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001 選択
周りの全てが氷に包まれた極寒の世界で、少年は選択を迫られていた。
過酷な環境で生死を分けるような選択ではない。この環境は一時的なものであり、彼はそれに堪え得る装備と実力を持っている。
問題になっているのは、目の前で手を差し伸べている少女。
思わず目を奪われそうな白銀の髪に、透けるような白い肌。染み一つない純白の着物を纏った美しい少女は、澄んだ青色の瞳を不安げに揺らし、彼に問いかけている。
否、懇願している。
「私と、恋人になってほしい」
と。
それは十八年生きた彼が、初めて真正面から受けた告白だった。色恋沙汰になど興味がなかった彼だが、彼女の美しさには一目見た時から惹かれている。
だが、彼はすぐに答えを出せない。
なぜなら、彼女の細い手を取るということは。
陰陽師である彼の一族に対する重大な――
裏切りになってしまうからだ。