3.チュートリアルを楽しむ?
ん、気が付いたら真っ暗な空間にいた。
どこだココ?
まさか、死んだ?!
さっきの痛み尋常じゃなかったし。思考を巡らせていたら目の前に光の球体が現れた。
「はじめまして花音様、私は貴女のユニークスキルを脳内で発現させる為の補助機能です」
女性の声で話す球体とかレアだわ~。脳内ということは気絶してるだけなのかな、本体は……。
「あー!アレね!!いやー流石に神様話が早いな~」
スマートフォン!!嬉しすぎる!
「はい、私に問えばどんな疑問も賢者の本に載っている事であれば返答出来ます」
賢者の本?流石にスマートフォンなんて名前には出来なかったのかな?あっちの世界には無さそうな印象だし。
「まず先に貴女の転生先の世界のチュートリアルを説明したいと思います」
チュートリアルって…
「現在の花音様は生まれてまもない状態になります。本来であれば自我が目覚めるまでこちらで待機となる筈でしたがイレギュラーにより一度覚醒した状態となりました。チュートリアルを行うと自我は一時封印され自動的に本来の自我が目覚める時代迄時間が進みます」
「チュートリアルってどんな内容?」
「この世界の成り立ち、種族構成、現在ある王国の名称、などあらゆる分野の情報をお教え致します」
それって今必要?めちゃくちゃスマホで楽しみたいんですけど。
「それって絶対やらなくちゃ駄目?」
「…いいえ任意になります」
「じゃあいらないや」
「!?」
「赤ちゃんの時に検索かけるよ」
たぶんね。アニメ見て終わりそうだが。
「あと、君ってスキルの補助機能なんだよね」
「はい、その通りです」
「スキルを発動したい時はどうすればいいの?」
使い方が分からなかったら何も出来ない幼少期になってしまう。
「念じて私を呼んでいただければ起動します」
念じる…か。
「じゃあ、君の名前教えて」
「名前…ですか、ありません」
まあ、こんな球体にあるわけないかー。
「私が決めてもいい?」
「もちろんです!」
お、なんか嬉しそう。この球体が可愛い猫耳メイドだったらな~。
なんて考えると球体は輝きをまし、人型、いや猫耳メイドになった。髪はブロンドのストレートに碧眼というこれまたもえきゅんな展開。くりっとした大きな瞳で上目遣いされた。なにこれ凄い!!テンション上がる!!
「か、かわええ~!!抱きしめたいわ~」
やべ、本音が!
「抱きしめる…ですか?もちろん私は花音様のスキルなのでご自由になさってけっこうですが…」
「いやいやいや!ごめん!本音出ちゃった、君の名前クオンでいいかな?」
昔飼ってた猫の名前。猫耳メイド姿になった球体を見てぱっと思い付いた。
「ありがとうございます、花音様」
「あ、あの出来ればご主人様って言ってもらってもいい?」
メイドにご主人様とか…萌え!!!
「はい、ご主人様」
キャー!!
嬉しさの余り真っ暗なこの空間でゴロゴロする。
際限なく回転をしていたら何か固いものに頭が激突した。
「おぉぅ……」
頭に出来たであろうコブを擦りながら辺りを見渡すが何も見えない。そういや、ここ真っ暗でクオン以外見えないけど何かあるのかな?
「ご主人様と無事リンク出来た事により機能の一部を開放します」
クオンが片手を目の前にかざすと一斉に壁に掛けられていた蝋燭に明かりがつき始めた。
蝋燭の火が灯り一面に映し出されたものを見て驚愕した。
本だ……。
一面に広がる本棚には大量の本で埋め尽くされている。
スマホの機能で本は確かにダウンロードした。が、たかが数十冊程度だ。これは何千、いや何万という本なのでは?
このスキル本当にスマホ…?
「あのさ…」
「ここでの説明にどうやら現実世界ではかなりの日数がたってしまいました、覚醒前の身体能力底上げを望むのであればそろそろ戻った方がよろしいかと」
「え、まじで!?」
身体能力底上げ出来るのか。やっぱり魔力を使いきるとかでなのかな?
「わかった、またあとでね!」
「それではご主人様、よい人生を……」
いろいろ疑問が生まれたがまあ、検索すればいいやと簡単に考え自分の脳内を後にした。