お嬢様(16)と護衛長(36)の賭け事
とある名家の少女がいる。父親譲りの頭脳と金髪、母親譲りのスタイルと黄色の瞳で立派な令嬢となっていた。同世代の女性は彼女に憧れる者も多い。
そして今、自室の椅子に座り彼女らの家族を護衛する責任者で彼女の初恋の相手と向き合っていた。
「貴方は、今でも私のお母様を愛しているの?正直に教えて」
真剣な眼差しを向ける少女に対し、彼もまた真剣な表情で見つめ返す。
「もちろん愛しています。この先、他の女性を愛することはありません」
ハッキリとした口調で答える彼に彼女は複雑そうに笑う。
「一途ね。でも私も貴方一筋。幼い頃お父様に貴方と結婚したいと耳打ちしてからずっと貴方を想ってる。そりゃあ私と貴方は20も歳が離れてる。けれど人妻に恋している貴方にとやかく言われたくないわ。むしろ私の方がまだ健全よ。でも、選んでくれないのでしょう?」
悲しそうに問いかけられ頷く彼を見て俯く彼女はポツリと呟く。
「そうよね、私みたいな子供よりお母様の方が魅力的だし」
「そんなことはない。君はとても魅力的な女性に成長したよ。俺は昔からずっと君を見てきたんだ。だから自信を持ってほしい」
慰めるようにそう言うがその言葉を聞いた彼女は泣きそうな表情となる。
「貴方は優しくて酷い人。振り向いてくれないのにそう言われたら諦めきれないじゃない」
「すまない」
謝る彼に首を横に振る。
「謝らないで。それに私は貴方のことが大好きよ。今も昔も変わらない」
「ありがとう」
微笑む彼に釣られて笑みを浮かべた少女は立ち上がると彼の手を取ると言った。
「ねえ、賭けをしましょう?私と貴方、どちらが先に自分の想いを諦めるのか」
「え?」
戸惑う彼を無視して話を続ける。
「貴方が諦めたら私を貰ってちょうだい。その代わり私が諦めたら、そうね。貴方からのお願いを聞くわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「待たないわ。だって時間制限はないんだもの。私が勝つまで何度でも挑ませてもらうから」
覚悟してねとウインクしてみせる少女に彼は困惑気味だった。
この賭けの勝敗は二人のみぞ知る。