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オプション扱いてどういうこと?

 トゥルルルルルルルルル・・・・・・。

 トゥルルルルルルルルル・・・・・・。

 トゥルルルルルルルルル・・・・・・。

 電話が鳴っている。


「電話取って~」


「はい?」


 俺の名前は百瀬匠(ももせたくみ)23歳、一般企業で働く普通のサラリーマンだ。

 今日は日曜日、彼女もおらず暇を持て余していた俺は友達の神賀光(じんがひかる)同じく23歳、の家に遊びに来ていた。

 光には彼女がいるのだが、今日は用事で来られないとのことでこうして一緒に遊ぶことができた。

 とりあえず俺は光の部屋でゲームをして遊んでおり、一方の光はベッドで横になって借りてきたDVDを見ていた。

 これで一緒に遊んでいるかどうかは気にしないでくれ。

 不意に電話が鳴り響きベッドで横になっている光が電話を取ってくれと言ってきた。

 それに対して俺は何かの間違いかと思い聞き返す。

 それはそうだろう、何故なら鳴っている電話はベッドで横になっている光の頭上にあるのだから、手を伸ばせば簡単に取れる距離である。


 トゥルルルルルルルルル・・・・・・。

 トゥルルルルルルルルル・・・・・・。

 トゥルルルルルルルルル・・・・・・。

 その間にも電話は鳴り続けている。


「早く取って~」


「はあ?手を伸ばせば自分で取れるだろ」


「え~、めんどくさい」


「アホかっ!!」


 思わず突っ込む。


「早く、切れちゃうよ」


「自分で取りゃいいだろう」


「え~、早く~」


 あ、これダメなやつだ、こうなると光はテコでも動かない、電話の主のためにも早く取ってあげた方がいいだろう。


「ほらよっ」


 仕方なく俺は光の頭の上にある電話を取り、光に渡した。


「ありがっちょ~う」


 光は俺に礼を言って電話の主と話を始めた。


「もしもし・・・」


 俺は軽く溜め息をついてゲームを再開した。

 それにしても、あーもーホントこいつはどうしてこう我儘なんだろうなあ。

 自己中ではないんだが、こうやって甘えて周りの人間をを振り回す。

 俺だけじゃなく他の友達も軽く迷惑している、だがどうしても憎めないでいた。

 あまりにもアホらしくて思わず笑っちゃう様なのも多いからだ。

 光はモテる、イケメンと言える甘いマスクに185cmある高い身長、それに合わせてこういう性格が幸いして女を引き寄せ離さないのだろう。

 それに対し俺は普通の顔に165cmの高くも低くもない身長、そして大した特技も無く普通の性格。

 常々から神様とやらがいたら文句の一つも言ってやりたいと思っていた。


「では言ってみなさい」


「あん?そりゃ産まれも育ちも違けりゃ選べるものでもないし、言ってもしょうがないのも解っちゃいるけどやっぱりねえ・・・、どうしてこうも不公平なのかなあとは思うわけよ」


「ふむふむ、なるほどなるほど」


「俺だってあんだけ恰好良くて背が高かったら色々と違ったんだろうなあとか、もっといい思いしたのかなあとか・・・」


「ほうほう、それから?」


「それから?そうだなあ・・・、もっと運が良かったらとか・・・」


「って、うおおおおおおおおおおおおい!!誰っ!?」


 気付くと誰かと会話してるし、ビックリして振り返るとそこには光とじいさんが卓袱台に差し向いで座っていた。

 じいさんは白髪のロングヘアにサングラスを掛け、アロハシャツに短パンにビーチサンダルとなかなかにファンキーな姿をしている、これでハゲてたら亀仙〇と見間違えそうなくらいだ。

 っていうか気付くとここは光の部屋ではなく、ただ見える限り白い世界が広がっている所におり、そしてそこにポツンとただ一つの卓袱台があるだけである。

 卓袱台の上にはお茶と茶菓子が置かれており、光はこのじいさんと話をしていたようだ。


「えっと・・・、どちら様でしょうか?」


「わしか?わしゃ神じゃ」


「・・・・・・はい?」


 俺は先ず思った疑問をぶつけてみると自分は神様だと言う素っ頓狂な答えが返ってきた。


「どゆこと?」


 今度は光に聞いてみる。


「神様なんだって」


「簡潔な答えをありがとう・・・、じゃねええええええええ!!」


「なんで神様?てか何ここ?時と精神の部屋?何?まさか今流行りの転生か何か?」


 俺は頭を抱えて悶絶する。


「いったいなんなんなのおおおおおおおおおっ!!」


 そして膝から崩れ、最後にはプラトーンで叫んでしまった。

 ちなみにプラトーンとは昔あった戦場映画で、主人公が最後に膝立ちで両腕を広げて上げ天を仰ぐシーンが有名らしく、その恰好を指して言ったりするらしい。


「何々とうるさい奴じゃのう」


「ある意味至って普通の反応だと思うんですが」


 神様に反論していた。


「こっちの光君なんか直ぐに受け入れてくれたもんじゃがのう」


「そりゃ光だし」


 この一言に尽きる。

 よく言えば素直、悪く言えば天然、ある意味柔軟性があることは確かだ。

 とは言えさっきの電話の件の様に妙な頑固さを発揮することもあるし、長所と短所が入り混じったあの性格はやはり面白くもあるというものだ。


「まあいいや、その神様が何か用ですか?やっぱり今流行りの転生ですか?」


とりあえず俺の長所と短所、瞬間沸騰&瞬間冷却を発揮する。


「まあ流行りかどうかは知らんがそのとおりじゃ、ていうか君も大概面白い性格しとるのお」


 神様はそう言いながら俺の分のお茶を出してくれた。


「あ、ありがとうございます、ずず・・・、うは~」


 俺は出されたお茶に御礼を言って一口啜ると何とも言えない幸福感が身体を包んだ。

 味は緑茶ではあるが只のとは思えない味であり、もう全てを忘れて放心してしまうかの如く放我の極致とでも言おうか、まさしくこの世のお茶とは思えないほどの美味しさであった。


「うは~、なんも言えねえ~」


「なんも言えねえ言いながら言うとるがの」


 神様から適切な突っ込みが入る。


「いやもうそれだけ美味いということですよ」


「そうか、気に入ってもらえたなら良かったがの」


「ホントこの世のお茶とは思えない美味しさですね」


 俺は思ったままを言った。


「そりゃ神の出すお茶じゃからのう、人界と同じなわけがなかろう」


「至福の極みでございます・・・」


 神のお茶をいただいて落ち着いたところで本題に入ろう。


「そう言えば転生という事は俺と光は死んだんですか?」


「いや、死んどらんよ」


「あ、そうなんですか、ではどのような理由で俺と光はここにいるのでしょう」


 転生=死ではない、死なない召喚に近い転生もある。

 それに転生と言っても様々だ、赤ちゃんから生まれ直すのではなく幼年・少年・青年と色々な年代での転生もあれば人ですらなくなることもあるし、さらには生物ですらなくなることもある。

 多次元宇宙における転移というのもあるが、今回は神様も転生と言ってるのでとりあえず転生で間違いはないようだ。


「実はの、この光君を転生させる特典の一つとして君を呼んだんじゃ」


「はい?」


 今なんて言った?特典?しかも光の転生の特典?


「という事は俺はついで?」


「話が早いのう、まあ有体に言うとそうじゃな、ついでと言うか特典じゃからオプションみたいなものじゃな」


「・・・・・・」


 思考停止中。


「ん?どうしたんじゃ?」


「あ、ああ、あああ、ああああ・・・・・」


「ありえねええええええええええええええええええええっっっっっっっっっ!!!!!!!!」


 俺は叫んだ。


「意味不明だよ、特典?オプション?どういう事?そんなの聞いた事ねえよ、なんでついで?こんな理不尽があっていいのか、いいや良くない良いわけがない!こんなの許されねえよ例え神様が許そうとこの俺が許さねえ!!」


「あ・・・、神様いた」


 思わず神様が目の前に居ることも忘れて叫んでしまっていた。

 神様はというと耳の穴を指で塞いでいた。


「本当にうるさいやつじゃのう」


「いやいやいやいや、どういう事ですか神様!説明を求めます!!」


 俺が神様に食って掛かると。


「俺が頼んだんだよ」


 今まで黙っていた光が口を開いた。


「どういう事だよ」


 俺は光の方を見る。


「うん、転生の特典で色々してくれるって言うから、せっかく異世界に行くのに一人じゃつまんないしもったいないから匠を呼んじゃった」


 光はにこやかに言う。


「おまっ、呼んじゃったじゃねえええええ!!いったい何を考えているわけ?人を巻き込むとか酷くね?」


「え~、いいじゃん」


「はあ・・・、いいじゃんておまえねえ、ってか呼ぶなら彼女じゃないの?」


「え?彼女連れていったら向こうの女の子と遊べないじゃん」


「うわっ、酷っ!」


 光は全く悪びれた様子はなく終始笑顔であった。

 段々頭が痛くなってきた気がしたが、その様子に毒気を抜かれてしまった俺は建設的に話を次に進める事にした。


「んっ、んん~、お騒がせしました神様、それで俺にはどんな特典があるのでしょうか?」


 咳払いをして改めて神様に聞いてみる。


「無いぞ」


「は?」


「君は光君のオプションじゃからな、オプションに特典は無いといことじゃ」


「・・・・・・」


 思考停止中。


「ん?どうしたんじゃ?」


「あ、ああ、あああ、ああああ・・・・・」


「アホかああああああああああああああああああああっっっっっっっっっ!!!!!!!!」


 俺は再び叫んだ、心の叫びである。


「転生させると呼ばれてみればオプション扱いだわ、さらにオプションだから特典は無いわ、こんな酷い話は無いだろおおおおおお!!」


「至って普通の事なんじゃがのう」


 しれっと神様は言う。


「却-------っ下!!!!却下!!却下!!却--------っ下だ!!!!」


 俺は三度叫んだ、心の奥からの叫びだ、魂の咆哮である。


「じいさんそれはありえねぇ、意義を申し立てる!」


 思わず手を挙げながら言っていた。


「とうとう神をじいさん呼ばわりしよったわ」


「こんな意味不明な事をする奴はじじいで充分だ」


 俺は精一杯憎たらしい顔をして神様を見てやった。


「ほほうそうかそうか、ならばしょうがないのうそれでは一つだけ特典を付けてやるとしようか」


 神様は俺を見てニヤニヤとしている。


「え、本当に?流石!神様!太っ腹!!やったね何にしようかな、あれがいいかこれがいいか・・・」


 特典が付くと聞かされると俺は現金にもあれこれ考え始めてしまっていた。


「まあよい、それじゃそろそろ向こうに送るとしようかの、うるさいし」


 へ、送る?送ると言ったか?


「あの神様、俺はまだ特典のリクエストをしていませんが」


 神様を見ると何故か半透明になっていた。


「特典はもう付けたぞい、それじゃの新しい生活頑張るんじゃぞい」


「ちょっ、何それ意味不明だってばよ、どうなってん」


 不意に視界が変わる青空に大草原、遠くには雪を被った山脈が見えた。


「のおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっっっ!!!!!!」


 そして俺の叫びは新世界の大草原に消えていったのだった。

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