第2話 どうしてそうなる
天気がよく、ポカポカした気温のとある日。
聖女であるエイミーがいつものように大聖堂でお祈りを捧げているところ、
「エイミー!」
という声が響き渡った。何事かと声の主を探すと、先日エイミーが助けた男が大輪のバラの花束を持ってやってきたではないか。
彼の名前はアラン。身長が高く、スラっとした体形で、髪は艶やかな黒髪、そして目は炎のように赤かった。
(あらこの前のイケメン。どうしたんだろ)
エイミーがそう思っていると、アランが大きな声で言う。
「エイミー、お前を気に入った。是非俺の嫁になってほしい」
跪き、かぐわしい花束を差し出す男に慌てて拒否の姿勢を見せるエイミー。
「い、いやです!」
「どうして」
「私あなたのこと名前すら知らないし、それにあなたきっと身分が高い方でしょう?そんな人のところにに嫁ぐなんて面倒そうで嫌です!」
「ふふ、面白い女だな。確かに自己紹介がまだだったな。俺の名前はアラン・ルーカス。この国の伯爵だ。しかし、この俺が求婚しているというのに嫌がるとは相当変わり者だなお前」
「失礼な上にとんだ自信家ですね。第一なんで私なんですか」
「俺の病を治してくれただろう、そこに惚れた」
そう言われ、カッとなるエイミー。
「私の魔力に惚れてるんじゃないですか!私自身を愛してない人はごめんです」
「意外とロマンチストなんだな」
「余計なお世話です」
エイミーはふんとそっぽを向いた。やれやれと肩を落としたアランはしかし諦めない。
「わかった、俺を深く知ってもらうためにデートをしよう」
「なんでそうなる! ?」
「明日また迎えに来る。楽しみにしていろ」
「どうしてこんなことに……」
エイミーは頭を抱えたがアランは笑って大聖堂を後にした。
***
次の日。アランが大聖堂まで迎えに来た。
「ほ、ほんとにきた」
げっという顔をあらわにするエイミー。
それにも負けないアランはデートの申し込みをする。
「エイミー、俺と出かけてくれ」
「はあ……わかりました。ちょっとだけならあなたと出かけます」
あまりにもしつこいのでエイミーは根負けした。
「本当か!では行こう!」
「どこに行くんですか?」
「ここから20分の観光地だ」
そう言って、大聖堂近くの湖に向かい、船に乗る二人。
アランが舟こぎに銀貨を渡し、目的地である孤島の観光地、コトゥアクトに向かう。
古い石造りの建物が所狭しと並ぶ、島に浮かんだその地はヴェルニカ国でも有数の観光地だ。
観光客が大勢押し寄せている。様子をきょろきょろと伺うエイミー。
「私、ここ初めてきました」
「意外と地元民は観光地に来ないからな」
「そうですね……あっあれ美味しそう」
エイミーは屋台の串刺しになった肉をみて言う。
良く焼けていて、切断面からは肉汁が滴っている。
「どれ、買ってやろう」
「い、いいです自分で買います」
「遠慮するな。親父、これを二つ」
「……ありがとうございます」
「礼などいい。お前の喜ぶ姿がみたいだけだ」
「そ、そうですか」
思わず赤面するエイミー。
(強引だけど、悪い人ではなさそう)
と食べ物を買ってもらって思わずそう思ってしまうエイミー。
その後も、美しい街並みを歩いて景色を楽しんだりと、観光を満喫した二人だった。
***
色々と回ったが、エイミーは仕事を抜け出してきたのでそろそろ戻らなければならない。
その旨を伝えると、
「そうか……」
と残念そうに言うアラン。
「どうだ?今日一日で俺の人となりはわかったんじゃないか」
「だとしても、結婚はしません」
「どうして」
「先日も話しましたけど、あなた伯爵なんですよね?そんなところの嫁なんて面倒そうだし、一日であなたのことを全て知ったわけじゃありません」
「そうか……ではまたデートをして俺を知ってもらわないとな」
全然懲りないアランにエイミーは驚く。
「ええ! ?私の話聞いてました! ?」
「はは、今日一日でもっとお前のことを好きになったよ」
そう笑ってエイミーの頬に優しく口づけるアラン。
「大聖堂まで送ってやろう」
そういうアランだったが、エイミーは赤面するしかできなかった。
「しかし俺も今日一日でお前の人となりがよくわかったぞ」
「あら、じゃあもう私と結婚したくなくなったのでは?」
「いや、素直じゃないけど丸め込まれやすいところなんかは特に気に入ったぞ」
「……よく変わってるって言われませんか?」
「そんなことないさ。ああ!これから俺のことを好きになってもらうと思うとワクワクする」
「とんだ自信家ですね、ほんと」
船着き場に着くまで、2人は喧嘩のようなやり取りを続けて会話をしたのであった。
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