表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情報屋さんは駆け回る  作者: 仮面色
第1章 ニューゲーム
7/25

06 情報屋さんと魔法

毎日更新は無理でした……すみません……!

 さて、ひとまず情報屋っぽいプレイができて満足したところで、次へと進まなければならない。新たな情報も何か仕入れたいところだが、やはり水馬の討伐に向けての準備が必要だ。


 もし討伐者の名前が公表されるシステムだったら、情報を売るしかないが……違う場合はできれば自分の手で倒せるなら倒したい。討伐すれば莫大な経験値がもらえそうだし。この先何をやるにしても、強くなっておいて損はないだろう。



「その為に必要な……攻撃手段なんだが……」



 その問題に再び戻ってくる。確認した限りではおそらく水馬は物理攻撃を受付なさそうだった。と、なると魔法攻撃しかないんだが……現状魔法攻撃を使うには魔法玉しかない。



「あるいはライトニングダガーの追加ダメージだな」



 これだけで討伐しようとするのは少々頼りない。ダメージが微々たるものだと、間違いなく長期戦になる。


 俺の戦闘スタイルは速度特化。防御面に関しては回避に徹するのが基本だ。時間をかければかけるほど、被弾しやすくなって危険だ。


 ……やはり短期決戦に持ち込む為の、新しい手札が必要だ。ボスモンスターが容易く倒せるはずもないが、それでも時間短縮の努力はしておかないと。



「しかし魔法……魔法……魔法ねぇ」



 魔法を修得するにはどうしたらいいのか。正直手がかりは無い。……仕方ない、ここは地道な聞き込みからだな。




◆◆◆




「そういうことなら図書館で聞けばいいんじゃないか?」

「そうですか、ありがとうございます」



 思ったより速く情報が集まった。住民に聞いたところ、わからない事柄に関しては、図書館で調べることがあるらしい。図書館があるのは知ってたが、ここで役に立つとは思わなかった。


 早速、図書館へと急ぎ足で向かう。位置としては街の東の端に存在する。



「……思ってたのとなんか違うな」



 もっと三階建てくらいの大きな建物を漠然と予想していた。しかし実際は平屋の建物だ。全体的に平べったい造りで、そこまで大きくはなかった。


 中に入ると、そこはホールのような造りだった。入ってすぐの場所が大きな一つの部屋となっており、壁一面に天井まで届く本棚がずらりと並んでいる。棚の数と本の並びから大まかに数えると…………蔵書はだいたい五万冊くらいだろうか。


 部屋の中央部分には机と椅子がいくつも設置されている。机で静かに本を読み耽る人もいれぱ、片手間にちょこちょこ書き物しながら読んでる人もいる。


 入って正面に受付らしきカウンターがある。若い女性が座っていたので、声をかけた。



「すみません」

「はい、いらっしゃいませ」

「初めてなんですが……」

「わかりました。では当館の利用方法について説明させて頂きます」

「当館の本はどなたでも閲覧自由となっております。読まれる際は、机をお使い下さい。また、本は全て図書館の外に持ち出すことは禁止されております」



 持ち出し禁止か。なかなか厳しいな。おそらくメモをとっている人がいるのも、記録を持ち帰る為だろう。



「持ち出した場合はどうなるんですか?」

「当館の本には全て特殊な処理がしてあり、館の外に出すと、

本から大きな音が鳴り続ける仕組みとなっております。その音に反応して警備隊が駆けつけます」



 万引き防止のセンサーと似てるな。だが、魔法的な仕掛けがしてあるなら、こっちは誤魔化すのは難しそうだ。



「わかりました。では、魔法に関する本はどちらに?」

「それでしたら、向かって左の奥の棚にあります」

「ありがとうございます!」

「どうぞごゆっくり」



 感じのいい受付だった。本当にNPCであることを忘れそうになるくらいだ。……まさかプレイヤーじゃないよな?  ま、まぁそれはさておき、魔法の本を調べるとしよう。


 言われた通り奥まで行き、棚を確認する。本の大きさや厚さ、色など外見はどれもバラバラで様々な本が並んでいた。一冊ずつ題名を確かめていく。



「あったあった、多分これだろう」



 棚の途中にあったのは『初級火魔法』とかかれた薄い本だった。隣には同じように『初級水魔法』『初級風魔法』『初級土魔法』などの題名の本が何冊か並んでいる。これを読めばスキル修得の手がかりになるはず。


 初級の本をまとめて取り出すと、机まで運ぶ。机に積み上げた本から一冊取り、読み始めた。そんなに厚い本じゃないし、読み終えるのに時間はかからないだろう。




◆◆◆




「ふう……このページで最後か」



 火属性の本を一通りなんとか読み終えた。魔法の発動の仕組みなんかを図解した本でなかなか解りやすかった。しかし、スキル修得の手がかりにはならなそうだが……? 不思議に思っていたその時、頭の中に声が響いた。



『スキル【火魔法】を修得しました!』



 なるほど、てっきり修得の方法について書いてあると思っていたが、この本を読むこと自体が修得方法だった訳だ。


 メニュー画面からステータスを確認する。アーツの中に新しく『ファイアボール』が追加されていた。


 同様にして、他の属性の本も読破していく。試しに高速でパラパラめくってみたり、本の終盤部分だけ読んでみたが何も起こらなかった。全ページをきちんと読んだかどうかで、修得の判定をしているのだろう。VRでは脳波を計測している訳だし、知識内容が頭に入ったかどうかの判定も、不可能じゃないだろう。


 結果、基本五属性初級魔法を一通り修得できた。水馬に対抗するには、【雷魔法】があれば良かったんだろうが、これもついでだ。


 ただ、これで安心かといえば、それはそうでもない。『サンダーボール』程度の威力だったら、魔法玉を使うのとあんまり差はないだろう。なぜなら俺はステータスの中で、知力を全く上げてないからだ。知力が低いから、MPもほとんど無いし。つまり、威力も回数も足りてない。



「一歩一歩、必要なものを用意していってるつもりだったが……ペースを少し上げないといかんかもな」



 現状を一回整理しよう。


 水馬にもう一度挑みたい。

 水馬には雷魔法がよく効くと思われる。

 俺は魔法を使う手段が魔法玉しかない。

 だから魔法を修得しに来た。


 ここまでの流れはよし。問題はペースが遅いことだ。


 こうしてる間にも、誰かがグランドベアを倒す為の準備を進めているだろう。倒されてしまえば新たな街へのルートが開けるから、みんなそっちへ向かう。そうしたらそっちの方が話題になるし、何より俺もいち早く新たな街へ行って情報を収集しなければ。その為にも、早く水馬を倒さないと。


 とはいえ、攻撃手段が乏しいのも事実……。どうする……? 【雷魔法】を鍛えて新たなアーツを手に入れる策もある。だが、それには結構スキルを使わないといけないし、時間もかかる。現に最初から持ってる【短剣】も『スラッシュ』以外のアーツが手に入っていない。何か条件があるのか……。


 必死に考える。現状で何かできることはないか。見落としていることはないか。



「あ……そういえば」



 そうだ、一つ思い出した。すっかり忘れていたが、まだ残っていた。強力な魔法が使えるかもしれない可能性が。



「いらっしゃいませー」

「こんにちは、リアさん」



 俺は雑貨屋を訪ねていた。前回魔法玉を手に入れたのもここだし、魔法玉にはランクの高い物があったはず。それを使えば今よりダメージを与えられると思ったからだ。



「今日はどうされました?」

「えっと、魔法玉よりも強力な魔法が使えるアイテムは無いか、と思いまして……」



 これで更に威力の高い魔法玉が手に入るはず。それとポーションの類いを補充したら、水馬にリベンジといこうじゃないか。



「できるだけ威力の高いものを、お求めなんですか?」

「そう……ですね」

「値段の方が、かなりお高くなってしまいますが……」

「いくらかかっても構いません!」



 いくらかかってもいい、というのは正直見栄を張った。手持ちの金は大してない。だが一応【割引】スキルもあるし、足りない分は魔法石を集めて売ろうかと思ってる。


 しかし、会話が思いがけない方向に進んでいった。



「でしたら……他のお店をご紹介しましょうか?」

「えー!?」



 急にそんなこと言われた。バカな……何がいけなかった? 好感度が下がる真似はしてないはずだ。なのに、こんな追い返されるような対応されるとは……!?



「あっ……ち、違いますよ? 別に追い払おうとしてる訳じゃないです」



 密かに動揺していると、リアさんが慌ててフォローしてきた。どうやら顔に出てしまったらしい。



「実はですね、私のおばあちゃんが薬屋をやってるんです」

「おばあちゃん?」

「はい。おばあちゃんは薬師として色々研究してますので、多分必要なアイテムがあるんじゃないかと思います」



 魔法玉もおばあちゃんが作ってるんですよ、とリアさんは締めくくった。


 ふむ……。魔法玉で済ませるつもりだったが、より強力なアイテムが手に入る可能性があるなら、そちらを訪ねてみようか。



「そういうことなら、ぜひ紹介してください!」

「ふふっ。わかりました。すぐ準備しますね」



 カウンターの奥に引っ込んだあと、数分で戻ってきた。そして筒状に丸めた紙を手渡される。



『【リアの紹介状】を入手しました!』



「これを見せれば、おばあちゃんも話を聞いてくれると思いますよ」

「見せないとどうなるんですか……?」

「……おばあちゃんはちょっと気難しいところがありまして」



 頭の中に、黒いローブを着た老婆が大鍋をかき混ぜるシーンが浮かぶ。どうやら偏屈な人物らしい。


 その後、街の地図を見ながら、薬屋の正確な場所を教えてもらった。きちんと礼を言ってから、リアさんと別れる。そして早速薬屋に向けて歩きだした。




◆◆◆




「やっとついた……」



 地図で教えてもらったものの、目的地は非常にわかりづらい場所だった。裏路地を何度も曲がってたどり着いたので、方向感覚が狂いそうだ。街中なのにダンジョンをさまよっているかのようだった。


 到着した薬屋はかなり小さな建物だった。立地は周囲の建物に遮られて日光がわずかしか届かず、薄暗い。寂れた感じの一軒家で看板もない。無人の民家だと言われても納得しそうだ。


 おそるおそる扉に手をかけ、ゆっくりと開く。軋む音と共に、店内にうっすら光が射し込んだ。元々が日陰なのであんまり変わらないが。


 中に入って見回す。暗くて非常に見えにくいが、辛うじて近距離なら見える。入って左右の両側にある棚には、埃を被った壺や箱がびっしり並べられている。



「こんにちは……?」



 見たところ無人というか、人の気配が感じられない気がする。おかしいな……地図の場所はここで合ってるはずだが?



「何の用だい」

「うおぉぉ!?」



 突然耳元でしわがれた声がした。反射的に声から離れるように後退りしてしまった。


 薄暗い中目を凝らしてよく見ると、そこには一人の老人が立っていた。黒いローブを着てフードを被ったおばあさんだ。いや、見た目はそんなに老けてない。せいぜいおばさんと言ったところだろうか。


 しかし、びっくりして心臓が止まるかと思った。この俺に気配を感じさせず、至近距離まで近づくとは……只者ではなさそうだ。



「で、あんた誰だい」

「えっと、アイテムを探してここまで来……」

「うちは初対面の相手には売らないんだよ、帰んな」



 瞬殺だった。最後まで言い終わることもなく、追い返されそうになっていた。気難しいとの評判は間違いなさそうだ。


 おばあさんはカウンターの奥に戻ろうとしていた。どういう対応されるか確かめたかったので、そのまま話しかけたがやはりダメそうだな。



「待って下さい! これを見て欲しいんです!」

「あん?」



 用意していた紹介状を見せることにした。最初怪訝な顔をしていたが、無視する気はなさそうだ。紹介状を渡すと、広げてじっくり目を通している。



「ふふふ……」

「……?」



 読み始めてから数分後、おばあさんはクスクスと笑い出した。いったい紹介状に何を書いたんだ、リアさん。ややあって、おばあさんは顔を上げてこちらを見た。俺を頭から足先までジロジロと見回している。



「……まぁ、そういうことなら話を聞こうかね」

「!! ありがとうございます、おばあさん!」

「あたしの名前はリサーナだよ。次からそう呼びな」



 なんだかよくわからないうちに、認められたらしい。この機会を逃す訳にはいかない。俺はゆっくりと事情を説明し始めた。



「なるほど……威力の高いのが欲しいのかい」

「はい、ぜひ!」



 リサーナさんは煙管を吹かしながら、俺の話を聞いていた。



「一応あるにはあるけどね……」

「それを見せ……!」

「ダメだね」

「えー!?」



 またしても最後まで言い終わる前に、即答された。しかし、どういうことだろう? 紹介状の効果があったはずでは?



「リアの頼みだから話は聞いたけどね、まだ売るとは言ってないよ」

「そんな……」



 売ってもらえないとなると、この後どうすればいいのか。悩み始めたが、まだ続きがあった。



「どうしてもって言うなら、いくつか条件があるけどね」



 そう言われた瞬間だった。目の前に、メニュー画面が勝手に展開されていた。



『シークレットクエスト:【リサーナの試験】が発生しました。受けますか?』



 これは……! 名前通り、隠れクエストが発生したのか。チャンスかもしれない。こういう珍しいクエストは、貴重な装備やアイテムが手に入ることが多い。選択はもちろん受けるに決まっている。早速メニューから『はい』を選択した。



「そうかい。なら条件を教えるよ」

「お願いします!」



 なんだか予想外の展開だが、悪い方には転んでいない。このままいけるところまで突っ走るしかない。



「あんたが必要なのは、これだろう」



 カウンターの上に出されたのは、妙な物体だった。手に収まる程度の筒状の物体だ。いや片側の先端が尖っているから、どちらかといえば、『杭』に近い形をしている。



「こいつは魔法玉を改良したものでね、魔法弾(まほうだん)という」



 カウンターに乗せたまま、じっくり眺める。全体が真っ赤で先端以外には見たことの無い妙な文字がびっしり刻まれている。



「魔法玉と同じで、相手に向かって投げて使う。魔法玉よりも威力はあるんだが、その分取り扱いが難しくてね」

「取り扱い……?」

「下手な奴が投げると、発動した魔法に自分自身が巻き込まれてしまうのさ」



 なるほど、手榴弾みたいなものか。魔法玉も似ているが威力からして巻き込まれるほどではなかった。



「だから、実力のない奴に売る訳にはいかない。少なくとも【投擲】スキルぐらいは持ってる奴じゃないとね」



 条件を告げられた俺は、すごすごと薬局を後にした。いや、正確には追い出されたと言うべきかもしれないが。【投擲】を持ってないと分かると、言い訳する間もなく外に出された。


 ともかく、このままではアイテムを売ってもらえない。クエスト内容を確認するが、『【投擲】の修得』と書かれているだけだ。


 さて、面倒なことになった……。魔法スキルは図書館で本を読めば基本は修得できたが、それ以外のスキルとなるとな……。


 例えば【潜伏】や【消音】なんかは自身の行動によって修得できた。スキルというのは基本そういうものだろう。だが【投擲】は未だに修得できてない。何回か戦闘で魔法玉を投げてるにも拘わらず、だ。だから投擲がスキルとして存在するなんて思ってなかった。しかし、実際に存在するとなると……。


 いや待てよ? 確か以前聞き込みした時に色々街の情報を手に入れたが、その中に訓練所の情報があったな。その時は情報を集めるだけ集めてさらっと聞き流していたが、もしかしたら関係あるかもしれない。ちょっと訪ねてみようか。




◆◆◆




 訓練所は街の端、図書館と逆側に存在していた。中に入ると、鎧を着た兵士らしき人達が大勢うろついている。そして奥の方にポツンと受付が存在している。


 正直、話を聞いて回りたい……! 街の人達とは違った話が聞けそうでワクワクする。だが、今は一旦我慢だ。優先するべき事を間違えてはならない。早速受付嬢に向かって話しかけた。



「すみません」

「ようこそ訓練所へ!」

「こちらの施設について教えてもらえますか?」

「はい。こちらでは、戦闘スキルに関する講習を受けることができます」



 詳しく話を聞いてみると、長剣や槍、斧などの使い方を教わってスキルを修得できるらしい。講習料や時間はかかるものの、修得は間違いなくできるとか。


 ……なんか魔法に比べて、有料なのは引っかかるな。武器スキルは魔法よりも修得しやすい分、費用がかかるってことだろうか。まぁ、普通に生活してても魔法なんて手に入らないしな。



「こちらが講習項目になります」

「…………おっ、あったあった」



 講習項目のリストを見せてもらい、その中から目当ての【投擲】を発見した。おそらくあるとは思っていたが、ちゃんと項目にあって良かった。



「これをお願いします」

「……はい、承りました。それでは奥の方へお進み下さい」



 講習料を支払ってから奥の通路へ向かって進む。一回の講習料が千Gと比較的安めだったのが救いだな。


 通路を通った先には扉が待ち構えていた。真ん中に大きく投擲と書かれている。軽く押して開けると、そこは非常に細長い部屋だった。横幅は三メートル程度だが奥へと長く、おそらく二十メートルはあるんじゃなかろうか。


 そしてすぐ目の前に一人の男性が仁王立ちしていた。全身は鎧姿で、身長は二メートル近い大男だ。そして俺を見ると口を

開いた。



「よく来たな! 俺がこの講習を担当させてもらう! 俺のことは教官と呼ぶといい!」



 見た目もでかけりゃ、声もでかい。まさしく豪快と言った感じだった。



「では、早速講習を始めよう!」



 そのまますぐに講習が始まった。細長い部屋には的の代わりに等身大のマネキンのような人形が設置してあり、そこに向かって練習用のボールを投げるというものだった。一定以上の数のボールを当てることができれば講習は終了となるらしい。


 俺はひたすらボールを投げ始めた。最初の方はなかなか飛距離が出ず、魔法玉を投げた時と同じで山なりにしか投げられなかった。が、その度に教官から「もう少し上に投げろ」とか「まっすぐ狙え」とか細かい指導が入ってきた。


 試しに指導を無視して同じように投げてみたが、特に怒られるようなことはなかった。あくまでも命中さえできれば問題ないらしい。


 しばらく投げ続けたところで変化が起きた。軽く投げたはずなのに、感覚より勢いよく飛んだような気がした。と同時にお馴染みの音声が響く。



『スキル【投擲】を入手しました!』



 どうやらスキルを入手したことで、補正がつくようになったらしい。



「よーし、合格だ!」



 それに反応してか合格のお墨付きを頂く。考えてみれば、投擲って普通に役に立つっていうか、持ってて損はないスキルだよな。水馬と戦った時も、我ながら投球の遅さにもどかしく感じたし。


 何はともあれ、これで条件は満たしたことだし、早速薬局へと向かうとしよう。一応教官に礼を言ってから、訓練所を後にした。…………そういえば教官の名前って聞きそびれたな。今度聞こう。




◆◆◆




「ふん、まぁ少しはマシになったようだね」

「は、はぁ……」



 再びリサーナさんの薬局を訪ね、話しかけた際の第一声がこれだ。どう反応すればいいのか、リアクションに困る。こう言っちゃなんだが、とてもリアさんの肉親とは思えない性格の悪さだ。気を取り直して、話を続ける。



「と、とにかく、これで約束通り魔法弾を売って……」

「ダメだね」

「えー!?」



 またこのパターンか。何回同じことさせる気だ、この人。



「正確には、売るのは無理なんだよ」

「それはいったい……!?」



 なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。今までとは別の意味で。



「実は材料が足りなくてね。この前見せたあれも、ただの見本なのさ」

「つまり材料を集めてこい、と……?」

「察しがいいじゃないか。話が早くて助かるよ」



 リサーナさんは低い声で笑っていた。今度はいわゆるお使い系のクエストか。



「足りない材料というのは……?」

「雷の魔法石とフォールラビットの角を五十個ずつさね」



 ここで魔法石が出てくるか……。角はまだしも、魔法石は集めるのに骨が折れるんだよな。まあライトニングダガーがあるから比較的速く集められるし、何とかなるか。それにしても五十個とはなかなかの数だな……。魔法石は多少溜め込んでいたから早いが、角は全部売り払ったからストックが全くない。


 一瞬弱気な考えが頭をよぎるが、首を振って振り払う。落ち着け、ゲームってのは基本コツコツ地道な作業が基本じゃないか。こんなところでくじけてどうする。



「わかりました! すぐに集めてきます!」



 気持ちを切り替え、意気揚々と店を出た。冷静に考えれば、材料が無いから作れないというのは、逆に言えば、材料を持ってきたらすぐ作れるってことだろう。つまり目的達成するのに、後一歩のところまで来ている。


 やる気に満ち溢れた状態で、曲がりくねった裏路地をくぐり抜けて大通りへと戻った。そのまま大森林まで一直線に向かう。


 しかしその時、急に他プレイヤーからメッセージが入ってきた。

二日に一度の投稿を目指します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ