10、決闘 終
FGOで水着イリヤ当たったあああああ!
FOOOOOOOO!!!
うん、決闘最終なのに文字数前回、前々回に比べて少なくなっちゃった。
なんか、さーせん
響く。
音が、衝撃が、力が反響し、小さな嵐が巻き起こる。
弾かれたエネルギーが『大賢者』の張った、戦闘の衝撃を抑え込むための結界を軋ませた。
一合、二合、三合と斬撃を重ね、その度に爆弾が爆発するようなエネルギーが駆ける。
だが、その均衡もそう長くは続かない。
黒の青年の腹に、まるで殴られたような衝撃が炸裂し、思い切り吹き飛ばされたのだ。
謎の攻撃による驚愕に思考が飛びかけたが、すぐに切り替えて黒の青年は水の魔術が放つ。
黒の青年が多用していた魔術、『水撃槍』だ。
だが、先程までとは威力も、同時に発動した数も段違いだった。
まるで雨のように水の槍が降り注ぎ、それが地に当たるとクレーターができるのだ。
しかも、それだけではない。
手に持つ剣を振り抜くたびに、強力な斬撃だ飛ぶのだ。
その溢れ出すエネルギーの一部を用いて放つ斬撃は、さしもの灰の青年でも回避を選択していた。
もはや一人で千人力の力を軽く凌駕したと言える、一騎当千の力だった。
一方、灰の青年も負けてはいない。
破滅の雨を正面から叩き壊しているのだ。
上から、右から、左から、前から、後ろから来る槍をすべて当たる前に撃ち落としている。
明らかに手が足りるはずがないにも関わらず防ぎきっており、これほど三面六臂の言葉が当てはまる人物もいないだろう。
(なんだ?明らかに不自然だろう?あの体勢からは確実に撃ち落とせない攻撃があるのに一つも届かない………)
魔術の構築は感知できない。
しかし、明らかに超常の力が働いているのだと黒の青年は確信していた。
まるで、後ろにも手があるようだ。
黒の青年は次の行動に移る。
別の方向から仕掛けることにする。
ドッ!
地から鋼鉄の壁がせり上がり、灰の青年を両面から潰しにかかったのだ。第四位階魔術の『鋼鉄壁』を灰の青年の左右に発動し、挟み込む。
厚さ、大きさから考えれば数トンになるその壁だ。
いくら灰の青年の身体能力が高いといっても、数秒は時間を稼げるはずで………
灰の青年はノンストップで通過した。
壁は何かに阻まれた感覚があった。
見えない何かに壁を堰き止められたような………
またも接近戦に持ち込まれる。
今度は謎の攻撃も留意しながら攻撃を捌いていく。
いや、見えないのだが、そういうものがあるということが分かっているだけでも効果はある。
謎の力にも、行使できる許容量があるはずなのだ。
だから、それで近接戦を阻まれないために魔術での攻撃を並行で行う。
剣を弾きながらも、灰の青年の横や背後から攻撃を行い、やはりというべきかそれは見えないナニカに阻まれる。
しかし、もともと分が悪い近接戦で、意識がそっちに持っていかれてしまうためにジリジリと押されていく。
だが、分かったこともある。
本当に微かではあるのだが、謎の力が行使される瞬間、灰の青年とは微妙に異なる魔力が現れるのだ。
そして、阻害のタイミングも若干異なっている。
反応が早いために全方位を同時にカバーしているかのように思われるが、それは違う。
おそらく、同時に二度。
二度までが同時に行使できる上限なのだろう。
いる
確実に二人いるのだ。
魔術で砂を創り出す。
ただの砂ではなく、一度なにかに触れればそれに張り付く効果を付与した砂だ。
魔術での攻撃とともに砂を巻き散らせば、そこには見えない形が現れる。
人型だ。
そこには灰の青年とよく似た背格好の人型が顕現した。
やはり彼の予想通りである。
現れた魔力の質に見覚えがあると思ったのだ。
エルフ体の彼、人族体の彼、その魔力は覚えている。
その魔力が、巧妙に隠されてはいたが、確かに何もないところから出てくるのだ。
「見破られたか………これを見抜くとは、お前はホントにやりやがんなぁ」
「何です、それ?そんな魔術、聞いたことがないんですけど」
「さぁな!なんとなく使えるようになっただけよ!」
おそらくあの進化の結果なのだろう、黒の青年は即座にそう結論付けた。
自身がこの不思議な剣を扱うことができるのと同様に、彼も特殊なナニカを身につけたのだろう、と。
さらに戦闘方法を変える。
このまま魔術による並行では、近接戦で押されていずれ負けてしまう。
こっちは一人、向こうは三人なのだ。
頭の良さ云々以前に処理できる情報の量で勝てる道理はない。
なら、今度は真正面から三人を打ち破ることにする。
手に持つ剣のエネルギーを斬撃にする。
とてつもない波動が流れ、一切を灰燼に帰す衝撃が剣の斬撃の延長に走る。
切り裂く剣は振りぬかれ………
しかし、それを灰の青年は完璧に躱してのけた。
だが、まだだ。
攻防というのは、隙を見せれば入れ替わってしまう。
剣のエネルギーをまだ完璧に扱いきれていない弊害が出た。
エネルギー制御のために、僅かにタイムロスがあるのだ。
ブウオオオオン!
大剣は凄まじい勢いで振り上げられ、黒の青年の顔をカチ割ろうとする。
大剣の振りに遅れて耳を塞ぎたくなるほどの轟音が鳴り、破滅の一撃を叩き込まれる。
しかし、あと一歩、あと数センチのところで剣の強大エネルギーが大剣を緩め、弾いてのける。
一太刀一太刀が互いに必殺の一撃だ。
片や、莫大なエネルギーによる斬撃。
片や、圧倒的な身体能力によるただの破壊の斬撃。
まともに受ければ待ち受けるのは死である。
だが、二人の目に恐れの色はない。
いかに目の前の相手を超えるか、ただそれだけに意識を割いている。
(一対三か……でも、この剣の攻撃に対して避けるのに彼は全力だ。なら、押してそのまま潰す。負け筋は、カウンターに反応しきれなくなることか………)
(あの剣の攻撃はヤベェ。二人が反らして、やっとなんとか避けられてる。だが、お互いに力を使い切れてねぇ。なら、自分の力をより早く使いこなせるようになった方が勝つ………!)
二人の長い、長い戦いは続くのである。
※※※※※※※※※※※※※※
この戦いに、どのような言葉が当てはまるだろうか?
紙一重、薄氷上のダンス、綱渡り…………
とにかく、どちらが勝ち、そしてどちらが負けても不思議ではない攻防だ。
押しては引き、引いては押し、だがお互いに負けることはない。
視線、体勢、力の強弱のフェイントも併せているが、それでも致命打にはならない。
すでに、その攻防も飽きるほど行われた。
しかし、切り崩せない。
お互いがお互い、相手に城塞を思うほどにあと一歩が足りないのだ。
二人の能力は、行使されるごとに洗練していく。
黒の青年はより精密にエネルギーを使えるようになった。
灰の青年はより深く分身を創り出し、その力や剣も再現できるようになった。
強くて、さらに強くなろうとする二人。
追い抜いても引き剥がせず、気がつけば追い抜かれてる。
こういう関係を、なんと言うのであったか………
その戦いは、永遠に続くかのように思われた。
そして、そういう紙一重の攻防とは、ほんの小さなきっかけで崩壊するものなのである。
(あっ、そうだ)
いかにして相手を切り崩そうか考えているうちに、考えついたのだ。
黒の青年が、
魔術において、個人が扱える属性にはその人物の素養が重要になってくる。
炎、水、土、風の四つを基本として、さらに雷、木などの属性が派生していくのだが、派生の属性はともかく、基本の属性ごとの系統は極めるのに適正が必要なのだ。
補足として、その基本属性とも派生属性とも関係ない、光や闇、時空等の特殊属性というものもあるのだが、これはごく一部の人間にしか適正がなく、適正がなければ扱えない。
他にも、誰にでも扱える無属性、というものまである。
例えば、前衛職が魔力を纒って身体能力を強化する『闘気』もこの分類に入る。
これらのことから例をあげると、水にだけ適正がある人物は鍛えれば氷などの派生を扱えるようになる。しかし、風の属性は上手く使えることはできないし、鍛えてもその派生の雷は使うことができない。
だが、適正のない属性を使えないというわけではない。
そう、土と水に適正のある黒の青年が、基本的な風の魔術を扱うことは可能なのである。
これまでにない、未知の攻撃。
土や水とは違って、不可視の暴力なのだ。
魔力を操る。
『大賢者』からは覚える必要はないとされ、風の魔術に関する本は取り上げられたのだが、唯一、簡単な術式であったコレは覚えていたのだ。
第一位階魔術『風弾』
駆け出しの魔術師にも使える、とても簡単な魔術。
だが、コレで十分なのだ。
それは、灰の青年の背後から襲い、与えた衝撃によって体勢を崩さざるを得なかった。
もちろん、その隙を黒の青年は逃さない。
瞬き一つ分の未来、灰の青年は黒の青年の操る剣の光に呑まれたのである。
ちなみにですけど、最後のところ砂で目潰しとかしようとしても半吸血鬼くんは気づいちゃいます。彼はカンが鋭いですからね。
隙つくるための攻撃としては風しかなかったんですよ。
っていう後付設定を執筆中考えました。