族長達の会話
誤字脱字があれば指摘お願いします。
刃が神のメモを読み終わり、
ユーキタスの街に歩き始めた頃。
レイグノ大陸北にある獣王国ファリアスでは現在
緊急8氏族会議が開かれていた。
「今回、急な呼び掛けにも関わらず集まってくれて感謝する。残念な事に鳥人族は警備の都合上参加する事が出来ないが」
「ライオネル!それで話ってのはなんだ!ズバッ!と言ってくれ!ズバッ!と」
「あ、あぁ」
「バット、そんなに急かすな。坊が言えんじゃろ」
「長老、もう坊は無いんじゃない?ライちゃんは立派に王様やってるんだし?」
「それでライオネル、私達を呼ぶ程の事だ。緊急の要件何だな?」
上から順に、獣王国ファリアス 現国王であり獅子族族長ライオネル・ファリアス、狼人族族長バット・ウルフ、亀甲族族長ゼイジバル・タートス、猫人族族長ミリア・キャット、熊人族族長オレス・ベア。普段こうして族長が会する事など無いが
半年に一度の定例会議もしくは、緊急8氏族会議でしか会うことは無い。
「その通りだ、皆聞いてほしい。今朝がた同盟国のレバノン王国から文が届いた。どうやら西のバジス帝国は我が国に侵略する模様でこのままでは戦争になるとの事だ」
『ッ!』
この場にいる全員に衝撃が走った。
「やはり…本格的に動きだしたか」
「どういう事だオレスの旦那」
バットがオレスを睨みながら言った。
「説明するからそう睨むな。きっかけは私達熊人族が森の見回りをしていた時だった。部下からの報告で西から帝国兵と見られる人間が森に入り、森の地形を調べているとの事だった。そこで私は追い払う様に言い1度帝国兵は追い払えたのだが2度、3度とまた帝国兵がやって来てな。今度は魔法を放ってきたのだ。そこで部下に殺さぬ様に痛め付けて追い払えと指示を出し、今森では厳戒体制をとっている。」
皆がオレスの話しを聞きながら『なに!』や『魔法を!』と驚いていた。
「ああ…俺も報告では聞いていたがまさか西が動き出してくるとは…」
ライオネルルは王として森や魔国との国境の状態など懸念すべき報告は知っていたが、まさかバジス帝国が本格的に動き出してくるなど思っていなかった。
「なるほどのぅ、やはりこうなってしもうたか」
「長老!!何か知ってんのか!!」
「バット…お主はもう少し声を抑えて喋らんか…耳が痛いぞ」
「す、すまん」
「そうじゃの~どこから話せば良いか…皆帝国がわし等獣人を嫌っておるのは知ってるな?じゃがそれは本来おかしな事なのじゃ」
『?』
「昔の帝国は獣人も住んどる平和な国で獣人嫌いなんぞ存在せん国じゃったんじゃ。じゃが1000年程前を境に帝国は人類至上主義を掲げ始め、獣人をけ嫌う様になった。それも不思議な事に帝国の民を除く皇族、貴族たちだけが、じゃ。それからの帝国はお主等の知っとる通りじゃ。じゃからこうして帝国が侵略してくるのは時間の問題だったという事じゃ」
「そうだったのか」
長老の話が終わり皆が自分の考えにふけっていると
「あ、あのぉー」
「あら、どうしたのエレス?」
勇気を出して気弱な声で発言したのは兎人族族長のエレス・ラビット。
「そ、そのぉ~。オレスさんの話にでた帝国兵、私達も見ましたぁ」
「「「「「えっ!(なんじゃと!)」」」」」
「『私達も』ってことは貴女も見たの?シンラ?」
「嗚呼、確かに妾もこの目でしかと見た」
シンラと呼ばれたこの女性は狐人族族長のシンラ・フォックス。この場でただ一人和服を着、独特な雰囲気を漂わせている。
「しかし、そんな報告は上がってきて無いぞ」
ライオネルは今までに受けた報告を思い出しながら言った
「?おかしいのぅ。妾の所から使いを出し、『王国伝令兵に伝えた』と使いの者が言っておったが」
「ゎ、わたしの所も確かに森の境にある『伝令駐屯所』に行き、伝えたと」
エレスの会話に出た『伝令駐屯所』について説明するにはまず、ファリアス王国の地形を先に説明した方が良いだろう。ファリアス王国はウルベア大陸とレイグノ大陸の境界線であるユーリアモ山脈から南200㎞にある王国だ。そして王国からみて下にある人族国家から獣王国を守護する様に王国の回りに1㎞程の草原があり、またそれを取り囲む様に半円の100km程の森が形成され、その森で8氏族たちは暮らしている。なので王国への報告は草原と森の境界線に建てられた『伝令駐屯所』を通じて行われている。また『伝令駐屯所』には王国への連絡手段として『魔導機』が設置されており、草原を行くよりは
『魔導機』を使った方が王国の『情報管理室』にすぐに報告できるのである。
「それで詳細を教えてくれ」
「は、はい。わたしの所は子供たちが森で遊んでいる時に『人間達が森の木に何かをしていた』、と報告を受けました」
「妾は集落の近くを歩いておった時、人間が見えたのでな?人間が立ち去った後にそこに行ってみたのよ。そしたらその辺だけ木が元気無くてのぅ…木に触れてみたら木の魔力が失われていた、ということじゃ」
「そうか…」
「それでライオネル、レバノン王国は何と言ってきたんだ?」
「ああ、『帝国の進軍時我が国は獣王国ファリアスに援軍の助力、食料の援助、避難民の受け入れは惜しまず、また同盟国の名に置いて保証する、と。』
「おお!!それは助かるな!!」
「うむ。やはりレバノン頼りになるのう」
「確かに。西と同じ人族とは思えない位だな。私達を差別するどころか手を取り合い、友人の様に接してくれるとは」
「レバノンに感謝…ですね」
「ありがたい事じゃのぅ」
「なら、私達も頑張らなくちゃね!」
こうして各族長たちはこれから始まる戦争に備えた。
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レイグノ大陸南東に位置するここは深淵の樹海。
ここはレバノン王国とサバノス宗教国に挟まれる形で位置にする森だ。深淵の樹海奥地、とある集落ではこのような会話が行われていた。
「皆、集まってくれて礼をいう。先ほど我が一族では緊急招集をかけ、話し合いが行われた。その事に関することだ」
「なにっ!緊急招集だと!一体なにがあったのだ!エルフの!」
「ああ、実は数時間程前にわしを含めたエルフ全てがある事を感じ取ったんじゃ」
「「ある事?」」
「空から…神界と思われる場所から何か大きな力がこの地に落ちて来たのを感じたのじゃ」
「神界…ですか」
「神界か…天界とは違い神が住まわれるとされる場所、か。本当に存在するのか…?ハーフの、そちはどう思う?」
「そうですね…あり得ない事は無いと思います。
私の所にいる精霊とのハーフも数時間前に何かを感じ取った様子でしたし」
「そうか…お主の所もか。しかしその力が何にせよ我々エルフ族は何としてでも生き残らねばならない、そうだな?ダークの」
「ああ、我らエルフ族は来たるべき日に備え、生き残らねば」
「それではダークの、お主の所に結界を頼んでも良いか?我が一族はお主たちの様な結界は張れん」
「私からもハーフエルフを代表してお願いします」
「よし。あい分かった。我が一族の誇りに懸けて結界を張ろう!」
「して力の方は我が一族の巫女の中で感覚が鋭い者を外に出そう」
「えっ!外に、ですか?」
「エルフの、それはちと危ないんじゃないか?」
「確かに危ないじゃろう。しかしそうは言っておれぬのも確か。仕方がないじゃろう」
「「………」」
そうして3日後、二人のエルフ族が深淵の樹海を旅立った。
次回は12月1日昼12時頃に投稿します。