決して負けない
私の名前は、小百合。短期大学を卒業して金融機関に就職。何度か繰り返す飲み会と言う出会いの中で出会った彼。晋さんともうすぐ幸せな生活が待っていた。そのはずだった。
彼は、穏やかでいつも私の隣で微笑んでいる。そんな人だった。私は、少しわがままで彼に甘えてばかりいた。彼は5つ年上の30歳。大好きだった。
売り手市場。少し前まで氷河期と呼ばれ就職することさえ難しかったのが嘘のよう。好景気でもないのに優秀な学生を取り合う企業。高くなる賃金。圧迫される人件費。
足りない人手は今在るなかで…。
私も彼もどんどん疲弊していった。それこそ狂った歯車のように。
会えない日々が日常となり、その当たり前が降り積もり疲れた心は病んでいく。何時から会っていない?何時から笑っていない?何時から感じていない?
幸せを…
気がつくと誰もいない彼の部屋。途絶えた連絡にやっと気がついたのが昨日。最後のラインは2ヶ月も前だった。
冷たい風。いつの間にか冬になっていた。これから帰って寝て明日も仕事。朝から馴染みのおばあちゃん家に集金して笹山開発へ。でも、涙が止まらない。昼からは次長と融資の打ち合わせもあるのに。
もう、立ち上がれない。心が軋む
倒れるように家に帰り預金残高を確認した。320万。5年でこれだけ。
でも、これだけある。




