小休止 【月夜譚No.23】
頬張った落雁がとても甘くて、ようやっと人心地がついた。コリコリと奥歯で砕いて、その甘みを噛み締める。この落雁と同じように気疲れも溶けてしまえば良いのに、そうはいかないらしい。
彼の仕える主は自由奔放で、部下に仕事を押しつけてはすぐに何処かへ行ってしまう。そう忙しい仕事ではないが、一人では手に余る量だ。しかしそれを彼はやってのけてしまうから、主も安心して押しつけていってしまうのだろう。
日本茶を淹れながら溜息を吐いた彼は、しかしすぐに口元を綻ばせた。
主が最近とても楽しそうなのだ。そんな姿を見ているとどうしても嬉しくなってしまうのだから、我ながら馬鹿だと思う。
どうしようもない主だが、やるべき時にはしっかりやってくれる御方だ。それなりに尊敬もしている。
湯気の立つ茶を啜った彼は、次にやるべき仕事に思いを馳せた。