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情報屋さんは駆け回る  作者: 仮面色
第1章 ニューゲーム
5/25

04 情報屋さんと装備品

今朝みたら日間ランキング50位に入ってました……あわわわわ

 武器はいいとして、他の装備も揃える必要がある。という訳で、今日はログインしてすぐ、装飾屋と靴屋に寄って買い物してきた。


 と言っても、必要な物を最低限買っただけだ。特に面白いことは何もなかったので、その様子は省略する。具体的に何を買ったかというと、この三つだ。



─────

バウンドブーツ


弾力性のある革でできたブーツ。跳躍時、通常よりわずかに高く跳べる。

・速度上昇


─────

宵闇の帽子


黒く染められた帽子。目立たないシンプルなデザイン。

・器用上昇


─────

疾風のマフラー


風の魔力が込められたマフラー。

・速度上昇


─────



 宵闇の帽子は野球帽のようにつばが長くて黒い帽子だ。これは単純に正体をわかりにくくする為だ。効果も気休め程度のものだが、そこは仕方ない。雰囲気づくりというか、怪しい感じの方が情報屋っぽくていいからだ。いかにも怪しい感じの方が客もむしろ信用してくれるだろう。


 バウンドブーツと疾風のマフラーは名前が気に入ったのもあるが、速度上昇が大きい。徹底的にスピードを上げるスタイルでいくつもりの俺にはかなり嬉しい。欲をいえば、速度が上がる帽子もあれば良かったのだがこれは仕方ない。


 さて、最後は防具だ。具体的には胴体を保護するタイプのもの。戦士なら革の胸当てとか、あるいは全身鎧なのもいいかもしれない。


 しかし、俺は情報屋だ。ミステリアスな服装とかで雰囲気を作っておく義務がある。これはプライドの問題なんだ。


 という訳でやって来ました、防具屋。店内に入るとワイルド武具店と似たような内装だった。もちろん並んでる品物は鎧やコートで全然違うものだが。


 カウンターに座ってる人もがっしりした体格でもさもさしたひげのおじさんだった。装飾屋も靴屋も若いお姉さんがカウンターに立ってたので、まさかこの街の商店は全部女性が店番やってるのか、とか入る前に思ったがどうやら杞憂だったようだ。


 早速棚を端から順に見て回る。親切なことに、品物ごとにきちんと名称や効果の説明書が付けられているので、安心して買い物が可能だ。皆が皆、鑑定のスキルを取得するとは限らないし、その辺の配慮だろうな。



「お、おお……これは!」



─────

ミッドナイトコート


暗闇をモチーフにしたコート

・夜の時間帯にモンスターとの遭遇率減少

・速度上昇

・防御上昇


─────



 しばらく見ていると、まさにぴったりの一品を見つけた。口元から膝まですっぽり覆うロングコート。つやが全くなく、光を反射しない黒一色のシンプルなデザイン。これはいい。ぜひ使いたい。正体を隠せるのもいいし、速度上昇も入ってて完璧だ。ちょっと値が張るけど、それに目をつぶってもいいくらいの素晴らしさだ。モンスターと出会いにくいというのも使い方次第だろうな。


 早速購入すると、防具屋を後にする。防具屋を出て、ミッドナイトコートを装備しようとメニューを開く。そこで思い出した。そういえばすっかり忘れていたが、武器を作ってもらうようにお願いしていたんだった。


 ゲーム内時間での一日で出来上がると言われていたが、既に三日は経っている。早いとこ受け取りに行かねば。



「こんにちはー」



 なので早速、ワイルド武具店を訪ねた。ドアを開けるとカランカランと高い音が鳴り響く。



「いらっしゃいませ! お待ちしてました!」



 まっすぐカウンターに向かい声をかけると、アイロさんが笑顔で返事をしてくれた。



「なかなか来られないので、心配してたんですよ……」

「すみません……」

「それで用意した武器なんですが……こちらです!」



 カウンターの下から包みが取り出される。包みを広げてカウンターに載せられたのは、一振りのナイフだった。刃渡りが三十センチほどでやや長めだ。柄は真っ黒だが、刀身そのものが黄色で薄く光っており、蛍光色のようだった。



「おお……これは、すごいな」

「名付けて【ライトニングダガー】です! 頂いた雷の魔法石がかなり品質の良いものだったので、いいものができたと思います」



 持ち上げて窓からの光にかざす。すりガラスのように刃がうっすらと透けており、切れ味の良さを予感させる。これは性能が期待できそうだ。『鑑定』をかけてみる。



────

ライトニングダガー


雷の魔法石を素材に混ぜ込んだダガー。かすかに帯電している。

・魔法ダメージ追加

・低確率で状態異常:マヒが発生


────



 いい意味で期待を裏切る一品だった。追加効果がついてるのは序盤の武器としては破格の性能だろう。



「素晴らしいものですね……おいくらですか?」

「1万Gのところを、ちょっとおまけして9000Gにしておきますね」



 おまけ……あっ、【割引】のおかげか。


 腰のホルスターにナイフを差し込み、感触を確かめる。これなら素早く抜けそうだ。早く威力を試したい。



「ありがとうございます。大事に使いますね」

「はいっ。また魔法石が手に入りましたら、教えてくださいね」



 アイロさんは両の拳を握って気合い十分という感じだった。また何か見つけたら頼むとしよう。




◆◆◆



 これで一通り装備品は揃えた。いや、正確には左手の装備が空いている。弓兵だったら矢筒を装備するし、戦士だったら盾を装備するところだろう。ただ、個人的には左手は空けておいた方がいい気がしていた。俺は速度に特化したタイプだし、速度が落ちるから重たい盾は必要ない。いざという時アイテムを素早く取り出すには空けておいた方がいいと思う。


 そうと決まれば、後は消耗品を補充するだけだな。俺は道具屋に向かってのんびり歩いていた。


 別に意味もなくのんびりしている訳じゃない。これもちゃんと理由がある。なぜならここは街中、プレイヤーやNPCが大勢通り過ぎる場所だ。あちこちで会話が繰り広げられている。


 俺は生まれつき耳がよく、音を聞き分けるのが得意だ。特技の「聞き分け」を活かして、会話をこっそり聞いているのだ。盗み聞きというと人聞きが悪いが、これも大事な情報収集の一環だ。



「あの熊、強過ぎだろ……」

「街道の封鎖って終わらないのか?」

「なんか魔法石ってやつドロップしたんだけど」



 ガヤガヤと様々な情報が断片的に耳に入ってくる。ふむ、どうやら熊、グランドベアがプレイヤーに遭遇したらしいな。しかし、あの様子からすると、まだ倒されてはいないようだ。


 街の様子についても聞こえてくる。地理の説明をすると、このシラハナの南側にあるのが正門、そこから出るとすぐ目の前に大森林が広がっている。一方反対側の北側には何があるのかというと、これもまた門がある。そして門を開けた先には街道があるのだが、これが封鎖中となっており、通ることができないのだ。門のそばにいる衛兵に聞いてみても、事情は説明できないの一点張りだった。


 現状、探索できる範囲は大森林しかない為、掲示板上の噂では、次のエリアに進む為のヒントはボスモンスターが持ってるんだろう、と推測されている。



「おそらく皆、グランドベアの攻略に夢中だろうし……その隙に何とかしたいところだな……ん?」



 すれ違う人達をキョロキョロ見回しながら歩いていた、その時だった。ふと、建物の間にある細い道が目に入った。


 そういえば大通りは一通り歩き回ったけど、細い道は後回しにしたままだったな……。何があるかわからないし、一応見て回るか?




◆◆◆




「まさか本当に何かあるとは……」



 正直、期待はしてなかった。裏路地に入ると長い一本道が続いており、人影も全く見えなかったからだ。しかも一本道の割にはまっすぐではなく曲がりくねっており、走ることもできず若干イライラさせられていた。途中で戻ろうかと思ったほどだ。しかし、ある角を曲がったところで、驚きに足を止めた。すぐ先に人が座り込んでいたからだ。


 その人物は頭から足まで、ミイラのように全身が包帯でぐるぐる巻きになっており、目元しか見えなかった。石畳にシートを広げてその上に座っている。そして、足元にいくつか道具を並べて、じっとしていた。まさしく絵に描いたような「怪しい露店商」だった。



「こんにちは……?」



 露店商の正面まで行き声をかけると、ゆっくりと顔を上げた。しかし、路地が薄暗いのもあって、目もよく見えなかった。



「いらっしゃイ……ゆっくり見て行っておくレ……」



 ……何やら発音のおかしい甲高い声で返事されて、一瞬びくっとした。正直怖いが、それよりも好奇心が勝る。何より情報屋の勘が囁いている。これはぜひ見ておくべきだと。



「どれどれ……」



 並べられている道具は、剣、杖、盾、籠手と武器系がほとんどだった。どれも紫色で禍々しいデザインで、そしてどれもやたらに安い。武器屋で売ってるのより半額以下だ。注意書きがあったので、手に取り読んでみた。



─────

カースドブレード


強大な力を秘めた剣。装備すれば圧倒的な攻撃力を得られる。


─────



 ものすごく胡散臭い。本当にいいものだとして、なぜこんな路地でこんな値段で売ってるのか。怪しかったので、そのまま鑑定をかけてみる。



─────

カースドブレード


強大な力を秘めた剣。装備すれば圧倒的な威力を得られる。

・腕力二倍

・耐久を最低値で固定


─────



 ……これだよ。攻撃力が圧倒的ってのは嘘じゃない。だが耐久が最低値で固定って、防御力がほとんどゼロに等しいじゃないか。こんなもの装備して敵に突っ込むとか自殺行為だ。


 まさしく呪いの武器と言えるような代物ばかりだった。そういえば、弓が見当たらない。



「弓は置いてないのか?」



 一応敬語を使おうかと思っていたが、やっぱりやめた。怪し過ぎてそんな気になれない。



「弓は売れてしまいましタ……」

「入荷の予定は?」

「今のところ未定でス……」



 ふーむ。どうやら置いてないようだ。考えられるケースは二つ。武器は全て一点物でもう手に入らないケースと、全部売れてしまったら新しく入荷するケースだ。おっと、条件を満たすと入荷するケースも考えられるな。


 もし手に入らないとなると、ある意味レア物となる。どれも値段安いし、せっかくだから買っておこうかな? レアとか聞くと、一見おかしな物でもついつい心ひかれてしまう、

それに、場合によっては、誰かに売り付けたりできるかもしれない。使わなくてがらくたになってしまう可能性も高いけど。



「よし、全部売ってくれ」

「ヒヒ……毎度あリ……」



 こうして呪いの武器を一通り買い占めた。これはこれでいい買い物したな。目的は達成したし、さっさと戻るとしようか。



「………………あれ?」



 来た道を引き返す。その途中でふと気になって振り返った。すると、怪しい露店商はそこにはもういなかった。綺麗さっぱり消えて影も形もなくなっていた。



「しまった……撮影でもしておけば良かったな……」




◆◆◆




 賑わう大通りに戻って来た。あちらこちらでプレイヤー、またはNPC達が話をしていて楽しそうだ。たった今路地から出て来た俺のことなど、誰も見向きもしない。


 さっき買い占めた武器を一通り確認する。とりあえずまとめて買ったので、カースドブレード以外は鑑定していなかった。



─────

カースドシールド


強大な力を秘めた盾。装備すれば圧倒的な防御を得られる。

・耐久二倍

・腕力を最低値で固定


─────

カースドロッド


強大な力を秘めた杖。装備すれば圧倒的な魔力を得られる。

・知力二倍

・耐久を最低値で固定


─────

カースドランス


強大な力を秘めた槍。装備すれば圧倒的な威力を得られる。

・腕力二倍

・速度を最低値で固定


─────



 どれも似たような構成だな。メリットはあるけれど、それを上回るデメリットがある、と。今の俺には使い道はあんまりなさそうだが……。



「おっ!? これは……!」



─────

カースドブーツ


強大な力を秘めた籠手。装備すれば最上級の速度を得られる。

・速度三倍

・耐久を最低値で固定


─────



 これは判断に迷うな……。耐久を最低値で固定ってことは、一撃喰らえば致命傷になりかねない。ひたすら避けなくてはいけないから、常にギリギリの戦いを強いられることになる。バウンドブーツも買ったばかりだし、無理に使う必要はないんだが……。


 だがそこでふと思う。俺の信条は極振りによる特化プレイだったはず。どうせやるんだったら、徹底した方がいいんじゃなかろうか。あれこれやって器用貧乏になるより、何か一つ極めた方がカッコいいと思うし。



「よし……腹は決まった 」



 早速、メニューから装備変更の設定を行う。瞬時に足元が毒々しい紫色の靴に切り替わる。その場で跳ねてみたが、体が軽くなったように感じる。これなら間違いなく、更に速く走れる。ライトニングダガーも含めて試運転といってみようか。




◆◆◆




 門を抜けて大森林の入口前までやってきた。森の中では走るのは難しいだろうし、森に入る前にスピードを確かめておくか。


 森の方ではなく、その横へと体を向ける。そして軽く腰を落として構える。森の外周部に沿って少し走ってみるとしよう。



「いくぞ……!」



 そのまま小走りで走り出した。これは思った以上に速い……! 大して足に力を入れてないのに、どんどん進む。体感だと全力の一歩手前くらいの速さで、周りの景色が流れて行く。



「『加速』……おおおおぉぉぉぉ!!??」



 調子に乗って加速まで使ってみた。これが想像以上の勢いだった。さっきまでの速さが自転車並みだとしたら、今の速度は自動車並みだ。


 足を突き出してブレーキをかける。ガリガリと地面が削れる音がした。



「いつの間に……」

 


 完全に止まってから振り返ると、シラハナの門が小さく見えた。このわずかな時間で、こんな距離を走れるとは……。カースドブーツはかなり使えそうだ。


 次はライトニングダガーと、カースドブーツのデメリットについての確認だな。


 森に入ったところですぐフォールラビットを見つけた。お馴染みの動きで飛び上がり、向かって落ちてくる。


 俺は敢えて何もせず、武器も構えずに棒立ちでフォールラビットを見つめていた。カースドブーツのせいで防御力は下がっているが、それがどの程度のものなのか確かめたかった。吸い込まれるようにして、フォールラビットの角が俺の腹に刺さる。



「ぐはっ! ……あれ? そうでもないな」



 腹筋に力を込めていたが、衝撃は大したことなかった。すぐHPも確認する。今までとあんまりダメージ量が変わってない。というか、見ただけでは区別がつかないほどだった。



「んん? 何で変わらないんだ?」



 腕を組んでしばらく考える。その間もフォールラビットは突撃を繰り返していたが、やはりダメージ量は特に増えてるように見えない。



「…………あっ」



 ようやく気がついた。よくよく考えたら、俺はそもそも耐久の値を増やしていなかった。レベルが上がっても、経験値は全て速度を増やすのに使っていたから、耐久は初期値のままだ。そして初期値イコール最低値なのだとしたら、ダメージが変わらないのも頷ける話だ。



「なんだ、心配して損したな。ということは、今まで通りで問題ないってことだ」



 俺のやるべきことは変わらない。高速で移動し、敵の攻撃は避けてかわして逃げまくる。戦闘スタイルはそれでいい。そして情報をいち早く広める。


 よしカースドブーツはこれでいいだろう。次はライトニングダガーの性能だ。


 考え中でも、フォールラビットは単調に突撃……というか落下攻撃を繰り返している。それを見ながら、腰のライトニングダガーを引き抜いた。


 やはり何度見てもいい出来映えだ。雷属性でうっすらと黄色い光を帯びているのが特にいい。


 タイミングを合わせて、フォールラビットを斬りつける。直撃と同時にバチバチと音がして、フォールラビットが吹き飛ぶ。おお……。おそらく魔法ダメージが追加されているのだろう。今まで使っていた初心者のナイフとは大違いだった。


 モンスターを何匹も狩って経験値を貯める。おかげでレベルも7まで上がっていた。



「ん?」



 その途中ふと違和感に気付いた。戦闘中だったサンダーキャット達が、なんとなく黄色く光っているように見えたからだ。これはなんだろう? 今まで倒してきた中には、こんな状態になる奴はいなかったはずだが……。


 そうこうしているうちに、サンダーキャットにとどめの一撃を喰らわせる。軽い音と共に爆発してドロップ品が散らばる。



「これは!?」



 ドロップ品を回収しようとして見つけたもの、それはあれからモンスターを何匹倒しても手に入らなかった、魔法石だった。


 やっと魔法石を手に入れることができた。それはいいことだ。しかし、これはどういうことだ……?


 あれから全く出なかったこと自体は、別におかしくない。レアアイテムだったらそういうこともあるだろう。百匹倒しても一個も出ないなんて、ゲームをしてればよくあることだ。


 だが気になるのは今、二匹のサンダーキャットを倒して、二匹とも魔法石をドロップしたことだ。そんな偶然あるのか……確かめる必要があるな。


 急いでサンダーキャットを探し出す。途中、他のモンスターが襲ってきたが、回避に徹して何とか逃げ切った。



「よし、見つけた」



 ようやく一匹見つけたところで、再度ライトニングダガーで斬りつけていく。斬って斬って斬りまくって、やっと倒しきった。すると、再び魔法石がドロップした。その後三匹ほどサンダーキャットを倒したが、全て魔法石がドロップした。


 やはりだ。ライトニングダガーでサンダーキャットを倒すと魔法石がドロップする。これは間違いない。だが、それはいったいどういう法則によるものなのか……。



「サンダーキャット以外で試してみるか」



 次はファイアフォックスを狙ってみた。実物は見たことないが、こいつなら火の魔法石を落とすんじゃないかと考えたからだ。サンダーキャットと同じように狩って狩って狩りまくる。だが、結果は失敗だった。十匹も倒したが、全く魔法石はドロップしなかった。



「何が違う……?」



 サンダーキャットは倒す寸前に必ず光るのだが、ファイアフォックスにはそれがない。この違いは何なのか……。



「サンダーキャットとファイアフォックスの違い……属性か?」



 ふと思い至った。サンダーキャットは雷属性のモンスター。ライトニングダガーは雷の魔法石を使った属性武器。ここに何か秘密がある……気がする。そして考えた結果、ある一つの仮説が頭に浮かんだ。



「もしかして、同属性の攻撃で倒すと魔法石をドロップするとか……?」



 興奮した。これが正しければ、安定して確実に魔法石を手に入れることができる。そうなれば資金もいくらでも稼げるぞ!


……いや待て待て。冷静にならないと。これはあくまで仮説に過ぎない。ここはもっと検証が必要だ。



「検証……そうだ、【鑑定】か!」



 なんで気が付かなかったんだ。鑑定してみれば状態がわかるかもしれないじゃないか。


 辺りをうろつき、もう一匹サンダーキャットを見つけた。さっきと同じようにライトニングダガーで徐々にダメージを与えていく。そしてある程度HPを減らしたところで、また体が光り出した。



「よし、『鑑定』」



─────

サンダーキャット

全身に雷をまとった猫。かなり素早い。


─────



 しかし予想に反して鑑定しただけでは、判断がつかなかった。もしかしたらと思い、何度も何度も繰り返し使ってみたが、やはり見分けることはできなかった。


 今度はひたすらサンダーキャットだけを狩って狩って狩りまくる。ただしライトニングダガーを使うばかりじゃない。普通のナイフを使って交互に試す。とにかく試しまくった。普通のナイフで弱らせてからライトニングダガーでとどめを刺すとか、逆のパターンとか色々なパターンを検証してみた。もちろんパターンごとに鑑定も試した。



「なんとか法則が掴めたかな……」



 その結果、法則が見えてきた。おそらく「同属性の攻撃でHPの八割以上減らす」のが魔法石ドロップの条件。八割というのはだいたいだ。明確な数値が見られる訳じゃないし。



「ふふふ……これは収穫だ……」



 そしてもう一つ思いがけない収穫があった。俺は狩りの最中、状態を確認する為に、鑑定を使いまくっていた。多分そのおかげだろうが、新たなスキルをなんと二つも入手したのだ。それがこれだ。



─────

【識別】

鑑定よりも詳細な状態が判定できる。


─────

【偽装】

ステータスの項目表記を一部変更することができる。


─────



 【偽装】はすごくありがたい。これで名前とかを誤魔化せるようになれば、情報屋として正体を隠した状態でプレイヤーに接触できる。逆に顔や本名を晒したまま、町を歩いてても問題ない訳だ。ただ、鑑定を使っただけでなぜ偽装が手に入ったのかは不思議だが……もしかしたら俺の職業が盗賊なのも関係あるのかもしれない。


 そして【識別】を使えば状態の判断ができるようになるとあるが、どういう意味だろう? 実際に使ってみた方が良さそうだな。もう一度、サンダーキャットと戦闘し、光り出したところで発動させる。



「『識別』」



─────

サンダーキャット

全身に雷をまとった猫。かなりすばやい。

・魔力充填


─────



「これは……!」



 間違いない。この『魔力充填』というのが、魔法石に関係ある。勘による予測だが、例えば雷属性のモンスターに雷属性の攻撃をすると、ダメージと一緒にその魔力自体が補充されていくのだろう。そして大量に充填したところで倒すと、魔力が凝縮されて魔法石になる……みたいな感じだと思う。

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[気になる点] >おまけ……あっ、【割引】のおかげか。……今さらだけど、コリーが装備を買う時、一旦俺が立て替えてやれば良かったな。そうすればお得だったのに。 この一文なのですが、コリーとは誰ですか?…
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