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勇者の冒険 〜勇者として召喚された俺の英雄譚〜  作者: アジペンギン
二章、呪われ王女
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15、人見知りのお茶会

毎日投稿だから今日のノルマは終わり。



 リフセント王国の王城


 魔術師は今、道に迷っていた。



 

 その日はとりあえず与えられた部屋で休み、使徒の元に行くのは二日後ということになったので、城を徘徊していたのだ。

 しかし、意味もなく徘徊していたというわけではない。

 なんとも残念なことに、日課の魔力操作の鍛錬を終えて、玉座までの道中に見かけた図書室にでも行こうとしたら道に迷ってしまったのだ。

 そこらにいる使用人にでも道を尋ねればいいのだが、初対面の人間に話しかけるのがとことん苦手な魔術師はウロウロと辺りをさまよっていた。


 初めて勇者と出会った日も、リベールがいたからいいものの、魔術師と本質的には同類の勇者と粗忽者であるエイルだけだったならもしかしたらついていくという発想自体なかったかもしれない。

 リベールの見えない仕事ぶりに、改めてありがたみを感じつつも、やはり道は見つからない。


 手に持つ杖で床を叩く。

 まだまだ時間はあるからいいのだが、夕方には勇者の部屋に集まって作戦会議も行わなくてはならないのだ。

 このまま迷い続けてそれに遅れでもしたら、エイルにどやされるのは目に見えていた。

 彼に対してこれでもかと苦手意識を詰め込んでいる魔術師にとっては、彼に怒鳴られるなど魂が吹き飛んでしまいかねないと考えていた。

 まあ、完全に大げさなのだが、二人の相性があまりよくないのは事実である。


 (なんで城ってこんなに広いんだろ?ずっと同じところ回ってるよ~………)


 一応目印に魔力で印を壁に描いているのだが、どれだけ歩き回っても魔力の印の場所に戻ってしまうのだ。

 確かに魔術以外はからきしだが、さすがに方向音痴を極めすぎだろう、と自分で呆れている。

 

 今度はどうしようか?


 さっきのところを右に曲がったから今度は左?

 いや、それともまた右に行ってみようか?


 魔術師は魔術以外に関してはからきしである。

 道を覚える、ということはしないし、身体を180度回転させたら右と左が入れ替わるという発想にも至らない。

 とんでもないポンコツ具合だが、これまでの人生すべてをそれに打ち込み続けてきたのだから仕方がない。

 

 それからもしばらく歩いたのだが、目的の場所には着けない。

 そもそも、なぜ彼女は見知らぬ初見の城で、一人で探索に出ようと思ったのだろうか………

 勇者とエイルは無理でも、リベールに付き合ってもらえば特に問題なくたどり着けたはずなのだ。

 今更その発想に至ったからか、頭を抱えて「私のバカ………」と独り言をつぶやいている。


 人と関わってこなかったために、人に頼るという発想が抜けてしまった悲しい結果だ。

 筋金入りすぎる思考が憎らしい、と考えているうちに、いよいよ人気もなくなってきた。

 いったいどこに迷い込んだのか、たくさんいたはずの使用人がまったくいない。

 どことない不気味さに、その小さな心はおびえている。


 引き返せばいいのか?

 いやそれを何度かしたが迷った結果ここに居るわけで………


 

 

 「ねえ」


 「うひゃあ!」



 魔術師は突如かけられた声に驚いて飛び上がる。これまで一度も声をかけられなかったので、いきなりすぎて本当に心臓が止まりそうだった。

 

 恐る恐る振り返ると、そこには驚くほどの美少女がいた。

 見目だけなら、はかなげな美少女だ。

 宝石のような綺麗な金髪に、触れれば折れそうなほどに細い体、そして何より、周りに広がる黒い靄のようなもの。

 

 幻のような光景であった。

 あまりに精神的にまいってしまったために幻覚を見たのかとも思ってしまったが、どうやら違うようである。

 何を言っていいのかわからず、言葉がどうしても出てこない。

 誰に話しかけられても初対面の人間にはうまく話せないのだが、目の前の彼女相手には余計に話すことができなそうだ。

 目の前の光景にいっぱいいっぱいになっていると、


 「とりあえず、お茶しませんか?」


 押されっぱなしで、弱っていた彼女は、断るという選択肢は思い浮かばず、言葉もなくコクコクと頷くことしかできなかった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※



 「なんと、そんなことができるのですか。魔術に関しては嗜む程度ですが、貴女の凄さは分かります!」


 なし崩し的に誘われてお茶会をすることになった。

 おしとやかそうで、上品なのだが、グイグイとこちらを振り回す感じはどことなく聖女を彷彿とさせる。


 彼女はよくしゃべるのだ。

 魔術師のことについても知ろうとするし、その質問の内容に関しても流すでもなく、きちんと聞き入れて興味を示している。

 そして、自分を隠すようなこともしない。

 魔術師の方から質問をすれば快く返答するし、さらにそこから話を広げて、話の内容はいくらでも湧いてくる。


 魔術師は、この時点で彼女に対して心をある程度許していた。

 

 何気ない会話の中にも、伝わることなどいくらでもある。

 先ず、これまで語った話は面白かった。

 単に面白いという意味ではなく、自身の体験に対して、その時のことを事細かに言うのだ。あの時はこうだった、とか、この時は失敗した、とか。

 彼女は隠すようなことをしないし、その時その時の話の場面によって、喜んだり、悲しんだりする。

 魔術師がしてきた修行や、それでできるようになったことを話すと、感情豊かに聞いてくれるのだ。

 しかも、言いたくないことを言わないと深くは詮索しない。

 彼女は人を知ろうとしてるし、自分を知らせようともしている。


 他にも、彼女は人を紹介するとき、その人の良い部分が目立つように説明する。

 人と多く関わり、人が好きでなければこうはならないだろう。

 話を聞いていると、いくらでも人の名前が出てくるのだ。

 きっと彼女は多くの人から愛される人間で、さぞかし充実した人生を送ってきたのだろう。


 だというのに、彼女の住んでいるであろう部屋がこんなにも人気がないのには少し違和感があったのだが、今は特にそのことは関係なさそうだ。


 どれだけ人がいいのだろうか………

 誠実さの塊のような人だ。


 (私とは、本当に大違いだな………)


 思いきり陥る自己嫌悪と、この人は信頼しても大丈夫だろうという確信。

 それに従って、魔術師は自分のことを隠さないことにした。


 「し、失礼しました。これまで、な、名乗ることもせず」

  

 「あ、教えてくださるんですね!ずっと言いたくなさそうでしたので、望むならお互い誰とも知らぬで終わらせるのでもよかったのですが」


 どうやら、彼女にも見抜かれていたようだ。 

 そんなに自分は分かりやすいのだろうか?

 他人のことばかりで、自分のこととなるとおろそかになるのかもしれない。


 「え、えと、私、アレーナ=リール=ハドレズ、と申します。こ、この度は勇者一行として、陛下への謁見を許されました」


 「まあ、そうでしたの!勇者一行のお一人でいらっしゃったのですね!」


 身を乗り出してやや興奮気味で反応する彼女。

 だが、自分と勇者の関係があまりよろしくないことを考えると、少し申し訳ない気分になってしまう。


 「も、申し訳ありません。私としたことがはしたない」


 「い、いえ、私なんかに、あ、謝らないでください!」


 これまでの態度から、魔術だけの自分よりも彼女の方がずっと上品なのだ。彼女がはしたないのだとしたら自分は何なのだろうか、という話になってしまう。

 すぐに彼女はドレスのスカートをつまみ、優雅にお礼をして、名乗りをあげる。


 

 「私、リフセント王国第三王女シャーリー=バベル=サナ=リフセントです。以後、よろしくお願いします」



 (あ、あれ?シャーリー?第三王女?)


 聞き覚えのある名前である。

 そう、ついさっき、どこかで聞いた………


 『呪毒の効果を見せるための実験台として、第三王女、シャーリーがそれを浴びたのだ』 

 

 あ、そうだ。

 呪毒を浴びた王女様ではなかったろうか?



 「えええええーーーーーー!!!」



 

最終的には某長月先生みたいな文章書けるようになりたい。

あの臨場感とか、絶望感とか、それをひっくり返す希望の感じさせ方とかが天才だと思う。

私の文章と比べたらスライム(私)と魔王(某先生)ですね………

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