5、
「あー!ちょうどよかった、久遠さん!」
受付の久住さんと三人で飲みに行く話になったその日、帰ろうとしていたところで急な案件で協力してほしいと、久遠さんは他部署の上司につかまった。
「ちょっとごめんね」
俺に先にロビーで久住さんと待っているようにと手短に伝えると、久遠さんは自分のデスクへと再び戻ってしまった。
「すみません、すぐ行くから待ってるように言われたんですけど」
ロビーで久住さんと並んで立っていると、退社する男性社員からの視線が痛い。
彼女と仲良くしたい男性社員が山程いるのを知っているだけに申し訳ない気持ちになる。そして早くここから立ち去りたい・・・。
「いえいえ。あの久遠さんが、私と飲みたいって言ってくださってたなんて」
と、久住さんが嬉しそうに言った。
「ちなみにお二人は付き合ってたりします?」
「っ、まさか」
突然のぶっ飛んだ質問に、俺は無駄にむせた。
「ただの先輩後輩ですよ」
(何焦ってるんだ、俺は・・・)
平静を装ってそう答えたのだが、久住さんが何やら楽しそうに口元を緩ませている。
「頑張ってくださいね、昔宮さん!私、俄然応援してますから」
「いや、だから僕はそんなんじゃ————っ。」
「え、無自覚なんですか?」
首を傾げて、大きな瞳できょとんと俺を見つめる。
(うわ、この子・・・意外とあざといな。)
苦々しい気持ちを押し込めて、笑顔を作る。
「・・・なんだか、楽しそうですね」
「はい!受付にいると、つい人間観察してしまうんです。昔宮さんの表情、いつもキラキラしてますよ」
「そ、そうですか?」
「はい!」
彼女はにこやかにそう頷いてから、少し俯いた。
「私も久遠さんみたいな先輩の元で働いてみたいです。羨ましいですよ」




