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五話
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外は、暗い色をしている。おまけに雨まで降っているので、仕方なく帽子を被る事にした。
俺の後から付いてくる舞花は、フード付きの赤いPコートを着ている。
…見る分には良いけど、フード付きのコートを自分から着ようとは思わない。フードを被ったら顔がよく見えないからだ。マスクもそうだけど、顔が見えないモノは嫌いだ。
なんて事を思いながら、数分前に来たビルへとたどり着く。
屋上には誰かの影がある。ヤツはまだ居る。
「月。じゃあ作戦通りに、月は影北さんが居るビルに向かって。私はその隣のビルに居るから」
「なら、次に会うのは屋上だな」
「そうなる…けど、いくら夜中だって通行人も多いから、無茶しないで」
ああ、と受け答えして、影北が居るビルの屋上へと向かう。
カッターナイフを取り出して、俺は少しだけ笑みを浮かべた。