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勇者の冒険 〜勇者として召喚された俺の英雄譚〜  作者: アジペンギン
一章、旅の始まり
6/112

4、まだまだ進まない

時間が急に跳んだりしますが、そんな細かいところまで書くのがメンド………難しいから書けないんですよね。

ていうか、他の作品も大体時間をキングクリムゾンしてるので私が悪いというわけではない。


 辺りは熱狂で支配されていた。


 場は、ナハトリア王国王城の西側にある修練場。

 ここでは多くの騎士たちが日々、己を高めあっている鍛錬のための場だ。

 この日も、ウォーミングアップ、素振りに筋トレ、剣術の型の確認。連携訓練や空を飛ぶ敵に対する訓練までを終え、個々の戦闘力を高めるための模擬戦まで進んだところだ。


 広い修練場の中央では、二人の男が向かい合い、今まさに決闘を行おうとしていた。

 

 片方は甲冑を身に纏う男。

 全身鎧を身に纏い、手にはその大柄な体に負けず劣らずの大きさの盾左に、同じくらいの木剣を右に持っている。


 もう片方の黒髪黒目の男は、甲冑とは異なり軽装だ。

 盾はなく、鎧も革製で一部を覆っているに過ぎない。

 武器は木剣一本のみ。

 甲冑のように特別大きいということはなく、ごく一般的な長さと太さだ。


 両社は向かい合い、そして唐突に戦いは始まった。


 「うおおおお!」


 雄たけびと共に甲冑がその大きな木剣を、叩き潰すように振り下ろす。

 しかし、その一撃は空を切り、黒髪を見失うこととなってしまった。


 もちろんそれでは終わらない。

 甲冑は歴戦の戦士だ。

 見失うということは、自身の死角に回り込まれたのだという判断が反射レベルでできるほどには経験がある。

 甲冑はその大きな盾で左を思い切り振り払う。

 

 手応えあった!


 すぐさま左を振り向き、追撃を加えようとして………


 後ろから、脳天に一撃を叩き込まれた。


 歪み、暗くなっていく視界の中で、人ひとりほどの大きさの岩が転がっているのを捉える。

 してやられたと思った瞬間には何もかも終わっていたのだ。

 

 その大きな体は力なく受け身すら取れずに、ズシン、と音を立てて倒れてしまった。

 巨体はピクリとも動かず、誰の目から見ても勝者は明らかになる。


 「次、お願いします」


 黒髪の青年からは申し訳なさげな声が響き、騎士たちは我先にと前に出る。

 結局、黒髪と戦うこととなったのは槍を持つ中年の騎士だった。


 「よろしくお願いします」


 騎士たちはさらに食い入るように一戦に集中し、自分たちの番を待つばかり。

 また、新しい戦いが始まる。

 

 そして、二時間もしないうちに、すべての騎士たちに泥が付くことになるのだった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※


 召喚されてから、三か月の時間が流れた。


 剣も、魔術も、始めは基礎的なものばかりを叩き込まれたのだが、一か月する頃には召喚される前からしたら考えられないほど動けるようになった。

 異常な上達だと思ったのだが、これにはれっきとした理由がある。


 それは、あの軌跡だ。


 そこには歴代勇者たちの知識があった。

 何もそこにあるのは魔術の使い方といった超常のものだけではない。

 いつ、どのように、どう力を入れれば強く、長く動けるのかという知識も埋め込まれていたのだ。

 

 それをなぞろうとすると、始めはうまくいかないのだが出来る。そして、それが軌跡通りになるまで繰り返し、気づくころには達人と呼べるほどに体の動かし方がわかるようになっているのだ。

 魔術に関しても同様。

 魔力を動かし、陣を作る。陣が難しい時は詠唱を交えて『表現』を補助し、何回も繰り返して使える魔術は全部咄嗟にでも使えるようにする。


 正直これがなかった初代勇者は大変だったろう。

 代を重ねるごとに軌跡は濃くなり、勇者として完成するために必要な時間は少なくなるとのことだが、それなら初代様はどれだけ時間をかけて強くなったのやら。

 軌跡に頼れる身としてはもう尊敬しかない。


 それはさておき、早起きと遅寝で一日中休まる暇もなかったけど、二週間続けるころには慣れていた。

 人間なんでも慣れることができるようで、疲労困憊な毎日でもずっと続けていれば次第に癖になってくるもんだ。

 前の世界では、「ボディビルダーはなんであんな苦しそうなこと毎日やってるんだろう?しかも、食事にまでトレーニングを持って来るなんて、いったい何が楽しいんだ?」とか思っていたが、結構気持ちがわかるようになってきた。

 ここ二か月、寝る前の筋トレがいつもの習慣になってしまった。


 とはいえ俺はまだまだだ。

 あそこでは全員に勝てたのだが、まだこの国の騎士団長様には一度も勝てたことがない。

 三回戦ったが、三回ともまともに勝負すらしてもらえなかった。最後の一回に何とか両腕を使わせることができた程度だ。

 なんでも騎士団長様は、この国を二百年守り続けている伝説の騎士なんだそうで、『大賢者』様には相手をするにはまだ早いと言われてしまった。

 でも、あの人、エルフみたいな長命種じゃなくて人間なのにそんなに長く生きてるのか………

 精々、40後半くらいにしか見えないのに………


 魔術で延命とかができるのだろうか?

 そう考えると、やっぱり魔術ってすごいんだなあ、と漠然と考える。

 

 魔術に関して俺はまだまだ知らないことも多いのだが、それを学ぶのがこれからの予定だ。

 この鍛錬だけでもしんどいのだが、勇者の力を正しく使いこなすためには魔術の力も必要とのことで、そっち方面に関しては『大賢者』様に教わっているのだ。

 

 これがかなりのスパルタで、座学では一度吐かれた言葉は一息で言い切るし、その日の講義内容をよくわかっていないとクリアできない課題を実践と言い張って出してくる。

 クリアできないと、爆発したり、凍ったり、痺れたりの罰ゲームもあるし踏んだり蹴ったりだ。

 慣れるまでは「このジジイは俺を殺す気なのか?」とも思ったが、慣れた今となっては………

 今となっては………………………


 うん、まあ鬼畜なのだ。

 今、俺は西の修練場を出て東の魔術塔に向かっている。ここで、『大賢者』様による魔術の修行が行われる。


 「今から『大賢者』様のところに行くんですかー?」


 後ろから幼げな声がかけられた。

 振り向くと、やはりそこには彼女の姿があった。


 リベール=ハル=ハーレンス

 

 俺に付き従うことが使命の今代聖女だ。


 

 「そうだ。やっぱりついてくるのか?」

 

 「そりゃもちろん。勇者様についていくのが聖女というものですよ?」

 

 茶化すような口調で言う。

 この娘はいつも俺をからかおうとしてくる。

 この前なんて、朝起きたらベッドの中に潜り込んでいたのだ。

 とんでもなくビックリ、というか背筋が凍った。

 別に何かをしたわけではないのだが、なんとなしに「やっちゃったのか?」と一瞬思ってしまった。

 あれは心臓に悪いからもうやめてくれと言った時のニマニマ顔はとんでもなくむかついたものだ


 

 「ストーキングが仕事とは、ずいぶんな役目だな」


 「そんなこと言って、満更でもないくせにー」

 

 ほんとにシバイてやろうかコイツ……


 イラつきながら一緒に歩く。

 一度会えばどこまでもついてくるのだ。

 しかももれなく、からかいが付いてくるという要らないオマケ付き。


 それからしばらく、なんということもない雑談に、茶化しも織り交ぜられつつ、いつの間にか魔術塔まで着いていた。

 なんかいつもより疲れた気がする………

 

 「リベール、お前はここで待っとけ」


 「ええー?私を置いてくんですか?捨てないでくださいよー。シクシク」


 「そんな見え透いた泣くふりをするな。お前の安全のためだ」


 きょとんとした顔は結構可愛かった。

 調子に乗られても嫌だから絶対に行ったりはしないが………

 

 でも、しょうがない。本当に危険なんだ。


 

 俺は魔術塔の入口の扉を開けて、『大賢者』様を探す。

 今日はどこにいるのだろうか………?

 




 ん?いや、上か!!


 


 上を見上げると、炎の塊が迫っていた。

 俺は咄嗟に魔術を操る。

 俺の手の先から、巨大な水の槍が出現し、火の玉に直撃した。

 

 第三位階魔術『水撃槍』


 十の位階に分けられる魔術の中で、一番慣れ親しんだ魔術を使う。

 炎はたちまち消え去り、その先からは見慣れた黒ローブの老人の姿があった。


 


 白いひげと白髪は伸びきって、ボサボサで、手入れなど碌にしていないのがわかる。

 身長もそこまで高くはない。俺より頭半個分は低いだろう。

 しかし、その老人から感じる魔力は尋常ではない。

 前に、例えたら俺が小さな湖ほどの魔力はあると言われたが、それならこれは大海だ。


 

 「おうおう、これくらいなら完全に相殺できるようになったか。成長が早いのはいいことじゃなあ」

 

 その老人、『大賢者』はおちょくるような口調でそう言ってきた。

 




主人公君のまわりふざけた性格の人多いなー。

まあ、私がふざけてるのに強いキャラが好きなので仕方がない。

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