような能力など神楽にいただろうか。考えようにも頭が回らない。


「そろそろいいかしらね。どうせ出来損ないさんは耐性あるから落ちないし。相楽(さがら)、始めなさい。」


鈴葉の声で数人の男が店内に入ってくる。青杉が乱暴に退けられ、見知った顔の男たちが琴葉を無理やり引っ張る。なんとか引き剥がそうとするが、半酩酊状態で男の力に勝てるわけがなく、目隠しをされ、あっさりと店の外に出されてしまった。


「あらあら、抵抗しても無駄よ。お姉様にはたくさんお話ししたいことがあるんですの。ついてきてもらわなくっちゃ。」


店の目の前に神楽の車があり、中に連れ込まれる。最後に車の外側につかまって全力で抵抗したが、口を塞がれ、力が抜けてしまい、結局負けてしまった。


睡眠薬を嗅がされたようで、笛による酩酊と相まって視界が溶けていくような感じがした。目を閉じる直前、一列前に座る女がパレットに絵の具を出して、血だらけの手で絵を描いているのが見えた。あれは誰だったっけ……。


琴葉を乗せた神楽の車は、その場を何事もなかったかのように走り去った。


※ ※ ※


しばらくして、商店街の端っこで目を覚ましたとある護衛が、周りを見渡すと、護衛はみな近くに倒れている。持ち場が遠かったやつも、全員同じ場所に集められているのだ。大通りからは目立たないビルの影のような場所である。


「おい、起きろ!」


隣のやつを揺さぶると、そいつも目を覚ました。だが、受け答えがはっきりしない。まるで酒に酔ったかのようだ。


自分の記憶を辿ってみると、綺麗な笛の音が聞こえて、これは聞いてはいけないやつだと思い、耳を塞いでいたが貫通してきて、抗おうとするもあっけなく意識を手放したようだ。なんとも情けない。


そして、そんなことを言っている場合ではない。スマホを確認すると、次期当主婚約者の携帯から非常事態の発信があったようだ。つまり、自分たちは護衛に失敗したということだ。


慌てて次期当主婚約者がいたアクセサリーショップまで走る。まだ酩酊状態が残っているのか、少しふらつくが、そんなこと言っていられない。


店のドアを開けると、目線の先に護衛の青杉が倒れているのが見えた。少し奥を見遣ると、店員らしき女性たちが積み重なるようにして倒れている。そして、肝心な次期当主婚約者が見当たらない。


もう一度店を出て、あたりを見渡してみるが、どこにもいない。スマホで次期当主婚約者の携帯に電話をかけてみるが、出るはずもなく、頭に護衛任務失敗の文字が色濃く浮かんでくる。


まずい、解雇されてしまうかもしれない、そう思いつつ、とにかく上の者に連絡をしなければと、白井暁人(しらいあきと)に電話をかける。白井暁人は、宝条一史の右腕、秘書である。


「き、緊急事態でございます。暁人さん、じ、次期当主の、こ、婚約者様が……。」


槍平(やりひら)、落ち着け、何があった。」


「琴葉様が、攫われました。も、申し訳ございません!宝条の護衛が全員やられました。聞いてはいけない笛の音がしたので、おそらく神楽家と存じます。」


チッと舌打ちが電話越しに聞こえる。槍平は震え上がってしまう。


「了解。直ちに捜索に当たる。お前は、復活した護衛を二手に分け、半分は周辺の捜索と痕跡確認、半分はすぐに本家に戻らせろ。」


「承知いたしました!」


槍平は仕事を失わないために、慌てて護衛を起こし、暁人に与えられた任務を始めた。

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