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勇者の冒険 〜勇者として召喚された俺の英雄譚〜  作者: アジペンギン
三章、鋼の騎士
43/112

41、アニマの『獣王』は戦闘狂

アレーナが杖使ってる描写書いてねぇ………

付け足さないと…………


 獣人とは、文字通り獣の特徴を持つ人の事だ。


 身体能力も他種族に比べて高く、特に敏捷性に関しては右に出る種族はない。

 さらに五感に優れ、匂いを嗅ぎ分けられる嗅覚、飛ぶ矢の動きを完璧に見切る動体視力など、他の種族に真似できないことも多くある。


 他にも種族的に実力主義な思考を持つ傾向があり、それを元にして関係を広げることも多い。

 他種族であっても、それを強者と認めれば、従ったり、番をつくることも珍しくない。

 このことから、他種族と最も関係を持つ種族と言える。

 

 そのために、普通なら混血はハーフやクオーターなどと言われるのだが、獣人だけは違う。

 様々な血が混じり合っているために、純血も、ハーフも、それ以外も、獣人としての要素が現れていれば獣人とカウントされる珍しい種族だ。

 例えば、獣人としての血が薄い獣の耳と尻尾を持つだけの者も、血が濃い本当に獣を二足歩行にしたような見た目の者も、等しくすべて獣人だ。

 

 しかも、獣人の中でもさらに種類で別れる。

 獅子、虎、熊、狐、鷲などなど、五十近い数の種類があるのだとか。

 同種族間でここまで見た目が異なる種族もない。

 

 ここまで異なるのに、強者に惹かれるという本能は変わらず備わっているのが不思議な所だ。

 特に実力主義な所など、今の獣人の国の体制を見ればそれが色濃く残っていることが分かるだろう。

 

 現国王、『獣王』ライオスは最強の獣人である。


 ただそれだけで、国王なのだ。

 もしも彼を倒せたのなら国王は交代しているし、彼が死んだのなら国王を決めるための戦いが巻き起こる。


 しかし、それも彼が王になってから二百五十年起こっていない。

 それだけの間、挑まれ続け、戦い続け、それでも死なないのが彼だ。

 数多の多種多様な獣人たちすべてをまとめ上げてきた唯一の王こそが彼だ。


 最強の獣人として君臨し続けている、という事だ。



 だから彼は『獣王』と呼ばれるのである。



 ※※※※※※※※※※※

 


 獣人の国、アニマはまさに戦士の畑と言える場だ。


 『獣王』が居を構える城まで歩いてきた四人だが、それはもう絡まれた。

 来たよそ者の強さを測るために戦いを挑んで来ることが珍しくないらしく、アニマの領土に入ってから戦いを挑まれた回数は両の手足の指でも足りない。


 これが国の外で活動したことのある、外の常識を身に着けた者なら滅多にないのだが、そうではない、この国の常識しかない者は関係ない。

 やたらめったらに勝負を挑まれ、とんでもなく面倒くさいことになる。


 普通の行商人などならそんなことはないらしいのだが、これが戦闘を生業にする者たちならこうなってしまう。

 ほとんどの獣人が戦士としての教育を受けていたために、戦士とそれ以外を見分けられるし、獣のカンなのか、誤魔化そうと素人のフリをしてもすぐに分かるらしいのだ。


 だからアニマでは、戦士はどうやっても獣人には勝負を挑まれるのが常である。

 なんともはた迷惑な風習だ。

 

 だから、特に戦いが好きというわけではない三人はそれはもう迷惑そうにしていたのだが、残り一人は違った。

 残り一人、エイルは嬉々として勝負を受けたのだ。

 

 それはもうすごいことになったのだ。

 とんでもなく強い男が居る、という話は強者が大好きな獣人たちの間であっと言う間に噂になった。

 行く街、行く村で戦いを挑む輩が現れ、エイルが片手間で倒せばさらに噂が広がる悪循環。

 

 勇者は自分の分の戦いを押し付けられるので始めは良かったのだが、次第に鬱陶しく感じてくる。

 女性陣など戦士ではないのだから戦いを挑まれないので、獣人は、はなから旅を邪魔する面倒くさい存在だと思うようになった。


 それが治まったのがアニマの首都に当たる都市に着いて『獣王』からの使者が来たときなのだから、三人にとって過去一番で手間のかかる旅となった。

 ちなみに挑まれた本人は楽しかったからあっと言う間だったらしい。


 旅は想定の倍の時間がかかったのだから、本当に迷惑な話だった。

 戦争をしているとのことだが、国民に元気があり過ぎる。

 もっと疲弊するのが戦争と言うものだろう?

 いや、元気が過ぎるから補給線である街を襲ったのかもしれない。

 多大な人材を割いてでもそうしないと、戦争に参加している信徒たちが保たない。


 

 いちいち元気な国だ。


 城を見ても、絡まれた時と同じことを三人は思った。

 アニマの王城はかつてなく派手だった。

 城の屋根の部分は様々な色が塗装され、彩鮮やかにアレンジされている。

 城門は無駄にバカでかいし、庭にはさあ見ろ!と言わんばかり獅子頭の獣人の銅像、玉座の間の扉のきらびやかさ。

 

 目がチカチカする扉を開ければ、さらにまぶしい光景が現れる。

 金銀財宝が飾り付けられたその部屋は、おそらくこの国で最も金を使われた部屋であること請け合いだ。

 しかも、ありえないほど広い。

 ここまで広げ必要があるのか疑問だが、学校の体育館ほどの大きさがあるかもしれない。

 

 それに合わせて、部屋の中には臣下には見えないような獣人も含めて、これまでにない人数がいた。

 文官だろう者が少数、武官だろう者が大多数、そのどちらとも思えない布の少ない派手な服を着た女性がやや多数。

 そして、明らかに雰囲気の違う者が一人。


 その一人は言うなれば、まさに『獣王』と呼ばれるにはふさわしすぎる男であると言えるだろう。

 

 獅子の頭に、立派なたてがみ。

 あのオーディールに負けず劣らずの筋肉のでかさ。

 獰猛な獣がそこに居るかのような、圧倒的な威圧感。

 左腕が欠けてはいるが、その程度では曇ることのない、目に見える強さ。

 さらに、爪や牙を見せびらかすように肉をまるかじりし、周囲に女を侍らせているところなどまさに獣人の、いや、獣の王だ。



 「よく来てくれたな。待っていたぞ、『勇者』」



 『獣王』ライオスは笑いながら、勇者たちを歓迎する。

 

 歓迎といっても、言葉以外は相当手荒い。

 

 ライオスは今にも飛びかからんほどの雰囲気を醸し出している。

 その笑みも、あまりにも獰猛すぎて笑いかけている、というよりも獲物の品定めという方がしっくりくる。

 しかも、若干だが体勢を整えている様子も見えた。


 いや、確実に品定めをしている。

 それにこの後絶対に飛びかかってくる。


 獣人は強者を好む傾向があり、好戦的な者が多いとは言うが、まさかこんなとは…………

 

 まあ考えてみれば、誰よりも獣人の在り方を濃く受け継いだのが『獣王』なのかもしれない。


 「ここに来るまでにお前たちの、というよりそこの灰髪のクソガキの話は聞いてたぞ?挑んでくる輩が全員叩きのめしたとか」


 「あ? 誰がクソガキだ?」


 「コ、コラ!やめなさい!」


 ライオスの物言いにエイルは噛みつく。

 それに対してリベールはたしなめるのだが、彼はライオスが挑発していることが分かっているので睨みつけるのをやめようとしない。

 ライオスはエイルが同類だと分かっていたために、あえて彼を狙ったのである。



 「止めんな。向こうもそれが目的なんだから、別にいいだろう?」


 「ダメに決まってるじゃないですか!」



 怒りながら袖を引っ張る。

 だが、完全にやる気のようだ。

 挑発されたのを返すのと、強者と戦えるというので引っ込む気はないらしい。



 「じゃ、やろうか」


 

 何が、じゃ、なのだろうか?

 いや、もう完全にどうなるのかは分かるのだが、なんでそうなるのか?

 ………理屈なんてないんだろう。


 だが、出合頭にコレはどうかと思う………



 「何不思議そうな顔してんだ?男が戦意をこちらに向けた、それなら応えて戦うのが常識ってもんだろうが?」



 いや、そんな常識知らない。

 いくら何でも話、というか気が早すぎる。

 なんでいきなり戦うことになるんだ?



 ライオスはゆっくりと立ち上がる。

 侍っていた女たちも空気を読んで、慣れた様子で部屋から出ていく。

 もしかしたら、こうして戦うのもいつもの事なのかもしれない。

 いつもこんな風に女を囲い、戦う時にはけさせる。

 自由というか、なんというか…………

 

 戦うのが好きすぎるだろう、と勇者が呆れていると…………


 「それと、お前も何ボサットしてやがる。相棒がこんだけやる気なんだから、お前も構えやがれ」

 

 「え?」


 とんでもない無茶振りがやってきた。


 なんと、勇者にも戦いを強いようとする。

 めんどくさそうな顔をするのだが、となりのエイルはもう臨戦態勢だ。

 暗に、二人まとめてかかってこいと言われたことが気に喰わないらしい。


 「じゅ、『獣王』様?流石にそれは………」


 「あ?俺のやる事に文句でもあるのか?」


 「文句しかありませんが?」


 「文句があるなら拳で黙らせろ!」


 あ、会話が通じない。

 初対面の彼らだが、そのことをすぐに察した。

 どうしようもないのだろうか、と勇者は考える。


 この時点で、女性陣は自分たちは戦闘の戦力にカウントされていないのと、『獣王』が人の話をまともに聞く性格ではないと判断し、何をするのが良いか考える。

 よく見れば、臣下の獣人たちはいつの間にか部屋の端に寄り、こちらを手招きしていて………


 「使徒をぶっ殺して以来、戦うなって押し込められてきたんだ!ちょっとくらい遊んでくれよ!」


 戦う、と書いて遊ぶ、と読んでいる。

 久しぶりに大好物にありつけて大興奮である。

 本当に大丈夫なのか、この王様?


 「おい、お前も構えろ」


 「え?」


 「さっさと構えろ。俺が先ず一人で勝つから、その後にお前が一人で勝て………!」


 相棒も止められない。

 この二人は同じくらいの戦闘狂だ。

 まさか止められない暴走車がもう一つあったとは思いもしなかった。 


 「え、まじで?」


 「マジもマジだ。俺らであのクソたてがみズタボロにしてやるぞ………!」


 いくつか違う種族の血も混じっていると言っていたが、確実にその中に獣人の血が入っている。

 そうでもなければ、自然とこんな戦闘狂が生まれたことになるではないか。



 「仮にも『勇者』ならテメーの力を示しやがれ!俺はつえー奴にしか興味はねぇぞ?」



 前の『獣王』、後ろのエイルで逃げられない。


 自分勝手の塊のような人だ。

 本当にコレで王様が務まるのか、と疑問に思ったのだが、文官らしき人々はさっきから呆れっぱなしである。

 かなり苦労しているらしい。

 

 その時に初めて勇者は気づいた。

 なんというか、距離がさっきよりも離れていないだろうか?



 「ほらほら、いつでも準備万端だ。さっさとやろうぜ!」


 

 あれ?二人、居る?

 気配がしないのだけれども…………


 「あっ!」


 埒が明かないと女二人を頼ろうとしたのだが、なんと二人は臣下たちと共に部屋の隅に移動していた。

 しかも、身を守るための結界を張っているではないか。


 (薄情者…………)


 これでもう戦うしかない。

 もしも戦おうとしなくても、向こうは関係なく攻撃を当ててくるだろう。

 とばっちりだが、やるしかない。


 勇者はいつでも冷静に対応出来るように身構え、エイルはこれまた好戦的な笑みを浮かべている。

 女性陣もそれなりに気を張っているようだ。

 リベールは神聖術の準備をしているし、アレーナは気が気じゃない、といった様子である。


 止めてくれたらいいのに、と一瞬おもったのだが、それを聞き入れる『獣王』ではないし、彼女たちに期待するのも酷だろう。

 まさか『獣王』が使徒よりも厄介とは………



 「俺の名はライオス!アニマの王『獣王』ライオスだ!」



 筋肉が躍動する。

 あり得ないほどに身体が膨れ上がり、その威圧感は倍増したように思えた。

 殺気が立ち込め、『獣王』の周囲が歪んで見えた気がして、






 「いくぞ、野郎共!」



 完璧に予想通りに『獣王』は戦いを挑んで来た。 

 

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