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情報屋さんは駆け回る  作者: 仮面色
第1章 ニューゲーム
14/25

閑話 僧侶さんと不審者

ここ数日、ブクマもポイントもどんどん伸びています……ありがとうございます!


感謝を込めて、二日連続更新です!

 私の名前はウルル。


 本名は別にあるけど、今の私はゲームのプレイヤー。だから今の名前はウルル。



「ねぇ、一緒にゲームやらない?」



 そんな風に誘われたのは突然のことだった。誘ってくれたのは私の親友。


 私は人見知りで人と話すのが苦手で、いつもビクビク、オドオドしてばかりだった。話しかけてくれる人は少しはいたけど、私が上手く話せないのがわかると、みんな興味を失って離れていった。


 そんな私が唯一友達だとはっきり断言できる人。私のたどたどしい話をきちんと聞いてくれて、最後まで離れていかなかった人。彼女が誘ってくれるんだったら、どこでもついていくつもりだし、それで楽しめると信じてる。


 だから、誘われた時は驚いたけれど、特に断るつもりもなかった。でも、なんでゲーム? あんまり興味なかったはずだよね?


 よくよく話を聞いてみると、幼なじみに誘われたとのことだった。幼なじみの男子は、彼女が唯一素直になれない相手。誰にでもはっきりものを言う彼女が、本音を言えなくなってしまう人。



「べ、別に、誘われたからやるんじゃなくて……前から興味があったのよ!」



 うん、かなりわかりやすい。恋愛には疎いと自覚している私にもバレバレだからね。


 そんな私と彼女と幼なじみ……シロちゃんとアーサーは、なんやかんやあって三人でパーティを組むことになった。なんやかんやの部分は省略。


 私は職業に僧侶を選んでいた。運動は苦手な方だし、前に出てモンスターに攻撃なんて考えられなかった。うん、みんなのサポートをしてるくらいが、私にはちょうどいい。本当は裁縫師とかも興味あったけどね……。


 ガンガン前に出て突っ走るアーサーと、ストッパー役になってるシロちゃん。やっぱりいいコンビだと思う。もしかして私はお邪魔かな? とも思った。でもむしろシロちゃんは私に居てもらいたいみたい。アーサーに対しては、つい喧嘩腰になっちゃうから、取り成して欲しいとのこと。本当に素直になれないんだね。


 ちなみに私は、アーサーのことが好きとか別にそんなことはない。出会った時から、二人はセットみたいに思ってたから、考えたこともなかった。




◇◇◇




「だから突っ込んでいくの、やめなさいよ!」

「全員無事だったんだから、問題ないだろ!」



 モンスターを倒しながら森の中を冒険していく。パーティのバランスも取れていて、順調だった。たまにアーサーがダメージをすごく受けて叱られている。まぁまぁ、怒らないで。私が回復させるから、ね?


 そんな中、森の奥まで進むと、大きな熊を見つけてしまった。見た瞬間なんとなく思った。あ、この子強い。勝てないかもしれない、って。


 戦ってみたけど、実際あっさりやられちゃった。予想通り二人は負けた原因を巡って、揉めに揉めている。私は特にいい案は浮かばなかったけど、なんとか丸く収めたかった。苦し紛れにアイテムの補充を提案してみたら、意外なことに二人にすんなり受け入れられてしまった。


 そしてアイテムを買い揃えた帰りのこと。不気味なプレイヤーに突然話しかけられた。いや、プレイヤーかNPCかもわからない。真っ黒なコートを着て顔を隠した、いかにも怪しげな人。


 何この人……! 鑑定が効かない……!?


 正直言ってめちゃめちゃ怖かった。私は本を読むのが趣味だから、ある程度ファンタジーのことも知ってる。だからこの人が、例えば魔王軍の幹部とか、有名な殺し屋とか、そんな風に思えて仕方なかった。カラスって名乗ってたけど、それも偽名じゃないかと思う。


 予想外なことに、カラスは情報を買わないかと持ちかけてきた。しかも、サービスで情報を一部教えてくれるって言ってる。私達にとってはすごく都合が良かった。何を企んでるんだろう?


 カラスの教えてくれた情報を確認しにいった。もしかしたら罠かも、って私はビクビクしてたけど、そんなことなかった。少なくとも、教えてくれた情報は全て本当のことだった。


 確認から戻ってくると、アーサーがカラスをパーティに誘おうと言い出した。情報が本当だったから、信用できる人だと思ったみたい。私はシロちゃんと一緒に反対した。でもダメだった。シロちゃんがあっさり説得を諦めたからだ。こうなったアーサーは何言っても聞かないって、わかってたみたい。さすが幼なじみ。私の控えめな反対意見も、簡単に押し切られてしまった。




◇◇◇




 交渉の結果、カラスは一回限りの助っ人で参加することが決まった。それがいい。こんな不気味な人がずっといたら、落ち着いてプレイできる気がしない。ただ一緒に森を歩いているだけなのに、そのことを痛感する。



「お前は参加しないのか……?」

「ひゃいっ!? なんですか!?」



 とかなんとか警戒しながら移動していたら、なんと当の本人に話しかけられた。いきなり何!? びっくりして変な声が出ちゃったんだけど!?


 けど、内容は私を気遣ってるとも取れるものだった。実はいい人なの……? ……いやいや騙されない!


 いよいよ熊さんとのリベンジマッチ。気合いを入れて臨む。私は後衛だけど、気を引き締めて覚悟を決めた。


 カラスは宣言通り、防御役としてしっかり仕事をしていた。おかげで私は非常に安全な立場から、皆を回復させている。見た目の印象と違って、真面目に仕事をしているみたい。……本当によくわからない。



「よっしゃー!」

「やったわ!」

「う、うん……!」



 激闘を終えて、私達は喜び合っていた。私も柄にもなく興奮して、ハイテンションになってしまっていた。……せっかく倒せたんだから、これくらいはいいよね?


 その後、問題が起きることもなく、カラスと別れた。結局最後までよくわからない人だった。……でもまぁ、思ったより悪い人じゃなさそうだし、次会った時は怖がらずに、もう少し歩み寄ってあげてもいいかもしれない。

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